映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ひとよ

2019年11月12日 | 映画(は行)

実にやっかいで不思議な「家族」というもの

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タクシー会社を営む稲村家は夫婦と21女、3人の子供たちがいます。

ところが父親のDVが目に余るほどで、いつも子供たちに傷が絶えません。
そのことに耐えられなくなった母(田中裕子)はある夜、夫をタクシーでひき殺してしまったのです。

「あなたたちはもう自由で、何にでもなれる。
15年たったらきっと帰ってくる・・・」
と言い置いて、母は警察に自首します。

 

そして15年後。

3人の元に母が帰ってきます・・・・。

 

母が殺人犯となり、残された子供たち。
父親からの暴力からは逃れることができましたが、それとは別の苦難が押し寄せます。
世間のいわれない偏見。嫌がらせ。

長男・大樹(鈴木亮平)は結婚はしたものの、妻は子供を連れて別居中。
子供の頃からの吃音も相変わらずです。
次男・雄二(佐藤健)は東京へ出てフリーライターをしていますが、
本当に書きたいものは書けていません。
一番下の園子(松岡茉優)は、美容師の夢を諦め、スナックで働いています。
3人それぞれに母が「犯罪者」であることの影を引きずっているのです。
そんなところへ、いきなり帰宅した母。
父からは自由にしてくれたけれども、
その後の混乱を思うとそう簡単に母を受け入れることができない・・・。
そしてまた彼らには、せっかく母が「自由」をくれたのに、
生かしきれていない負い目もあるようなのです。

きしんだ4人の関係が息苦しく迫ります・・・。

 

家族というのは実にやっかいで不思議です。
もう二度と許すことなどできないような胸に刺さる言葉を言われたとしても、
時がたてばまた寄り添えてしまう・・・。
これが他人ならば二度と会わなくなってしまうのでしょうけれど。
なかったことにするのではない。
投げつけられた言葉を嫌悪しながらも、結局帰る場所はここしかない、と言う諦念でしょうか。
あえて愛だの絆だのとは言いたくない気分ではありますが、
それでもそこには確かにぬくもりがある・・・。
許すとか許さないとかではなく、まるごと受け入れるほかない存在が家族なのかもしれません。

 

また、一見真面目そうで、何か訳ありそうな堂下(佐々木蔵之介)のエピソードが
最後のクライマックスにつながるあたりのストーリー運びの妙、素晴らしかった。

 

佐藤健さん、かなりとんがっています。
美青年がとがると迫力があるなあ・・・。
しかし最後に彼が吐露する言葉こそが誠の彼らしい。

松岡茉優さんのはすっぱぶりもまた、迫力があってナイスでした。
この方、「蜜蜂と遠雷」のようなお嬢様風も悪くないけど、
こういう役もまたいいのですよねえ・・・。

 

田中裕子さん演じる母の姿もまた、なんとも言えない味があります。
夫を殺害した妻と言えば、もっと何か狂的なものを想像しまいそうですが、
彼女はそうではありません。
口数少なく、どこか茫洋としながらも、心の底に秘めた覚悟。
そんな凄みがあります。
樹木希林さんの後釜となるのはこの方だなあ・・・。

 

<ユナイテッドシネマ札幌にて>

「ひとよ」

2019/日本/123

監督:白石和彌

原作:桑原裕子

出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、田中裕子、音尾琢真、佐々木蔵之介

 

家族の困惑度★★★★★

満足度★★★★★


500ページの夢の束

2019年11月11日 | 映画(か行)

思いが強ければ・・・

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自閉症のウェンディ(ダコタ・ファニング)は「スタートレック」が大好き。
自分なりの「スタートレック」の脚本を書いて楽しんでいました。
あるとき、「スタートレック」の脚本コンテストがあることを知り、
500ページの渾身の一作を書き上げます。
ところが、すでに郵送では締め切りに間に合わない。
やむなくウェンディは直接届けることにして、
愛犬ピートとともにハリウッドをめざし旅立ちます。
・・・しかし自閉症の彼女は、実は一人で遠くへ出かけたことがないのです。
ウェンディは無事にハリウッドへたどり着けるでしょうか・・・?

