映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

すべては君に逢えたから

2014年10月11日 | 映画(さ行)
クリスマスに!!



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1914年12月で開業100週年となる東京駅。
その記念として作られた、東京駅近辺にまつわる
恋人たち・家族のオムニバスストーリー。
時は折しもクリスマス。
いわば日本版「ラブ・アクチュアリー」ともいうべき作品ですが、
そのロマンスと暖かな家族愛、肌触りは
「ラブ・アクチュアリー」に引けを取りません。
新装なった東京駅が、クリスマスのイルミネーションに映えて、
一段とロマンチックをかきたてます。


人間不信のウェブ・デザイン会社社長と劇団員の女性。


仙台と東京、遠距離恋愛中の男女。


先輩に恋心を伝えられない女子大生。


余命宣告を受けた新幹線運転士。


母親を待ち焦がれる児童施設の少女。


そして、49年前の恋の結末。



クリスマスにぜひ見たい、心あたたまる作品です。
私は、玉木宏さんのウェブ・デザイン会社社長のストーリーが一番好き。
ここの二人の出会いは単に偶然ではなく、
ちょっとした伏線があったというのが、なかなかステキです。


東京駅舎、天井の鳥は鳩?
・・・と思ったら実は・・・。
人の目はいい加減なものですね。
鳩と言われれば確かにそうだと思ったのに、
よく見れば確かに鳩ではない。
世の中にはそんな思い込みがもっとありそうだ・・・。

すべては君に逢えたから(初回限定生産) [DVD]
玉木宏,高梨臨,木村文乃,東出昌大,本田翼
ワーナー・ホーム・ビデオ



「すべては君に逢えたから」
2013年/日本/106分
監督:本木克英
出演:玉木宏、高梨臨、木村文乃、東出昌大、本田翼、時任三郎、大塚寧々
クリスマス度★★★★★
満足度★★★★☆

アバウト・タイム 愛おしい時間について

2014年10月10日 | 映画(あ行)
タイムトラベルは幸せへの切符ではないけれど



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「ノッティングヒルの恋人」や、「ブリジット・ジョーンズの日記」、
「ラブ・アクチュアリー」、
女心をくすぐるロマンチック・コメディの名手、
リチャード・カーティス監督作品。
しかも、タイムトラベルものとくればもう、私としては外すわけには行きません。
しかし本作、SF作品というわけではありませんから・・・。
タイムトラベルは、ほんの一つの道具立て。
それよりも大切なものに気付かされる、
やはりさすがのリチャード・カーティス作品なのです。



イギリス南西部に住むティム(ドーナル・グリーソン)は、
チョッピリ気弱な青年。
女の子になかなか声もかけられず、ガールフレンドもいません。
21才の誕生日。
ティムは父親に重大な秘密を告げられます。
この一家に生まれた男たちには、タイムトラベルの能力があるというのです。

ただし、過去へ行って戻ってくるだけ。
未来へはいけません。
大きく歴史も変えられません。
ある日、メアリー(レイチェル・マクアダムス)という女性を見初めたティムは、
タイムトラベルを駆使し、ついに彼女のハートを掴んで結婚へこぎつけます。
そんなところでは、とても役に立ったこの能力ですが、
人の生死に関わることなど、
どうにもならないことも多くあることも知っていくのです。



タイムトラベルができるから幸せになれるわけではない。
肝心なのは、身の回りの愛する家族や友人との
「今」のひとときを大切に過ごすこと。
そういうあたり前のことに結局は帰っていく
ということが柔らかく語られていて、
全く「愛おしい」作品なのでありました。


決してイケメン過ぎず、優しくチョッピリ気弱というティムもいい感じなのです。
父親との関係も、“相克” などと面倒なものはなくて、
ひたすら互いを大切に思っている、というのはいいじゃありませんか。


ティムの父(ビル・ナイ)はタイムトラベル能力で、
本を一生分の2倍読んだと言っていました。
スゴイですね! 
確かに、そんなふうに時間を使えたらいいな。



その能力の使い方は人それぞれ・・・という話で、
でもお金は全然儲からないなんて言っていました。
普通に考えたら、競馬の結果を知ってから
過去に戻って馬券を買えば大儲けできる気がします。
しかし本作、そういう下世話な話は、一蹴されてしまいました。
(そりゃそうですよね!!)

