『緑豆の花』、頑張って見終わったさ40数話!HULUの無料視聴期間逃すもんかい!わずか2週間、一気にね全部。
ほぉ、こんな一大農民反乱があったのかぁ、数万人規模で郡役所に押しかけて、農民自治も達成したのか、凄いなぁ!で、それを大弾圧したのは日本軍だった、大本営は一人残らず抹殺なんてことまで指示したぁ?で、数万人も殺された?!なんて知らなかったぞ。もちろん、東学の教えてのもね。こりゃもうちょい知っておかねばならんぜ。
岩波新書と出てるんだろうな、参考になる本、ってアマゾンで探してみたんだが、これがほとんど見当たらない、ウッソー!日韓併合とか朝鮮李朝の歴史とかはあっても、東学党そのものずばりはわずかに2種類程度。ええーっ?なんでなの??
まっ、いい。取りあえず、偏りなさそうで入手しやすい、ってつまり安いってこと、この『東学農民戦争と日本』中塚明・井上勝生・朴孟洙著、高文研出版を読むことにした。
わずか200ページ弱の本だけど、いやぁ、中身めちゃめちゃ濃かったぜ。東学党の首謀者の頭蓋骨が北海道大学の研究室で見つかる、ってところから始まるんだ。えっ、なんで?どうして、そんなところに頭蓋骨が?
背景の日韓共同研究、遺骨の返還を通して、東学農民戦争、韓国では戦争ではなく革命と呼ぶ、の経緯が明らかにされて行くって構成だ。
東学というのは、1860年、崔済愚(チェジウ)って下っ端貧乏支配層(両班)?が広めた思想で、➀侍天主、②輔国安民、③後天開闢、④有無相資の四つの主張を核にしている。軽く言い換えれば、神は自分の中にいるからすべての人間は平等だ。悪徳政治やっつけてみんな良い暮らししようぜ。きっと社会は良くなるし、その運動広めるにゃ金持ちは貧乏人を助けにゃいかん、ってところかな。悪くないぜ、世直しの思想。
この思想を受けて、悪徳役人の支配に苦しんでいた朝鮮南部全羅道の農民たちが武装蜂起して、郡役所を襲い、一定の自治を獲得した。
この時期はちょうど日本と清国が朝鮮を自分たちの支配下に置きたいと狙っていた時で、この反乱を待ってましたとばかり口実にして出兵、ついには日清戦争が引き起こされる。中でも、日本の鎮圧行動は常軌を逸してた。いち早く王宮を占拠し、皇帝を人質に取ってしまうんだ、やれやれなんて無謀な、居直り強盗じゃないか。
怒った農民軍は目標を抗日に切り替えて、そこから日本軍および寝返った朝廷軍との戦いが続いて行くことになる。
ただなぁ、竹槍と火縄銃の農民軍では最新鋭の大砲、機関砲と元込めライフル銃を装備した日本軍に敵うわけもないよ。各地で手ひどい負け戦を強いられ、ついには半島の南端に追い込められて皆殺しにされる。その犠牲者、数万人!この死者数は日清戦争の当事国のどちらも上回る多数だった。
と、いったところが簡単すぎる概要だが、『緑豆の花』はかなりこの史実を忠実にたどっているから、HULU見られる人は必見だな。この本読んで幾つかの疑問にも答えがもらえた。
一つは、日本軍の戦死者がわずか1人だったってことだ。圧倒的銃火器の差もあるが、東学軍の行動原則に、人をむやみに殺さない、降伏する者は温かく迎えるなどの戦いの指針を持っていたことがありそうだ。なんとおおらかなことだぜ。それと農民軍としての正攻法、多勢で押し寄せ堂々と押し破る、って意識があったのだろう、きっと。その後、この反省に立って、義兵運動ではゲリラ戦に戦術を転換して行く。ここを描いているのが、『ミスターサンシャイン』で、主人公二人はライフルばんばん撃ちまくってる、まっ、フィクションだけど。抵抗運動の熾烈化、武力化ってところまではこの本には書かれていないけど、多分、そうだ。
疑問のもう一つ。これだけの戦いが日本でほとんど知られていないのは何故かってこと。これは日本人の朝鮮理解にとってかなり重要な問題を提起するな。日本軍の犠牲が少なかったことと、すぐに日清戦争に話題をすり替えたっていう面もあるだろが、当時の政府が意図的に事変そのものを抹消したってことが何より大きい。たった一人の戦死者を東学軍との戦いではなく、日清戦争での戦死と改竄して靖国神社に奉祀したことが何よりの証拠だ。戦いの残党を残らず抹殺することを指示したことも、農民一揆との戦いなんて!大したもんじゃない、と矮小化し、戦いの記憶事態を消し去ろうとしたのだろう。
本では、ロシアやイギリスなど他の帝国主義国の干渉を引き起こさぬよう、極力南部に閉じ込めて、目立たぬように計ったのが原因と書いてあったんだが、そればかりじゃないように感じる。
植民地支配のための弁明が欲しかったからだろう。朝鮮は未開の地域、日本が支配してやらねば、って構図を作りたかったに違いない。反抗などあり得ない、まして組織的な抗日行動などなかった、ってことにしたかったんじゃないの。
人を人とも思わぬ乱暴な思考と行動だが、そんな、朝鮮?屁とも思わぬ!的な考えに囚われていたから、その後の宮廷に押し入っての閔氏暗殺とか日韓併合なんて非道も押し通せたんだ。東学首魁の頭蓋骨を記念に持ち帰る、なんて信じられない行いも、この朝鮮=野蛮の意識に支えられていたことだろう。ほら、アイヌの人たちを檻に入れて見世物にした、あの感覚さ。
東学農民戦争の実態をしっかり見つめること、他にも多くの抗日抵抗運動が勃発していたこと、その背景には、すぐれた文化を伝承していた朝鮮の人々の暮らしがあったことを知ることが何より大切なんだぜ。植民地朝鮮の歴史は空白などではないのだ、ってことを。
今につながる嫌韓の差別意識はまさに、当時の朝鮮そのものの抹消しようとした卑劣で歪んだ策動の申し子なんだぜ。
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