 

ウェンディは障害を持つ人の自立支援施設で暮らしています。
彼女はいろいろなことにこだわりが強かったりします。
そして感情表現が苦手で人とのコミュニケーションが難しい。

そんな彼女はソーシャルワーカーのスコッティ(トニ・コレット)のアドバイスを受けながら、
日々のスケジュールを手順通りにこなすことで、
アルバイトができるくらいにまで通常の生活に近づいていたのです。

 

そんな彼女が「スタートレック」がとても好きなのは、
作中のスポックが感情表現できないというところに自分を重ね合わせていたようなのですね。
でも、顔に表れない感情も、文章の中では豊かな表現が深く広く息づいているようです。

バスのチケットの買い方にも戸惑ったり、途中で財布を盗まれたり・・・
実にハラハラさせられる一人旅。
いやな人もいるけれど、でもいい人だってちゃんといます。

 

何もできないと、自分も周りの人も思っている。
けれど、思いが本当に強ければ、できる力を誰もが持っているのかもしれません。
踏み出すのにはとても勇気がいるけれども・・・。

 

500ページの夢の束 [DVD]
ダコタ・ファニング
ポニーキャニオン

WOWOW視聴にて>

500ページの夢の束」

2017/アメリカ/93

監督:ベン・リューイン

出演:ダコタ・ファニング、トニ・コレット、アリス・イブ

 

冒険度★★★★☆

満足度★★★★☆


「カナダ金貨の謎」有栖川有栖

2019年11月10日 | 本(ミステリ)

 金貨が持ち去られていたのはなぜ?

カナダ金貨の謎 (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社

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民家で発見された男性の絞殺体
―殺害現場から持ち去られていたのは、一枚の「金貨」だった。
完全犯罪を計画していた犯人を、
臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖がロジックで追い詰めていく!
表題作「カナダ金貨の謎」ほか、切れ味鋭い中短編「船長が死んだ夜」「エア・キャット」

「あるトリックの蹉跌」「トロッコの行方」を収録。
待望の国名シリーズ10!

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有栖川有栖さんの国名シリーズ、第10弾。

中短編5編が収められています。
中の「船長が死んだ夜」は先に別の本で読んだことがありました。
しかしそれなのに、トリック等は何も覚えていなかったというのが情けない・・・。

 

一番面白いと思ったのはやはり表題作「カナダ金貨の謎」。
珍しく犯人が語り手で始まります。
そしていつものように有栖からの視点と交互に話は進んでいきます。
殺害された男がいつも身につけていた「カナダ金貨」が見当たらない。
犯人が持ち去ったと思われるのだけれど、それはなぜ、何のために・・・? 
犯人は最初からわかってはいるものの、多くのクエスチョンが渦巻き、
とても興味を引くストーリーでした。

 

「あるトリックの蹉跌」では、学生時代の有栖と火村の出会いのシーンが出てきます。
でもこれは火村シリーズ第一作「46番目の密室」にすでに書かれていたそうで・・・。
あらやだ、絶対読んではいるはずなのですが、そのストーリー自体も何も覚えていません。
・・・近いうちに、是非読み直さなければ。

で、ここではその初めての出会いの時に、有栖が書いていた「ミステリ」のことが出てきます。
有栖ファンなら必読。

国名シリーズとして、納得の一冊。

 

「カナダ金貨の謎」有栖川有栖 講談社ノベルス

満足度★★★★☆

 

 


マチネの終わりに

2019年11月08日 | 映画(ま行)

大人のピュアな恋愛

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パリ公演を終えた世界的クラシックギタリスト蒔野(福山雅治)が、
パリの通信社に勤務するジャーナリスト洋子(石田ゆり子)と出会います。
二人は惹かれあい、心を寄せていきますが、洋子には婚約者がいたのでした。
そして、ギタリストとしての蒔野をひたすらに見つめ続けているもう一人の女性。
二人の愛は結ばれるかに思えたのですが・・・。

 

私、本作の予告を見たときに、これは大人の性愛をも含んだストーリーなのだろうなと思ったのです。
ところが本作、大人の恋を描きつつ、意外にもピュアな物語。

 

蒔野はちょうどギタリストとして壁に突き当たっています。
自分自身の音楽を見失い、どう進んでいいのかもわからなくなってきている。

そんな彼に道を示すのは結局燃えるような愛ではなくて、
穏やかな日々の生活ということなのでしょうか。
いや、失い、行き場をなくした愛こそが、彼の心に深みを与えたのかもしれません・・・。

 

メロドラマにありそうな“邪魔”が入って二人の愛が壊れるところは、
ちょっとどうなのかと思いはしたのですが、
そのお邪魔虫の心境にも迫っているところで、納得はできました。

 

それにしても現代の恋愛は、スマホをなくしたらそれまで、というのが怖いですね~。

 

過去の出来事はもちろん変えることはできないけれども、
その出来事の意味は未来に変えることができる。
未来は過去を変えるというフレーズが、ラストに心に響きます。
40代男女、ピュアな大人のラブストーリーなのでした。

 

元々ギターを弾く福山雅治さんならクラシックギターも楽勝かと思ったのですが、
これがなかなか、いつもとは違うことが多くて苦戦したとのこと。
でも「指」の代役は使わなかったそうです。
クラシックギターの甘く切ない音色が、作品世界をステキに縁取っていました。

 

<シネマフロンティアにて>

「マチネの終わりに」

2019/日本/124

監督:西谷弘

原作:平野啓一郎

出演:福山雅治、石田ゆり子、伊勢谷友介、桜井ユキ、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行

ロマンチック度★★★★☆

すれ違い度★★★★☆

満足度★★★★☆


ホワイト・ボーイ・リック

2019年11月07日 | 映画(は行)

おとり捜査に協力したが故に

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16歳で麻薬王となった実在の人物リチャード・ウェルシュ・Jrがモデルの物語です。

1980年代デトロイト。
リック(リッチー・メリット)の父(マシュー・マコノヒー)は銃のディーラー、
姉は麻薬中毒、そんな環境で育ったリック。
彼は黒人ギャングたちと親しくなり、そんな中の唯一の白人ということで
「ホワイト・ボーイ・リック」と呼ばれるようになります。

そんなある日、FBIがリックに目をつけ、情報提供者となることを持ちかけます。
承諾したリックはその情報提供のために麻薬取引に関わるようになり・・・。

 

元々リックは姉の中毒を見ており、
また、結構いい加減な父親が「麻薬にだけは手を出すな」と言っていたこともあって、
それまで麻薬には興味がなかったのです。
ところがFBIのおとり捜査の手先となり、麻薬の取引方法を図らずも身につけてしまった。
危ない目にも遭い、いったんはこの話は終了するのですが、
その後、金のためにリックは自ら麻薬取引に手を染め、それが成功を収めていく・・・。

 

でもこれは成功物語ではないのです。
その後逮捕されたリックはまだ10代というのに無期懲役の刑を科せられてしまう・・・。
しかしこれにはFBIの責任はないのか・・・?
無論FBIがおとり捜査のことを証言などするはずがありません。

そういう、いかにも非情で苦いストーリー。
そもそもそこまで麻薬が横行している社会が問題なのだろうなあ・・・

 

ホワイト・ボーイ・リック ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
マシュー・マコノヒー,リッチー・メリット,ブルース・ダーン,ジェニファー・ジェイソン・リー,ブライアン・タイリー・ヘンリー
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

WOWOW視聴にて>

「ホワイト・ボーイ・リック」

2018/アメリカ/110

監督:ヤン・ドマンジュ

出演:マシュー・マコノヒー、リッチー・メリット、ベル・パウリー、ジェニファー・ジェイソン・リー

 

理不尽度★★★★☆

満足度★★★☆☆

 


「注文の多い注文書」小川洋子&クラフト・エヴィング商會

2019年11月06日 | 本(その他)

「ない」はずのモノは届けられるのか・・・?

注文の多い注文書 (ちくま文庫)
小川 洋子,クラフトエヴィング商會
筑摩書房

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サリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」、
村上春樹の「貧乏な叔母さんの話」、
内田百聞の「冥途」など、
5つの物語に登場するこの世にないものを小川洋子が注文し、
クラフト・エヴィング商會が探し出す
はたして「ない」はずのものは、注文主に届けられるのか?
現実と架空が入り混じる世界で、

2組の作家が想像力の火花を散らす前代未聞の小説。

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先に、クラフト・エヴィング商會の「ないもの、あります」という本を読んだことがあり、
本作は、小川洋子さんが「では、これはどうか!」という感じで、
クラフト・エヴィング商會に注文書を突きつけるという仕掛けになっています。

注文のあったその品物は
「人体欠視症治療薬」、「バナナフィッシュの耳石」、「貧乏な叔母さん」等々・・・。
一見して訳がわからないものばかり。
つまりその「注文書」自体がストーリーとなっていて、
しかも、川端康成、D.J.サリンジャー、村上春樹などの小説と絡めてある、
というのがさすが小川洋子さんの手腕であります。
しかもサリンジャーに村上春樹というチョイスが私にはど真ん中!!