原題はAbout Time
「愛おしい時間について」と副題を付けた邦題に拍手!!
愛おしい時間。
まさにそういう作品です。


「アバウト・タイム 愛おしい時間について」
2013年/イギリス/124分
監督:リチャード・カーティス
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー

時間の大切さ★★★★★
満足度★★★★☆

「マスカレード・イブ」 東野圭吾

2014年10月08日 | 本(ミステリ)
マスカレード・ホテルありき

マスカレード・イブ (集英社文庫)
東野 圭吾
集英社


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ホテル・コルテシア大阪で働く山岸尚美は、ある客たちの仮面に気づく。
一方、東京で発生した殺人事件の捜査に当たる新田浩介は、
一人の男に目をつけた。
事件の夜、男は大阪にいたと主張するが、なぜかホテル名を言わない。
殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか。
お客さまの仮面を守り抜くのが彼女の仕事なら、
犯人の仮面を暴くのが彼の職務。
二人が出会う前の、それぞれの物語。
「マスカレード」シリーズ第2弾。


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「マスカレード」シリーズ第2弾は、
時間を少し戻して、山岸尚美と新田浩介がまだ出会う前のそれぞれのストーリーです。
短編4作。


「それぞれの仮面」では、まだホテルに勤め始めて間もない頃の尚美。

「ルーキー登場」は警察に勤めて間もない新田。

そしてラスト「マスカレード・イブ」では、
東京で起きた殺人事件の容疑者のアリバイが、
尚美の働く大阪のホテルに関わってきます。
二人の直接的な接点はないにしろ、
尚美のある発想が事件を解く一つの鍵となる。
「マスカレード・ホテル」の前日譚としては、楽しめた一作です。


様々な人々が「仮面」をつけて現れるホテル。
この先もこのシリーズ、楽しめそうです。


それにしても、あまり感想の書きようのない本だなあ・・・
「マスカレード・ホテル」で、主人公2人に思い入れのない人にとっては
さしたる面白みはないのでは・・・

「マスカレード・イブ」東野圭吾 集英社文庫
満足度★★★☆☆

ばしゃ馬さんとビッグマウス

2014年10月07日 | 映画(は行)
夢はいつ諦めればいいのか



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脚本家を目指す34歳馬渕みち代(麻生久美子)。
学生時代からコンクールに作品を応募し続けていますが、落選ばかり。
シナリオスクールに通いながら、
ストイックに作品作りを生活の中心に据えて頑張る彼女を
「ばしゃ馬さん」と称するわけです。



同じく脚本家志望の天童義美(安田章大)は、
「俺が本気を出したらスゴイ」と口先ばかりで、
一度も作品を書いたことがないばかりか、人の作品を酷評。
これぞ、「ビッグマウス」。


夢を捨てきれない男女の葛藤を、恋模様を交えながらユーモラスにつづります。



夢はいつ諦めればいいのか。
先日見た「イン・ザ・ヒーロー」でもつぶやかれていました。
これぞ、人生の永遠のテーマであるのかもしれません。
夢を追って叶えることができるのは、ほんの一握りの人。
多くは子供の頃や若かりし日の夢を胸の奥底に抱えたまま、
遠い思い出にかえてしまう。
でもそれでもいいじゃない、と語りかけるような本作は、
とても優しくて心にするりと入ってきます。
何が何でもやり遂げるんだ、
歯を食いしばり、こぶしに血をにじませて・・・、
そうしてついに栄光をつかむ物語は確かに美しいですが、
私は時にはそれが逆に重く感じてしまうことがあります。
そんなに強くなくったっていいじゃない。
それも一つの生き方だよ。
挫折を知る人のほうが、人の痛みにも優しくなれるものですし・・・。



ビッグマウスくんが、何かユニークな作品で10年後くらいに賞を取れるといいな。

ばしゃ馬さんとビッグマウス(通常版) [DVD]
麻生久美子/安田章大
キングレコード


「ばしゃ馬さんとビッグマウス」
2013年/日本/119分
監督:吉田恵輔
出演:麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩
共感度★★★★☆
満足度★★★★☆

