公演まで40日。今回は舞台装置、思い切って凝ったものにした。と、言っても菜の花座のこと、金なし、時間なし、人手なし、の、三無いまるまる地獄だから、たかが知れてるちゃぁ、知れてるんだが、これまでとは一味、いや、二味も三味も違う条件が舞い込んできた。装置専属スタッフの登場だ。装置や道具作りに意欲を燃やすメンバーが加入してきた。
前回、『女たちの満州』も彼のおかげで、旗も見事に落ちたし、雪もきれいに降った。でも、途中からの参加とあって、装置全体にはかかわってもらえなかった。今度はいよいよお手並み拝見、彼の能力を思いっきり発揮してもらおうじゃないの。
これまでだと、演技空間として成立するかを前提にしながらも、最小限の時間と労力で作れる装置、というしばりにガチガチに絡めとられていた。結果、紙を使い、布を使って誤魔化すていたらく。今度は、そんな自己規制、ぜんぜんいらないから、思った通り、狙った通りに作ってもらえる、はずだ。こいつは、嬉しい。これは幸せだ。こうなりゃ燃える。
ただ、『クロスロード』一筋縄にゃいかない設定なんだ。中心はキャバレーだが、4か所登場するキャバレーが、全部別々の場所なのだ。時代も異なる。さらに、プロローグとエピローグは公園、もっと難しいのは、タイムトラベルものなので、時間を超えた空間も必要になる。プロなら、4つのキャバレーだってきちんと作って暗転で建て替えしちまうんだろうが、そんなスタッフいるわけもないから、基本の舞台装置は固定して、そのシーンに応じで、道具その他で変化を付けようって考えた。
上手に2間間口のステージを作りその周囲をアーチで囲う。アーチには電飾を施して、公演の野外ステージにも、キャバレーのステージにも対応可能にする。中央には大きな扉、これまた電飾で華やかにキャバレーの入り口を彩る。公園の入り口としちゃぁ、ちょっとご立派すぎるけど。さらに、上部にはスクリーン、劇中歌の歌詞の字幕等を映し出す。下手奥は、時間を超えた空間、中央奥から下手に向かって斜めに、何段もの階段で3尺5寸の高さまで上がり、60度折れて、袖に消えることができる。主人公が時間案内人を相手に、人生をやり直すかどうか、思い悩む場所になる。4つのキャバレーは、4つのソファと2つのテーブルを移動させて作り出す。ソファにカバーをかけて、少しでも違った店の雰囲気を出す。
こう書いてみると、大したことないじゃないか、って思うかも知れないが、上手ステージの前は円形に仕上げたいから、半円の特殊な平台を製作。中央扉も1間半の堂々としたものを作る。下手階段にしても、平台を60度曲げて繋げるためには、三角形の平台を自作する必要がある。これに2か所の電飾装置とスクリーンの仕掛け、けっこう頭も労力も費やす仕事になるんじゃないかな。
今までの菜の花座だったら、絶対に不可能だね、こんな装置。でも、図面を見た装置担当、顔をしかめるでなく、注文を出すでなく、ごくごく平静に、できるでしょう!さすが、さすが!彼流の工夫をふんだんに盛り込んで、発案者が呻る作品を仕上げてくれること間違いなし。さっ、これで、菜の花座、また一つ見どころできたからね、これで1000円は安い!って舞台を堪能していただけますよ。