ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

お見事!シチュエーション:『ロング・ロスト・フレンド』

2011-02-28 20:27:31 | 劇評

 さて、「西荻の会」だ。わかったぞ、会の名前の謂われ。伊藤四郎、角野卓三、佐藤B作の3人がテレビドラマで一緒になって、その打ち上げだかなんだかで、西荻で飲んだ、でそこで一緒に舞台つくろ!ってことになって、「西荻の会」?!飲み会は偉大だ。飲み会侮るべからず!

 舞台評に入る前に、驚きの報告だ。観客層だよ。年齢層が高いのは予想がついていた。平均年齢50歳台後半ってとこか。西荻の会だから、それはわかる。驚いたのは、なんと男たちが多いこと!観客の半分、いやもしかすると絶対多数派を形成していたかもしれない。こんな観客構成はプロの舞台では初めてだ。うちの劇団(菜の花座なんかだと時々ある現象だけど、れは女は出歩きにくいっていう田舎の特殊事情と僕をはじめとした中高年座員の繋がりで観客が来てくれるからだ。プロの劇団ではまずいつだってどこだって女性上位だ。劇団やホールによって年齢層が異なることはあっても、女性客が圧倒的って姿は変わらない。

 なのに、この芝居はどうだ!しかもスーツ姿の男性陣が結構いるんだよ。中には、ぞろりとそろってスーツ族が並ぶなんて列もあったりして、なんじゃこれは?スポンサーに流れた招待券使って来たのか?なんて一瞬勘ぐったりしたけど、招待だって来るってことは見たいって思うからなわけで、これはやはり特筆すべき現象なんだと思う。もちろん、僕と同年代の男性もかなりいる。奥さんに付き合わされているって感じはかなり薄れてきて、みんなそれなりにリラックスして楽しんでいた。熟年の男性2人連れ?なんてのもあったりして、これもなかったよなぁぁぁ!以前は。

 この傾向は大いに歓迎すべきことだ。ようやくにして男たちも舞台のおもしろさに目覚めてきたってことだから。やはり、いろんな階層のいろんな年齢層の、そして男も女も集まって来るようでなくちゃ、演劇の未来は暗いものね。この流れ、もっともっと大きくなって欲しい!大きくするように魅力のある舞台を作って行かなくちゃいけない。

 ってことで、ようやく本論?だ。

この達者な3人が演じるんだから、面白くって当然て思うのは、舞台を知らない人の見方だ。やっぱり芝居は台本だから!やっぱり演劇は演出だから!で、今回は作・演出が今や飛ぶ鳥どころかジェット機だって落としかねないG2なんだ。これは絶対面白い!はず。ってことがここに来た大きな理由でもある。

 そして、やっぱり、G2は期待を裏切らなかった。ヤクザが金を出し、ヤクザが経営する、ヤクザのための老人ホーム!?凄い!このアイディア!いかにも有りそうじゃない?いや、ないけどさ。喜劇の世界では、絶対有り!このシチュエーション、爆笑間違いなしだもの。この仕掛け見せられた途端に、あっやられた!って思ったよ。老人ホームはこれから必ず増えてくるテーマだし、悲喜劇が書きやすい設定なんだ。僕だって書こうかって思ってるほどだから、これはもう、間違いなくこれからの芝居作りの1トレンドなんだ。それにヤクザ様御用達だもの。

 このシチュエーションだから、やたらとはじきやマシンガンをぶっ放す痴呆老ヤクザやら元暴力団担当刑事とか、介護人を目指す若い組員(これはあまり上手に活用できてなかったけど、)とか、もうやたら爆笑もののキャラクターやエピソードが立ち上がってくるじゃないか。

 でも、この程度で満足しないのがG2!これにもう一つ巧みな笑いの仕組みを突っ込んでいた。老人施設の会長を務める元暴力団組長が、実は35年前にすり替わった偽物????って、これも凄いゾ!この設定でストーリーは一気に複雑な迷路を準備する。35年前、抜き差しならない出入りで本物の組長は敵対する組長と差し違えて死ぬのだが、その後の組の安泰を願ってそっくりさんを組長に仕立てていたっていう筋立てだ。過去を知る組員が入所するたびに会長はばれはしないかとはらばらどきどきするとか、過去の本物・偽物組長の対話シーンを伊藤四郎が一人で舞台を行きつ戻りつして演じるなんていう美味しい場面も生まれてくるわけだ。ついでに言うと、B作演じる元組員も記憶喪失で人格が変わってしまっているという設定で、記憶が戻る前の如才ない男と記憶が戻ってからの強面な男を一人二役的に演じていて、   

これも作者のサービスだね、お客さんと役者への

 さらにまた、会長とスタッフリーダーの女性との歳を超えた恋なども絡ませるという懲りようだ。これ会長の本妻(形ばかりの)との捻れた三角関係が浮かんでくるから、これもまた、各所に笑いを引き出し、最後には姉御=本妻のしんみりとした回想シーンさえ準備した。こんな仕掛けを巧みに利用しつつ、舞台は次々と新たな事実が明らかとなり、その都度観客は引き込まれ驚かされるという実に巧みな作りになっていた。そして、喜劇の王道から外れることになく、最後は見事に?調子よく?四方八方目出度し、目出度しの大だ円となる。

 さて、この芝居を見た、NHKの芸術劇場で、なんと!なんと!なんと!G2脚本・演出の『W』という作品が流れていた。フランスのヒッチコックと称されるロベール・トマの作品だそうで、これもまた素晴らしかった!!深夜に弱くなっている僕でさえ夜中の1時半過ぎまで引きづり込まれてしまったくらいだ。巧妙な設定とどんでん返しの連続でぐいぐい最後まで引っぱり込まれた

 ところで、この作品の大切な仕掛けが、なんと似た2人の替え玉作戦だったんだ。実際は別人と見せかけた男の詐欺のテクニックだったんだけど。この気弱な弟と横柄で乱暴兄を演じ分けた橋本としの演技は素晴らしかった。それと詐欺師たちに翻弄される金持ちの妻(実はインターポールのおとり捜査官)を演じた中越典子もその美しさと几帳面な演技で最後まで目が離せなかった。ハイビジョン映像で右から左から、アップでも全身像でも、どこからどう撮されても美しかった。

 おっと、ついつい中越典子ファン宣言に入り込んでしまったが、要は、あのG2でもプロット借用してんだから、僕だっていいよね、借りたってって話だ。いつか書くぞ老人ホームもの!ってことで感想は終わりだ。

コメント
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