そしてクラフト・エヴィング商會のステキな写真付きの納品書。
こんな珍奇な注文にどう答えるのか、というのが見物です。
時には時を超える「時間差郵便」なんていうモノが出てきます。
これはあるといいですよねえ・・・本当に。
なんともナイスな本なのでした。

 

「注文の多い注文書」小川洋子&クラフト・エヴィング商會 ちくま文庫

満足度★★★★☆

 


閉鎖病棟 それぞれの朝

2019年11月05日 | 映画(は行)

不安に押しつぶされそうな人々・・・

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長野県のとある精神科病院。
妻とその愛人、そして母親を殺害し死刑判決を受けたが、
死刑執行に失敗し、生きながらえて、やむなく収容されている梶木(笑福亭鶴瓶)。
幻聴があり暴れるようになった元サラリーマンチュウさん(綾野剛)。
そして、父親のDVにより行き場をなくしている女子高生・由紀(小松菜奈)など、
家族や社会から遠ざけられた、様々な過去と問題を持つ患者たちが暮らしています。

 

梶木は陶芸に取り組み、穏やかで、院内でも一目おかれていたのですが、
あるとき事件を起こしてしまいます・・・。

 

いろいろな事情でこの施設にたどり着いた人々。
そこでは一応平穏が約束されているわけですが、一生このままいるわけにはいかない。
自分は大丈夫なのか。
ここを出て社会の中に溶け込み自立して生活していけるのか・・・? 

 

様々な不安で押しつぶされそうになっている実情がひしひしと伝わります。
綾野剛さんのナイーブな感じ、いいですね。

 

特に由紀が、ようやく自分の居場所と思えたこの場所で、
またもや悲劇に見舞われるというのは本当にショッキングで、胸が潰れそう・・・。
実に感情を揺さぶられます。
そして、必死にあがき続ける彼らが、少しの希望を見出していくというエンディングもよし。
見応えのある作品でした。

 

この精神病棟の患者さんたちの様子がユーモラスなんです。
結構名の知れた俳優さんたちが演じているどこかネジの緩んだ人々。
これも見所の一つと言えましょう。
結局ここは社会の縮図。
外の世界にもいろいろな人がいて、彼らはちょっとそれが極端なだけなのかもしれません。

 

<シネマフロンティアにて>

「閉鎖病棟 それぞれの朝」

2019/日本/117

監督:平山秀幸

原作:帚木蓬生

出演:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈、板東龍汰、平岩紙、小林聡美

 

社会の縮図度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


スターリンの葬送狂騒曲

2019年11月04日 | 映画(さ行)

ソ連政権内部の争いを辛辣かつコミカルに

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1953年旧ソ連、独裁者スターリンの死による政権内部の争いを
辛辣かつコミカルに描いた作品。
ロシアでは上映禁止となったそうです。
・・・まあ、そうでしょうね。
いくら体制が変わっても当のロシアの人々は、
こんな作品を面白がっては見られないと思います・・・。

 

それにしても、スターリンの独裁体制に逆らえば死の制裁があるだけ。
そんな中では彼の側近のトップ集団でさえ
スターリンの顔色をうかがいながらでしか発言できない。
恐ろしい社会です。

 

冒頭が振るっていますよ。
あるコンサートの最中に、スターリンから
「今の録音をあとで取りに行かせるので渡すように」と、連絡が入る。
ところがその日はラジオの生放送なので、録音はしていなかったのです。
青ざめたスタッフはコンサートが終わったところで、もう一度録音のために演奏をさせるのです。
会場のお客はかなり帰ってしまい、すると音が反響してしまってまずいので、
わざわざ近所の農家人たちを呼び入れたりする。

とにかくスターリンに逆らうと命がない、
そういう認識の上で人々が生活しているというエピソードでした。

 

さて、いよいよスターリンが脳卒中で倒れた折には、
側近たちが床に倒れたままのスターリンを取り囲み相談を始めます。
まず医者を呼ぶべきだが、まともな医者はほとんど獄中にある・・・。
そんなことを言いながら、それぞれ今後どうすれば一番自分に有利となるのか、考えを巡らせます。
果たしてスターリンは回復するのか?
そうでないとしたら後継者は?

 

こんなドタバタ劇の果てに、なんとも悲惨な結末があります。
それを指揮したフルシチョフこそが次の政権を握る訳なのですが・・・。

 

今もこんなことと同様な体制の国がありそうです。
それを思えば日本はまだましに思えるから不思議・・・。

 

スターリンの葬送狂騒曲 [DVD]
スティーヴ・ブシェミ,ジェフリー・タンバー,オルガ・キュリレンコ,マイケル・ペイリン,サイモン・ラッセル・ビール
ギャガ

WOWOW視聴にて>

「スターリンの葬送狂騒曲」

2017/イギリス/107

監督:アーマンド・イアヌッチ

出演:スティーブ・ブシェーミ、サイモン・ラッセル・ビール、ジェフリー・タンバー、ポール・ホワイトハウス、ルパート・フレンド、オルガ・キュリレンコ

 

