ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

アンケートの正しい読み方

2008-08-01 22:21:25 | 演劇

 全国大会出場記念公演が終わり、観客の皆様からたくさんのアンケートを寄せていただいた。特に、米沢の夜公演では50人近い方が懇切丁寧に書いてくださった。10人に1人!凄い回収率だよ。ありがたい!!中には、翌日、翌々日にお手紙やファックスで送ってくださる方までいて、まったく嬉しい限りだった。

 いただいたアンケートは、生徒全員と読んだ。ほとんどはお褒めの言葉と激励のメッセージで、改めて置農演劇部、そしてこの『どんがら山奇譚』への深い思いやりを感じさせるものだった。でも、中には、手厳しい批評や注文などもあって、部員ともどもちょっぴり意気消沈する場合もあった。声が聞こえない、動きが小さい、ダンスがそろわない、衣装がつまらない、演技が大袈裟だ、歌い方が違う、台本が平板だ、歌と伴奏のバランスが悪い、歌っている時のふりに工夫を、・・・・・・かなりいろんな注文が寄せられる。そんなアンケートに出会うと、初心な生徒たちは、たちまち萎縮、途端に自信を失って、ここ直そう、あそこどうしようと右往左往してしまう。

 だが、待てよ!それ言ってるのって一人だろ?その人ってどんな人なんだ?芝居がわかってる人なのか?舞台のセンスがある人なのか?どんな気持ちで書いてるんだ?冷静に問いつめて見ると、そのアドバイスが適切なものかどうか、至ってあやふやになってくる。

 特に、いろんな注文つける人って、少しかじったくらいの人が多いから要注意だ。結構、専門的なことなんか書いてあったりして、生徒は、もうそれだけでびびってしまう。で、どうしましょう?先生。って泣きついてくる。

 そこで、生徒たちに正しいアンケートの読み方、使い方を伝授した。それは、まず、元気が出る批評をありがたくいただくってことだ。そう、90パーセントくらいは、喜んでいればいい。残り10パーセントで、厳しい言葉を受け止める。ただし、軽く、半身で受け取ればいいんだ。悩んじゃいけない。あっそ、なるほどね、そんな見方もありなんだ、程度が良い。

 それから、それを書いた人のセンスとスタンスをしっかり読み取ること。例えば、台本を誤解していたり、シーンを見間違えていたり、演出や演技を見落としていたりする表現があったら、その人の批評は、まあ、適当に流しておけばいい。軽く聞き流しながら、心の片隅でその一言を気にしている、こんな姿勢でアンケートを受け止めればいいんだ。

 アンケートへの正しい対処の姿勢を教えるとともに、批評を書くことの厳しさということも話して聞かせた。下手なことを書けば、そのたった一言で、とことん馬鹿にされ、以降一切相手にされなくなることだってあるんだってことを、僕の経験を通して言い聞かせた。と同時に、技術に偏って芝居を見るな!ってことも教えた。例えば、ピンがずれたとか、トップからはずれたとか、歌の音程が狂ったとか、音響のバランスが悪いとか、・・・とかく、演劇部の高校生は、これを言いたがるんだ、偉そうに。でも、演劇を批評する根本は何かって言ったら、それは面白かったかつまらなかったかってことなんだ。だから、僕の基準はいたって単純、上演中に時計を気にしたらその芝居はたいしたこと無い。幕が下りるまで、時間を忘れていたら、その芝居は素晴らしい。これだよ。

 でも、未熟な高校生が、自分の好悪だけで判断するってことの無謀さもある。ここは難しいところだけど、自分の感性を信頼しつつ、なおかつ自分の鑑賞力を疑え、ってこれ絶対矛盾してるよね。でも、これが芸術に接する時の正しい姿勢なんじゃなかろうか。今、わからないけど、いつかその素晴らしを実感できる時がくるかもしれない。本当は凄いものなのに、自分にはわからないだけなのかもしれない。だから、謙虚と大胆、自信と不安これを行ったり来たりするってことが、偉大なるもへの正しい接し方なんだと思う。

 若い人だけのことじゃない。僕だってそうだ。難解なものへの畏敬、自分の感性への疑い、今まさに自分を磨きつつあるって気持ち、いつまでも持ち続けたいものだよね。

 

 

 

コメント (2)
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