柘榴坂の仇討

2014年10月06日 | 映画(さ行)
良くも悪くも武士の矜持



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幕末期。
歴史に名高い「桜田門外の変」が発端となります。
彦根藩士・志村金吾(中井貴一)は、
主君井伊直弼(中村吉右衛門)の警護にあたっていました。
しかし雪の降るその日、水戸藩浪士によって井伊は討たれてしまいます。
みすみす目の前で井伊が殺され、
役目を果たせなかった志村への沙汰は厳しく、
切腹は許されず、逃亡した水戸浪士たちへの仇討を命じられるのです。
しかし逃亡した彼らを追うためのろくな手がかりも手段もなく、
無為に月日が流れる。
その間、時代は明治となり、世の中が大きく変わっていく。
人々は髪を切り洋装となり、心までもが変わっていくようだ・・・。


一方、志村が追う水戸浪士の一人、佐橋十兵衛(阿部寛)もまた、
苦しい年月を過ごしていたのです。
その後の時の流れから、井伊の言動は正しかったと思う。
あの時のおのれの行為はなんだったのか・・・。
そして、いつか必ず自分を追う刺客がやってくるはず・・・、
そう思う彼は、人力車の車引として、
ひたすらストイックな生活をし続けていたのでした・・・。


そして、あの時から13年。ついにこの二人が対峙するーーー。



武士の矜持と夫婦愛を描く感動作
・・・ではありますが、
ちょっと出来すぎで、手放しに感動に浸るというところまでは行きませんでした。


そもそも武士の魂ってなんなのかな?
実直。
礼節を護る。
上からの命令には絶対服従。
正直であること。
卑怯でないこと。
・・・もちろん見習うべきいい面もあるけれど、
ある意味自分で考えてないというか、
命の賭けどころが違うというか・・・。
あえて当時の価値観を無視して言っていますが。



少なくとも廃藩置県で藩が消滅となった所で、
このバカバカしい命令はもうご破算だ、くらいのこと考えて欲しい。
そして、妻セツ(広末涼子)もまた、
あまりにも「男」にとって都合が良すぎます。
自分で何も考えてないし。
ただ、ミサンガが切れたシーンではちょっとグッと来ちゃいました(T_T)



以前見た、映画「桜田門外ノ変」は、
事件に加担した水戸浪士を水戸藩自体が許さず、
執拗な追跡をし、抹殺を図るところをクローズアップしていました。
何にしても、襲った方も襲われた方も悲劇。
歴史は多くの血をエネルギーとして作られていくのかも・・・


「柘榴坂の仇討」
2014年/日本/119分
監督:若松節朗
原作:浅田次郎
出演:中井貴一、阿部寛、広末涼子、中村吉右衛門、高嶋政宏
歴史秘話度★★★★☆
満足度★★★☆☆

「名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ」 吉永南央

2014年10月04日 | 本(その他)
15年前に起こったこと

名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)
吉永 南央
文藝春秋


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小蔵屋を営むお草は、新聞記者の萩尾の取材を手伝って以来、
萩尾と、彼のライフワークである民俗学の師匠・勅使河原、
その娘のミナホのことが気にかかっている。
15年前のある<事件>をキッカケに、
3人の関係はぎくしゃくしているらしいのだ。
止まってしまった彼らの時計の針を、お草は動かすことができるのか。
好評シリーズの第3弾。


* * * * * * * * * *

コーヒー豆と和食器のお店、
小蔵屋を営むお草さんのストーリー第3弾。
自分自身の年齢もあるかもしれませんが、
しっとりした情感漂う本作、つい手にとってしまいます。
表紙のイラストからすると、いかにもほのぼのしそうな感じでしょう?
しかし、人生はそんなに甘くない。
酸いも甘いも噛み分けてきたお草さんだけれど、
やはり太平ではない今を生きているのです。
しかも根が人が良いので、
町内の不穏な動きや、親しい人の憂鬱な顔を
自分の痛みとして感じてしまう。


本作は、新聞記者萩尾と民俗学者の勅使河原、
そしてその娘ミナホをめぐる
15年前の出来事を発端としたストーリーが進みます。
決して殺人事件が起こったりはしないのです。
あくまでもご町内の事件。
この3人の胸中でずっとくすぶり続けてきた思いを、
お草さんが知って行って、
そしてなんとか解きほぐせないものかと奔走。


ふとしたことで気持ちが落ち込んだり、またふと元気が出てみたり。
老齢になってから店を始めたバイタリティの持ち主ですが、
時として気がふさぐというのも等身大で親しみが持てます。
本作中、若い人たちが新たなまちづくりに意欲を注いでいくのも、いいですね。
若い人のこういう姿を見るのは嬉しいものです。
東京からのリターン組が、地方都市であらたな「ふるさと」を創造していく。
決して鄙びた味だけの物語ではないので、
お若い方にもおすすめしたい・・・。