狂騒度★★★★★

独裁と忖度度★★★★★

満足度★★★★☆

 


「オリンピックへ行こう!」真保裕一

2019年11月02日 | 本(その他)

アスリート、苦難の道

オリンピックへ行こう!
真保 裕一
講談社

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大学卓球チーム内の軋轢や友情、競歩ランナーの孤独、サッカー選手の挫折と希望、
各種目で日本代表を目指すアスリートを描く応援小説

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真保裕一さんの「~へ行こう!」シリーズ。
といっても私は「デパートへ行こう!」しか読んでいないのですが・・・。
本作は「いだてん」的展開を期待して手に取ったのですが、ちょっと違いました。

 

本巻には3編が収められていて、それぞれ、卓球、競歩、ブラインドサッカーの
頂点を目指そうとするアスリートが主役です。

そうしたときにはつきものの、力のこと、技術のこと、才能、限界、
ライバル、指導的立場の者のパワハラ、様々な壁が彼らの前に立ち塞がります。

特に卓球については、かなり卓球をやりこんだ人でなければわからなそうな技術的な記述。
リアルではありますが、卓球のことをよく知らない私にとっては読むのが苦痛でした。
ヒリヒリ感は伝わりましたが・・・。

苦難ばかりがリアルで、それぞれの競技への「好きだ」という熱量がいまいち伝わらない気がしました。

 

「オリンピックへ行こう」真保裕一 講談社

満足度★★.5


フッド ザ・ビギニング

2019年11月01日 | 映画(は行)

手に汗を握って楽しもう!

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中世イングランドの伝説的英雄ロビン・フッドの誕生秘話。

 

イングランド、ノッティンガムの若き領主ロビン・ロクスリー(タロン・エガートン)は、
十字軍に徴兵され、4年後に帰還します。


ところがその間に、ロビンは戦死したとされ、領地も財産も没収された上、
恋人マリアン(イブ・ヒューソン)も今は別の男・ウィル(ジェイミー・ドーナン)と恋仲になっています。
絶望の底に沈むロビン。


しかし、戦地で出会った異教徒の戦士ジョン(ジェイミー・フォックス)に導かれ、
腐敗した政府への反逆を開始します。
ロビンは頭巾(フッド)で顔を隠し、政府から盗んだ金を庶民にばらまきます。
そしてまたその一方、一部の金を権力者へ献上し、政治の中枢へ近づいていきますが・・・。

 

私、これまでの「ロビン・フッド」の映画を結構見ています。
その時々で特徴があってそれぞれ面白く、ロビン・フッド役の俳優も時代を映す感じで面白いですよ。

興味のある方は、こちらをどうぞ・・・

1976年「ロビンとマリアン」  ショーン・コネリーとオードリー・ヘプバーン

1991年「ロビン・フッド」  ケビンコスナーと、十字軍の戦争からついてきた異教徒がモーガン・フリーマン

2010年「ロビン・フッド」  ラッセル・クロウとケイト・ブランシェット

 

さて、そういう流れてみると見ると本作、「ザ・ビギニング」と歌ってはいますが、
十字軍遠征に参加したロビンが故郷に帰ってきて・・・という流れは同じですね。
ただ本作は、いよいよロビンが民衆を率いてシャーウッドの森に向かうところまでの話になっています。

 

そして本作、いかにも現代的で、アクションに力が入っています。
まるで機関銃のような鉄の弓矢がロビンらを襲う。
ひゃー怖い。
狭い高所の木道を馬で駆け抜けたり、
鉱山で溶けた鉄の巨大な炉が倒れかかってきたり・・・。
スピーディでバリバリのアクション。
全く、あれよあれよという感じ。


なので内容はともかく(?)無条件で我を忘れて楽しんでしまうという、エンタテイメント作品。
元々ロビンフッドは実在の人物と言うより、かなり脚色された伝説の人物なので
歴史的背景がどうのこうの・・・というよりも、こうした作りが似合う物語なのかもしれません。
ロビンはお金持ちの坊っちゃん風で、
マリアンのほうが過激な性格、というのもいかにも今風です。

 

「フッド ザ・ビギニング」

2018/アメリカ/116

監督:オットー・バサースト

出演:タロン・エガートン、ジェイミー・フォックス、ジェイミー・ドーナン、イブ・ヒューソン、ベン・メンデルs-ン、ティム・ミンチン

アクション度★★★★★

マリアンの威勢の良さ★★★★★

満足度★★★★☆