ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

チンドン屋の本当

2007-02-25 12:26:52 | アート・文化

 チンドン屋で書こうと思ってたんだ。菜の花座の次回作の話し。きっかけは二つ、一つは、若手座員のAが、忘年会で披露した芸が爆笑ものだったってこと。何と言うのかな、あの箒をギターに見立てて歌うパフォーマンス、あれなんだよ。乱れかけていた宴会を一気に引きつけてしまったからね。歌も、なんかこう、若いってことのうっとうしさにうじうじしながらも、懸命に突き抜けようとするような、エネルギーと切実感がぐちゃぐちゃにこんぐらがったいい味わいだった。

 で、その時、ぴこぴこっと閃いたわけ。チンドン屋だ!

  なぜ?どうして?なにが、チンドン屋なんだ?いや、そんな、閃きに理由なんてないよ。まあ、今、冷静にと言うか、こじつけ的に考えてみると、こうかな。歌が好きで目立ちたがり屋の若者。路上ライブ(実は座員A、以前、東京某所に夜な夜なギター抱えて出没してた)で機会を狙ってきた、でも歌で食ってくだけの力はない。母親からはまともな職に就けって愚痴と小言と泣き言の三連発。どうする、どうする?と、ここまで来れば、チンドン屋までは後一歩!えっ、ぜんぜん近づてちゃいないって?そう思う人は想像力の足りない人です。って、いいのか、そんな簡単に切り捨てて!

 もう一つの理由は、数年前、フレンドリープラザ演劇祭のサブステージで見た、チンドン屋さんだった。その時の驚きと印象は、えっ、まだやってる人いたんだ!やっぱどっかうらぶれてるよな!でも、このうらぶれた感じ、懐かしくていいよなあ!だった。ああ、俺の人生の通奏低音だよ、このもの悲しさは、とも考えてた。でも、一つだけ、予想外があった。それは、若いお姉ちゃんがメンバーに加わっていたこと、そして、その娘(こ)が、思いがけず、見事な歌唱を披露したことだった。なんだ、この娘は?なぜ、チンドン屋にいるの?チンドン屋に満足してんのか?きっと抜けるね、残されたおじさん、おばさんどうすんだろ?捨てられた落ちぶれチンドン屋の行く末は?と、まあ、いい加減なもんだけど、勝手に空想しながら、あっこれ書けそう!と、この時も閃いたわけなんだな。

 これがきっかけ。チンドン屋で行こう、チンドン屋で芝居作ろう。これだと、舞台で楽器使えるしね。にぎやかな音楽(ちんどん)入りの舞台、いいじゃないか。と、決まれば、まずは資料集めだ。アマゾンでチンドン屋関連本を注文した。

 送られてきたのは、『ちんどん屋です。』林幸次郎・赤江真理子著、思想の科学社刊、『チンドン屋!幸次郎』林幸次郎著、新宿書房刊、『笑う門にはチンドン屋』安達ひでや著、石風社刊、『大道芸人』森直実著、ビレッジセンター刊の4冊だった。

 一読、いや、驚いたのなんのって、目から鱗どころか、目やにもコンタクトも飛び出したね。ウソ、コンタクトなんてしてないくせに!チンドン屋が斜陽産業だなんて、20年前の話しだったんだ!林さんの東西屋(根拠地:大阪)も安達さんのアダチ宣伝社(根拠地:福岡)も、メンバーは若者で溢れかえっているし、仕事は、チンドンだけじゃなく、イベントのアトラクションやら、宴会の出し物やら、遊園地でのパフォーマンスその他その他と、ともかく、一目を引く仕事ならなんでもござれの大活躍なのだ。知らなかった!失礼しました!舞台は、日本全国言うに及ばず、世界各地を飛び回ってる。林さんの外国での公演記録はゆうに20回超えるというのだから凄い!

 しかも林さんも安達さんも、文章が実に上手い!!林さんや赤江さんの文章には、チンドンへの愛情ももちろんだが、生きることの知恵や文化への深くて鋭い洞察がいっぱいだ。お神楽やらどさ芝居、地車(だんじり)囃子など、庶民の中で生きつ続ける伝統文化にラブコールを送る、赤江さんの熱烈な文を読んでいると、私など、ほんと、文化的根無し草だよなと、つくづく感じる。林さんのニューヨーク、チンドン初お目見えの章もお勧めだ。チンドンとニューヨーク、二つの文化の思いがけない交流に、頷き、唸ることしきりだった。

 安達さんは、チンドン屋にたどり着く道程が、無類に面白い。《イカ天》、(なんて、知ってるかな?若い人、知らないことはネットでチェク!これ、今回のチンドン屋大発見で私が得た貴重な教訓の一つ。チンドン屋さんのホームページ、たくさんある。それも、どれもこれも元気で華やかで工夫があって、本当に楽しい。ぜひ、覗いて見て下さい。http://www.tozaiya.co.jp/ http://www.h3.dion.ne.jp/~adasen/チンドン音楽のCDなんかも売ってる。)安達さんはその《イカ天》の人気ロックバンドのボーカリストから地方局のDJを経て、チンドンに天職を見いだしたって人だ。彼の本は、まさに、迷える若者の成長・成功物語なんだ。なんか、うちの劇団のAにもちょっとかぶるじゃないか。

 さて、そんな、思いがけない現実が、ががーんと出現して、困ったよ、とっても。時代に置き去りにされる人々、職業、=チンドン屋、っていう設定が、まるで成り立たないじゃないか。さあて、どうしたものか?今のとびきり生きの良いチンドン屋で書くのか、林さんや安達さんのチンドン人生を下手になぞるのか、時代設定を変えるか、それとも、潔く、諦めるか、う~ん、迷ってます。まっ、しばらくは、この、ああでもないこうでもない状態に身を任せてみようかな。でも、原稿締め切り3月末なんだよな、どうする?

コメント (2)
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