朝1番、いや、2番の仕事は、ハウスの水やりだ。1番は当然、田んぼの水見回り、それが済んだら朝飯食って、まずはハウスへ直行。田植えからすでに10日、捕植だってとっくに済んでるのに、一角には未だモチとコシヒカリの苗がプールで沐浴中だ。
夏のような日差し、ハウスの中は完璧、真夏!1時間でも水が干上がれば、苗は、いたずらがばれてごしゃかれた小学生のように萎れ果てることだろう。プールと言えども、4年もののビニールで張ったロートル、あっ、この言葉もう死んでるか?老いぼれって意味だ、どことはなく穴が開いているらしく水漏れする。油断は禁物ってことだ。
なんだって、後生大事に苗を生き延びさせているのか?いったい何の役に立つって言うんだ。このままプールで収穫まで育てよう、なんて実験的試みをする?そんな、あり得ない。この苗たちは、小学生が田植え体験をするためにとってある。農村地帯の小学校、いくら農家が少なくなったとは言っても、子どもたちには稲の育つ様子をしっかり見知って欲しいって、農家青年たち、いや、今じゃもう農家のおじさんたちだが、世話をして学校田を作っている。そこの田植え用の苗なのだ。
田植えの段取りと指導はプロの農家にお任せ、僕は苗の供給担当を引き受けている。数ある米作り農家の中で、なんたって新米で力量不足の我が家の苗なんだ?それはねぇ、まずは無農薬ってこと。子どもたちの田んぼは当然、無農薬栽培だから、苗だって農薬使っていない健全苗が必要なんだ。それと、ポット苗だってことも大きい。植える時、1ポット1株、迷わずうえられるだろ。根を引きちぎってしまうなんて心配もない。場合によっちゃ、1人何株って割り当てることも可能だ。というような事情で、今なお、ハウスでは居残り苗たちが大きな顔をしている。
で、その奥には、ハウス栽培の野菜たち、ハウスが引き渡されるのを待ちきれずに、移植されて、ほっと一息だ。ポットのままで置いておけば、元気なくなるし、適期を逃せば生育も大きく送れるから、育苗プールを追いやるように、トマト、メロン、スイカの苗が植わっている。こいつらは、暑さにめっぽう強いが、雨はからっきし苦手の連中なんだ。特に、トマトは初期はともかく実がなり始めてきたら、水分は控えてやるのがコツだ。雨に当たるとすぐ病気がでてしまうが、ハウス内で雨を避けて作ると、ほとんど病気にならず、いつまでも元気に育つ。連作障害も心配したが、もうすでに10年以上作り続けても、目だった病害は出ていない。スイカも同じ。メロンは、ウドン粉病など出やすいが、出来る実は甘く香り高いので、今年はさらに本数を増やした。水やりも大切、手間暇省くために、散水チューブを設置、あと蛇口をひねって水を出すだけ。
小学校の田植えは明後日、どうやら今年も責任果たせそうだ。順調に育って、秋には収穫、餅つきなんかできるといいねえ。