ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

涙の本読み

2008-08-27 21:47:37 | 演劇

 台本が完成して一週間、まだ本読みが終了していない。そりゃそうだ、たった1ページに2時間、わずか1行のせりふに30分、かかるなんてことだってあるんだから。ともかく、徹底的にダメを出す。1年生などは初めてのキャストだから、発声からとことん直しを入れる。毎日のように呼吸法や発声練習を積み重ねていても、いざ、それをせりふに生かすとなるとまるで別物だ。息は吸っても、声にならない。口を開けても、ろれつが回らない。そのたんび、何度でもやり直しだ。

 上級生にしたって、声は出ていても、まるで生きたせりふになってこない。せりふの一つ一つ、そのせりふに込められた気持ちや背景を説明し、至らぬ点を懇切丁寧に教える。でも、でも、でも、一本調子なんだよ!何度やっても同じ。どうしてなの?ってこちらが聞きたくなるくらいワンパターンから抜けられない。声の調子も声の高さも声のトーンも抑揚も強弱もとことん同じ!こういうやり方だってあるだろう、間を生かすとか、せりふを引っ張るとか、せりふの出だしの高さを変えるとか、もう、滅茶苦茶具体的にアドバイスしても、変化なし!!とうとうしびれ切らして、こうすんだよ!ってやってみせるんだけど、それを真似できない!って言うか、自分がやったのとどう違うか聞き分けられないんだから、困ったもんだ!

 こんな有様だから、とにかく本読みは時間がかかる。もう、どかっと腰据えて粘るしかない。今回は特に、時代が60年も前の話だから、時代背景やら当時の人間の生き様やら、すべてが異次元、別世界。だから、稽古の合間にしょっちゅう歴史の授業が入り込むことになる。学徒動員やら特攻の話、戦後闇市とかパンパンと呼ばれた女性たちのこと。進駐軍の戦後経営、つまり財閥解体、農地解放、憲法制定、さらには、朝鮮戦争からベトナム戦争、イラク戦争に至る世界の民主主義守護神アメリカのこととか、公民権運動のこととか。昨日などはディクシー・チックスがブッシュ大統領を批判して、音楽界から完全に乾された話までした。もちろん、アメリカ移民が戦争中、強制収容された話など聞かせないわけにいかない。なんたって、その移民2世が主人公の一人だから。こんな調子だから、やたらめたらと時間がかかる。

 でも、これが大切なんだと思う。繰り返し繰り返ししつこくやり直しを迫ることで、部員たちもぎりぎりのところで七転八倒しつつ、目指す表現にたどり着く。ようやっと、せりふが生きた言葉となって行き交うようになる。そして、ついにはワンパターンの壁を突き破る。ここまで来れば、後は楽だ。動きだって自然と付いてくる。

 昨日の本読みでは、ついに涙が流れた。せりふの意味をしっかりと伝えきった言い回しに多くの部員が涙した。もちろん、僕も涙をこらえた。・・・・先生、これいい台本なんだ!・・・

 当たり前だよ、そう言ってるだろうが、最初から。僕は涙しながらこのせりふ書いたんだから。ようやくわかってくりれた。ここまで来れば、あと一息だ。そのせりふの力で、観客席を涙で溢れさせてくれよな。

コメント
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