ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

厚み増す裏方陣:『女たちの満州』秘話

2016-06-02 08:44:34 | 演劇

 『女たちの満州』の反省と裏話もそろそろ終わりなにしなければ。いつまでも過去に引きずられてたんじゃ、前に進めない。すでに次の舞台の稽古始まってることだし。

 まず、失敗から話そう。布を満州の高原に見立てた装置は完全に失敗だった。演技エリアに近すぎて、予期した効果、はるか彼方に広がる大地とはおよそほど遠いものになってしまった。もっとステージに奥行きがあり、中央舞台との間に空間があれば、距離感が生まれて遠景に見立てられたのかもしれないが、今さらないものねだりは見苦しい。素直に失敗と認めよう。照明を当てて雰囲気を変えるという狙いもほとんど効果を生まなかった。布の色、当てる色の選択、地明かりとのかぶり、原因はいろいろある。これなら、思い切ってバトン吊りして、空中を漂わせればよかった、とまずは反省。

 大切な小道具、中国の簪、なんと本番3日前でも準備できていないことが判明!なんてこったい!ここまで切羽詰まってたんじゃネットで調達も無理。となったら、菜の花座極めつけのお助け工房、東根フキ工房しかないでしょ。さっそく、画像データを送り、こんなもん作って、お願い!製作期間はわずかに2日!さすがのフキさんも、できないかもしれませんが、その時は勘弁!いや、できます。信じてますから、と製作を依頼した。

 本番前日、見事な作品を届けてくれた。ほら、信じてた通りでしょ。画像は嬉しさのあまり撮り忘れので、菜の花座FBhttps://www.facebook.com/%E5%8A%87%E5%9B%A3-%E8%8F%9C%E3%81%AE%E8%8A%B1%E5%BA%A7-1682802165316410/?fref=ts

で見て欲しい。たった2日で思い通りの作品を仕上げてくれるフキ工房、今回も大いに助けられた。

 今回、新しい試みとして、吊りものの落下というのをやってみた。満州国の旗は黄色地に黒白青赤の4色のストライプ、その5つの色は、満州族、漢族、蒙古族、朝鮮族、そして日本を示し、国の標語5族協和を表している。黄色は大地として背景の布で表現し、他の4色をバトンに吊った。日本を象徴する赤い布だけをエピローグで落とす演出を考えた。ソ連軍の侵攻で、満州国が瓦解したことを視覚的に表現したかったからだ。他の3色は縫い合わせ、赤色の布だけはすぐ隣に別に吊る。全体が1枚の旗に見えるよう、落とすときはすぐにはがれるよう、粘着度の弱いテープで張り合わせ、バトンに仕掛けを仕込んで、赤い布だけ一気に落下させた。そのシーンが際立つような照明も付け加え、本番では見事にひらめきつつ落下した。赤布の落下が日本の失墜、凋落を意味することをどれだけの観客が見抜いたかはわからない。でも、見る人が見ればわかる。そんな仕組みもあってよい。

 この仕掛けを責任もってし遂げてくれたのがTさん。旗の墜落に次ぐ雪も巧みに降らせてくれた。彼、曰く、布が上手く落ちたりするとやった!って満足できる。そう、この心意気なんだよ、裏方ってのは。自分が請け負った仕事は確実にやり遂げ、その出来栄えに一人喜ぶ、たとえ、一瞬の出来事でも、ワンシーンの登場でも、大切なものは大切なもの。全力、全神経を傾注して、取り組み、成功させる。こんな職人気質を持った裏方がまた一人スタッフに加わった。菜の花座の可能性、大きく広がっていきそうだ。淡い恋物語のもう一つ大切な小道具、水汲みの桶、これもTさんの作品だ。飼い葉おけにしてくれと注文だしたら、本物そっくりの桶を即座に仕上げてくれた。

 そして、舞台監督。わずか1度の舞台経験、それも役者で。舞監ってなに?裏方知識はほとんどゼロ、なのに、稽古を続けながら職務の内容を理解し、全体を把握して、見事本番を仕切ってくれた。能力あるって見込んだから、頼んだわけだが、ここまでやってくれるとは正直、思わなかった。次回の作品では役者として舞台に立つ、残念だ、が、仕方ない。彼には役者として大きな武器を持っているから。それはそれでお楽しみだ。

 演出の勝手気ままな要求に振り回されつつも効果音を仕上げてくれた音作り担当のKさんは、照明のオペレーターもそつなくこなしてくれた。照明を作ったカナミも役者との両立に悩みつつもやり遂げた。慣れないピンスポットと音響にはシニア男性3人。演出から何度もダメ出しを食らいながらも、なんとかクライマックスを乗り越えた。衣装班の活躍はすでに書いた。数えてみたら、今回の舞台にかかわった人数は21人になっていた。受付など外も含めるとさらに、さらにさらに。

 さて、充実の菜の花座、次なる芝居は、菜の花プラザシニア団第3回公演『クロスロード』。乞うご期待!

 

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