「名もなき花の 紅雲町珈琲屋こよみ」吉永南央 文春文庫
満足度★★★★☆

ジャージー・ボーイズ

2014年10月03日 | クリント・イーストウッド
日本人はきっと気にいる・・・



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60年代、世界的人気を誇った米ポップスグループ、フォー・シーズンズ。
 その栄光と挫折の物語です。

えーと、例によって私たちぴょこぴょこコンビが出てきたのは、
 クリント・イーストウッド作品だからなんだよね。
はい。出演はしていないけれど、監督です!!
あ、だけどほんの一瞬映画の中のTVに映ってたよね。
うん、若~いクリント・イーストウッドがね。
 ちょっと心憎い演出。
で、本作はこの映画オリジナルではなくて、
 2006年トニー賞でミュージカル作品賞等4部門受賞の
 ブロードウェイミュージカルを映画化したものなんだね。
ミュージカルにクリント・イーストウッド監督?というと
 ちょっと違和感があるかも知れないけれど、
 音楽にも造詣が深いイーストウッド監督だから、それはアリでしょう。
うん、多分フォー・シーズンズの曲は、
 監督自身の青春を飾った懐かしい曲でもあるのだろうな。
そういうあなたは???
イヤこんなこと言うといい年なのがバレるけど、
 「シェリー」の曲が流行った頃はまだ子供の頃だね・・・。
 でも、テレビやラジオでずいぶん流れていたから、とても良く覚えているよ。
 日本のバンドが日本語で歌っていて、そちらの印象のほうが強いかもしれない。
小学生のしかも低学年の頃? 
だからなんというグループだったのかもおぼえていないけど・・・
 今、つい調べてしまったよ。
ダニー飯田とパラダイスキング。
あ、そう言われれば思い出した・・・。
 ちゃんとYouTubeにもあるんだなあ・・・。便利な世の中だよ。
 で、やっぱりフランキー・ヴァリ並みの声を出せる男性がいなかったようで、
 ボーカルは九重佑三子さんなんだな。
ついでに本家のフォー・シーズンズ版も聞いたけど、やっぱりいいねえ~。
 懐かしいだけじゃなくて、なんだか楽しくなっちゃう曲だなあ。
本作で初めてこの曲を聞く若い方もきっと気にいると思います・・・って、
 いやいや、ちょっとー、映画そっちのけで「シェリー」の話になっちゃってるよ。
はい、軌道修正します。



ニュージャージー州の貧しい地区。
 4人の若者たちがポップスのグループを結成。
お金もコネもない者がこの町から出るには、
 軍隊に入るかギャングになるしかない・・・などと言われていた。
実際、グループのニック・マッシとトミー・デヴィートは前科もあるチンピラだ。
 でも、フランキー・ヴァリの特異な声と才能は買っていて、
 なにかと大事に思っているのは見て取れる。
そうそう、それはあのギャングのボス(クリストファー・ウォーケン)も同じで、
 密かな後ろ盾としては心強い!!
 なんとなく、町のみんなが応援しているという感じが心地よかった。
そこにまた、作曲もできて歌も抜群のボブ・コーディオが加わって
 グループは一段とレベルアップ。
 そしてその「シェリー」が空前の大ヒットとなるわけだ。



まあでも、たいていの音楽ユニットはその後分裂していくよね。
 フォー・シーズンズもまた然り。
つまりもともとチンピラのトミーが、マネージャー的役割を務めていたのだけれど、
 コイツがいつでもトラブルメーカーだ。
 彼のお陰で空中分裂しかけたグループの後始末を、フランキーがどうつけていくのか。
うん、そこのところが見どころだし、
 フランキーは日本的義理人情になじむ奴だなあ。
確かに・・・。


それから、映画になるようなミュージシャンは、
 100%といっていいくらいドラッグに溺れ、自滅していくものだけど、
 本作、それがないのがステキだなあと思った。
うん、事実はどうかわからないけれど、少なくとも本作では、ね。
でもフランキーの娘が・・・。
やっぱり、そういうものにはすごく近い世界なんだろうね。



作中、出演者が観客に向けて語りかけるところがあるでしょう?
面白い演出だなあと思ったのだけれど、
 これはこの映画独自のものではなくて、元のミュージカルにある演出なんだって。
そうなのか。
 さすがイーストウッド監督・・・なんて感心してみてしまった!


