渡部えり子と小日向文世のミザリー川西公演、満席だった。えり子さんの芝居はフレンドリープラザでは、これで3本目、すべて超満員、山形の人たちって律儀だねぇ。今回は、小日向さんの人気もかなりあったようだけど。わかってた、凄い人気なんだろうなってこと。だから、期待半分、やっかみ半分で会場に出かけた。やっかみって何かって?って、そりゃ、テレビ出てる人なら客が集まるってこの文化的後進性についてだよ。
だから、ちょっと、引いてる気味はあったんだけど、でも、できるだけ素直に、先入観を持たずに、決めつけずに見ようと努力したんだ。でも、・・・・でも、だめだった。
面白くない!
芝居の進行を眠け抑えながら、なぜ、面白くないのか、精一杯考えてた。
まず、こういう異常性癖の持ち主を主人公にしたドラマが好きになれないってこと。たしかに、今の時代はかなり狂っていて、こんなとんでもない女性がいたっておかしくないとは思うんだ。新潟の少女長期監禁事件を初めとして、いろいろあったからね。でも、ああいったのって、僕の中では普遍性ないんだよ。ただただ、嫌悪感があるだけで。だから、見ていても、心の中に刺さってくるものがなかった。それから、ホラーも好きじゃないってことてもある。
次に、えり子さんの問題。この芝居って、もうちょっとスマートに見せて欲しかった、てのが僕乗り願い。たしかに笑いがあって、恐怖一辺倒から抜け出した演技だったけど、なんか、ぞっとするものが欠けていたって感じた。
さらに、小日向さん。どうなんだろう?このポールって役、彼で良かったんだろうか?思いがけず監禁され、傷んだ足の激痛にも耐え、作家としての矜持を踏みにじられる屈辱をも堪えて、半ば狂気の中で、新しい小説を仕上げて行く、という人気作家の内面が十分表現できていたかどうか?たしかに、彼が演じたことで、随所に笑いが組み込まれた。でも、それがかえって、緊迫感を損なう結果になったように感じたんだ。
まあ、お客さんは、大方、満足して帰ったようだった。一緒に見た置農演劇部の生徒たちも、みな感激していたしね。てことは、僕の感受性が鈍っているってことなののか?年取ってひねくれてきてるってことなのか?
この舞台で一番の見物は、装置(松井るみ)だったかな。これは素晴らしかった。思い切った遠近法の利用で、あの狭いプラザの舞台がぐーんと奥行きを増していた。なんせ、手前の壁は、高さ15尺はあったからね。中央上手よりで壁をせり出させて二つの空間にわけていた。下手側には二階に上がる階段やら、バスルームまで作られていた。そのバスルームがキャスターで下手からせり出すんだもの、お客さん驚きのあまり、笑ってしまったね。装置のばらし手伝いながら見てみたら、床もきっかり開帳場、つまり、奥から客席に向かって緩やかなスロープになっていた。いやあ、凝るもんだ。
でも、この装置が十分生かされてたか?となると、かなり疑問だ。だって、二階に行ったのなんて、たしか一度だけ、しかも、二階がトイレ?ってこれどういうこと?下手側の玄関ホールらしき空間もあまり利用されず、ほとんど、上手2/3の寝室兼書斎で話しが進行していた。もったいない限りだ。ただ、下手側はたしかに必要な空間ではあったのだけどね。
まあ、あれだけの装置を見せてもらったから、まあ、納得は納得の舞台だったかな。