ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

はちゃめちゃは武器だ!:『ソウル・キッチン』

2011-02-27 20:08:39 | 映画

東京に来た。春のお勉強タイムってことだけど、今年はちょっと早めだ。いつもだと子どもミュージカルを仕上げて、菜の花座の台本も書き上げて、よしっ、ご苦労!って東京行きを自分に許してきた。

今年は、菜の花座の台本なんて、はるか彼方、子どもミュージカルだってまだ稽古が始まったはがりだ。なのに、何故東京?大きな理由は見たい芝居があったってことかな。西荻の会『ロング・ロスト・フレンド』。なんじゃ西荻の会って?どうしてこんな名前になったのかは知らない。伊藤四郎、角野卓三、佐藤B作、・・・・・そうそう、おおっとのけぞる笑いの達人が集まってなんかやろうっこてなんだ。しかも演出はあのG2だから、これはなんとしても見たいって思った。で、今は下北沢(会場:本多劇場)でその公演までの待ち時間をこうしてキー叩いてるってこと。だから書くのは、この舞台の感想じゃない。さっき見てきた映画『ソウルキッチン』のことだ。

せっかく東京くんだりまで来て見る映画なんだから、米沢のワーナーマイカルなんかではかからないものをみなくちゃね。となると単館系ってことは渋谷ってことで、事前に候補を何作か当たってきた。って言っても詳しくチェックなんかしたわけじゃない。感だよね、直感。これ、行ける!って作品をピックアップしてきた。その何本かのうちの一本がこれ、『ソウルキッチン』だ。

映画館はシネマライズ、建物もスクリーンもなんかへんてこな飾りがあってお化け屋敷の出来損ないって感じの映画館だ。これまでも何度か来ているが、いつもほぼ満席で熱気あふれていて、うーん、ここは映画の選択が巧みなんだろうなって感じていた。ところが、今日はどうだ?!がらっがら!

うん?失敗したか。いくら平日だからってこのすかすかはなんだ。

なんて不安は始まってすぐにふっとんだ。出てくるは出てくるは、一癖二癖ある登場人物ばかりだ。すべて冷凍食品で間に合わせている超適当なレストランのオーナーシェフ、これが主役だ。そこに刑務所を仮出所中のばくち狂いで盗みをなんとも思っていない気のいい?兄貴、さらに気に入らない客にはテーブルにナイフを突き立てる腕利きシェフ、下宿代を滞納しながら威張りくさってボート作りに精を出している爺さん、さらにさらにやたら酒を呷る絵描き志望のウェイトレス。こう書くとマンガ的って思われないでもないが、それがみんな実に存在感たっぷり。

そうそう、友人のふりしてレストランの乗っ取りをたくらむ悪辣非道の不動産屋、なんだか金貸しみたいにレストランを訪れて滞納している税金の取り立てをする女性税務官。これってマンガ?アニメ?って??って思ってしまうほどの濃いキャラのオンパレードだ。

さらにストーリーの展開がまたはちゃめちゃ!客を失ってつぶれる寸前のレストランを救うのが、兄貴とその仲間が強奪してきたDJセットと常連客バンドのダンスミュージック。押すな押すなの若者たちに強面シェフの出す本格料理が大人気。で一気に商売繁盛、保健所から目をつけられていた厨房の改善は成し遂げるは、税金は払い終えるは!

せっかく軌道に乗ったレストラン、兄貴に経営を任せたとたんにポーカーで不動産屋の手に落ちて、その権利譲渡書を深夜オフィスに忍び込んで盗み出し、挙げ句は警察に捕まって兄貴は刑務所に逆戻り、すべてはおじゃん!って思ったら、女性税務官の恨みを買った不動産屋が脱税?容疑で同じ刑務所に収監されて、没収されたレストランは裁判所の競売に付されて、その買い戻しに借りる金は主人公を裏切って中国人男性に走った元妻が相続した莫大な遺産からだったり、主人公をどん底に追い込んでいくベースにあるのが、ぎっくり腰で、ことあるごとに悪化する症状その治療にあたる療法士とついに結ばれる、兄貴も心奪われたウェイトレスと結ばれ、・・・・もう、どうよ、このご都合主義の連続攻撃。

だけど、だけど、そのいい加減さがちっとも苦にならない。ばからしいなんて感じない。うんざり!なんてもちろんない。ともかく面白い。ともかく楽しい。これって結局、はちゃめちゃの力じゃないだろうか。キャラクターといい、ストーリーといいい、エピソードと言い、まともなものは一つもない。そのでたらめさの波状攻撃が観客を笑いの渦に巻き込んでいくのだと思う。ここに書いた以外にもめちゃめちゃ馬鹿馬鹿しいギャグシーンが満載だ。そんなお馬鹿な展開を眺めつつ、ありえねぇぇぇってつっこみつつも、いいよいいよ、許す許す!って思わせてしまうこの監督(ファティ・アキン)の力は相当なものだと思ったら、なんと、若くして国際映画賞を総ナメにしている人だった。こういうナンセンスをもっともっと楽しむ風土が欲しいと思う。「喜劇はもっと正しく評価されるべきだ」、巨匠アン・リーの言葉がチラシのトップを飾っていた。大笑いの後の爽快感、温かな気持ちになって、幸せになる、そんな喜劇を僕も作って行きたいものだなぁぁ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする