笑えて泣ける、大人の冒険物語
* * * * * * * * * *
南太平洋の上空で、嵐のために小型旅客機が行方不明となります。
墜落した飛行機が流れ着いたのは無人島。
生存者は出張中のサラリーマン一行と取引先の御曹司、
新婚旅行中の夫婦、
ボケかけたおじいちゃんとその孫、
そして怪しい外国人。
おまけに大きな犬一匹。
はてさて、どうなりますやら・・・と、
ありがちのシチュエーションではありますが、大変興味をそそります。
このサラリーマン一行がまたてんでんばらばらなんですよ。
いつも威張り、怒鳴りちらしているパワハラ部長。
部長にヘコヘコ威厳のない課長。
バリバリのキャリアウーマン主任は、威勢も良いけどこんな時にも化粧は落としたくない。
そして、いつも危険な役割を持たされ、こき使われてしまうのが、若き賢司くんなのでした。
語り手は次々バトンタッチしていきますが、彼の視点によるものが多いのです。
年齢、性別、性格、全くうまくバラけておりますが、
島にたどり着いた付いたばかりの彼らは、
全くこの先どうなるんだと暗澹とした気持ちになるほどに、まとまりがないのでした。
しかし、彼らにたった一つ共通なのが、
食べなければ生きていけない!ということなのです。
幸いに島には果物が豊富で、さっそく彼らの仕事は食べ物集めということになります。
南国の島とはいえ、夜は冷え込みます。
火も必需品ですが、たったひとつのライターもすぐにだめになってしまい、火を起こすにも一苦労。
しかし、そんな風にこの島で毎日を過ごすうちに、彼らは次第に変わっていきます。
てんでんばらばらだった彼らが、次第にまとまりを見せてくる。
それぞれの役割分化で暗黙の共同生活のルールが出来てくるのですね。
それぞれの個性は変わらないのですが、
皆背負っていた肩書きをはぎ取り、カドがとれて丸くなってくるような・・・。
こういう過程が実に見事に描かれています。
そして、この何もない島で原始生活をして初めて気づくことも。
先ほどの火を起こすこともそうですが、
生きるためには他の生物を殺さなければならないという厳しい現実にも直面します。
魚も豊富ですが、時にはコウモリやウミガメも狩らなければなりません。
都会人の脆弱さが身にしみます。
また、一つ涙を誘うエピソードは、犬のこと。
墜落機の機長の愛犬だったのですが、彼らと共に島にたどり着きました。
元気な小学生仁太くんになついていましたが、
はじめの頃の食糧難でそばに置けなくなり、野に放されたのです。
ところが狩りを覚えたその犬は、島で一番危険な"猛獣"と化してしまう。
セントバーナード犬を敵にまわすのは、ちと荷が重い。
意外な成り行きに、驚かされます。
実に笑えて泣ける、大人の冒険物語です。
そうそう、「オイアウエ」というのはトンガ語で
「おお」、「ああ」、「いやはや」、「えっ」、「うわっ」
・・・あらゆる喜怒哀楽を表す感嘆詞。
この本では、「がんばるぞ!」、「オイアウエ!」というような掛け声で使われますが、
実は隠されたもう一つの意味もあるのでした。
さて、彼らは最後に島を脱出できるのか、またその方法は・・・?
是非読んで確かめてください。
私はついその後の彼らの生活を想像してしまいます。
もうサラリーマンには戻れないのではないかしらん・・・?
「オイアウエ漂流記」 荻原浩 新潮文庫
満足度★★★★☆
オイアウエ漂流記 (新潮文庫) | |
荻原 浩 | |
新潮社 |
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南太平洋の上空で、嵐のために小型旅客機が行方不明となります。
墜落した飛行機が流れ着いたのは無人島。
生存者は出張中のサラリーマン一行と取引先の御曹司、
新婚旅行中の夫婦、
ボケかけたおじいちゃんとその孫、
そして怪しい外国人。
おまけに大きな犬一匹。
はてさて、どうなりますやら・・・と、
ありがちのシチュエーションではありますが、大変興味をそそります。
このサラリーマン一行がまたてんでんばらばらなんですよ。
いつも威張り、怒鳴りちらしているパワハラ部長。
部長にヘコヘコ威厳のない課長。
バリバリのキャリアウーマン主任は、威勢も良いけどこんな時にも化粧は落としたくない。
そして、いつも危険な役割を持たされ、こき使われてしまうのが、若き賢司くんなのでした。
語り手は次々バトンタッチしていきますが、彼の視点によるものが多いのです。
年齢、性別、性格、全くうまくバラけておりますが、
島にたどり着いた付いたばかりの彼らは、
全くこの先どうなるんだと暗澹とした気持ちになるほどに、まとまりがないのでした。
しかし、彼らにたった一つ共通なのが、
食べなければ生きていけない!ということなのです。
幸いに島には果物が豊富で、さっそく彼らの仕事は食べ物集めということになります。
南国の島とはいえ、夜は冷え込みます。
火も必需品ですが、たったひとつのライターもすぐにだめになってしまい、火を起こすにも一苦労。
しかし、そんな風にこの島で毎日を過ごすうちに、彼らは次第に変わっていきます。
てんでんばらばらだった彼らが、次第にまとまりを見せてくる。
それぞれの役割分化で暗黙の共同生活のルールが出来てくるのですね。
それぞれの個性は変わらないのですが、
皆背負っていた肩書きをはぎ取り、カドがとれて丸くなってくるような・・・。
こういう過程が実に見事に描かれています。
そして、この何もない島で原始生活をして初めて気づくことも。
先ほどの火を起こすこともそうですが、
生きるためには他の生物を殺さなければならないという厳しい現実にも直面します。
魚も豊富ですが、時にはコウモリやウミガメも狩らなければなりません。
都会人の脆弱さが身にしみます。
また、一つ涙を誘うエピソードは、犬のこと。
墜落機の機長の愛犬だったのですが、彼らと共に島にたどり着きました。
元気な小学生仁太くんになついていましたが、
はじめの頃の食糧難でそばに置けなくなり、野に放されたのです。
ところが狩りを覚えたその犬は、島で一番危険な"猛獣"と化してしまう。
セントバーナード犬を敵にまわすのは、ちと荷が重い。
意外な成り行きに、驚かされます。
実に笑えて泣ける、大人の冒険物語です。
そうそう、「オイアウエ」というのはトンガ語で
「おお」、「ああ」、「いやはや」、「えっ」、「うわっ」
・・・あらゆる喜怒哀楽を表す感嘆詞。
この本では、「がんばるぞ!」、「オイアウエ!」というような掛け声で使われますが、
実は隠されたもう一つの意味もあるのでした。
さて、彼らは最後に島を脱出できるのか、またその方法は・・・?
是非読んで確かめてください。
私はついその後の彼らの生活を想像してしまいます。
もうサラリーマンには戻れないのではないかしらん・・・?
「オイアウエ漂流記」 荻原浩 新潮文庫
満足度★★★★☆