ラストのカーテンコールにも似たフィナーレがまた、
 すこぶる楽しくてステキだった!!
華やかで、やっぱりいいよねえ。
 クリストファー・ウォーケンまで踊ってたし、それこそ、インド映画のノリに近い。
「舞妓はレディ」の残念なラストとつい引き比べてしまったよ・・・。
いや、それは初めから比べちゃダメだから・・・。

「ジャージー・ボーイズ」
2014年/アメリカ/134分
監督:クリント・イーストウッド
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ビンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン

懐かしのメロディ度★★★★★
栄光と挫折度★★★★☆
ほんのりユーモア度★★★★☆
満足度★★★★☆

楽園からの旅人

2014年10月02日 | 映画(ら行)
私達が信じられる確かなもの



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イタリアのとある町。
取り壊されようとする教会に一人、老司祭が残っています。
今さら外の世界に出て行ってもできることはないし・・・、
あとは命が尽きるまでひっそりと生きよう・・・、
そんな覚悟で。



冒頭、解体業者に片付けられるキリスト像の映像。
神は死んだ・・・そう呟きたくもなりますね。
そもそもこの教会が閉館となったのも、
おそらく信者がめっきり減ってしまったからではあるまいか。
ここへきて、司祭はおのれ自身の信仰にさえも自信を失っているのです。



さてそんな夜、
アフリカから長い旅をしてやってきた、不法入国者の一団がここにやってきます。
冷たい雨の夜・・・、老司祭は彼らを拒むことなどできません。
中には子どもや妊婦さえいるのです。
ショボくれた司祭は、不法入国者を取り締まる警察にさえ決然と立ち向かう。



キリスト生誕を思わせる赤子の誕生や、
ユダの裏切りを思わせるシーンを交えながら、
終始ほの暗い画面を美しいと感じさせられます。
廃墟のような教会のホールで、難民たちが椅子を並べ毛布をかけ横たわる。
それだけなのに、なぜかとても居心地の良い安息の場へと変貌していくさまに心打たれました。
人のぬくもりが感じられる雨露のしのげる場所、
そして少しの食料。
それだけあれば人は幸せなのかも。





司祭は、難民の彼らをかばおうとする気持ちだけは強いものの、
体は急激に衰えていきます。
彼の魂は、ようやくおのれの役割を取り戻したようなのですが、
それはおのれの命の炎を燃やして得たエネルギーだったのかもしれません。
人が利害を超えて人に尽くす「善」。
・・・確かにそれこそは、どの宗教をも超え
普遍的に私達が信じられることのような気がします。



「海と大陸」もイタリアの島にアフリカからやってくる
不法入国者を題材とした作品でした。
今ヨーロッパで大きな問題となっていることなのでしょうね。



楽園からの旅人 [DVD]
マイケル・ロンズデール,ルトガー・ハウアー,アレッサンドロ・アベル
紀伊國屋書店


「楽園からの旅人」
2011年/イタリア/87分
監督・脚本:エルマンノ・オルミ
出演:マイケル・ロンズデール、ルトガー・ハウアー、アレッサンドロ・ヘイベル、マッシモ・デ・フランコビッチ
つかの間の「安息の場」度★★★★★
満足度★★★★☆

秋の「そらのガーデン」

2014年10月01日 | インターバル
また、行ってきました。
札幌の街のど真ん中の空中ガーデン。
以前に訪れた時から約一ヶ月。
さすがに秋を感じます。





この日は、パンとコーヒーを携えて、ここでランチ。
ちょうどお昼時なので、さすがに私一人の貸し切りとはならず、
でも、そこそこの人の数で、ゆったりできました。






葡萄の種類なのでしょうか。野趣たっぷり。





これから、北海道の秋はあっという間に通りすぎて
冬に向かいます。
次にここに来るのは、来年の春かもしれない・・・。

下界ではオータムフェストの真っ最中。
メイン会場は大通公園ですが、サツエキ前にもお店が出ていました。
ビールと少々のおつまみを買って・・・
こちらも楽しませていただきました(^O^)


秋の空に映える、JRタワー