不思議のメダイの使徒職についての説教
ドモルネ神父様 2022年5月29日 東京
はじめに
私たち皆のまわりには、家族、恩人、友人、あるいは、何らかの理由で私たちに思いやりを見せてくれる人で、私たちの主イエズス・キリストを信じていない人達がいます。私たちは、私たちの主を愛していますから、私たちの主がその人達に敬われていないことに、苦しみを感じます。私たちは、またその人達を愛していますから、彼らの永遠の救いについて心配します。私たちには、何ができるのでしょうか?
聖母に奉献された5月も終わりを迎え、また聖霊降臨が近づいていますから、今日は、霊魂を回心させるための特別な使徒職、つまり、不思議のメダイの使徒職についてお話ししようと思います。
1.第一の基本的なポイント:回心の恩寵という無償の賜物
理解すべき第一の基本的なポイントは、信仰は、超自然的な賜物(たまもの)だということです。イエズス・キリストを信じること、そして使徒信経にあるすべてのことを信じることは、天主からの賜物なのです。世界で最も知的で、最高の神学書を研究し、最も特別な奇跡を目撃した人であっても、天主からの特別な無償(むしょう)の御助けがなければ、イエズス・キリストの神性と教えを信じることはできません。なぜそうなのでしょうか? なぜなら、それらは、人間の知性が、自然的に把握することのできない、超自然的な現実であるからです。福音の一節を思い出してください。「主は使徒たちに、『人々は、人の子を誰だと言っているのか』と聞かれた。使徒たちは、『ある人は洗者ヨハネと言い、ある人はエリア、またある人はエレミア、あるいは預言者の一人だと言っています』」。言い換えれば、これらの人々は、イエズスを、ただの人間だと考えていたのです。「イエズスが、『ところで、あなたたちは、私を誰だと思うのか』と言われると、シモン・ペトロが、『あなたはキリスト、生ける天主の御子です』と答えた」。こう言って、聖ペトロは、イエズスの神性を宣言したのです。「イエズスは答えて、『シモン・バルヨナ、あなたは幸いな人だ。その啓示は血肉(けつにく)からのものではなく、天にまします私の父から出たものである』と言われた」(マテオ16章13-17節)。言い換えれば、聖ペトロが私たちの主の神性を信じることができたのは、天主が、そのための特別な恩寵を彼にお与えになったからなのです。
私たちが人を信仰に導くのは、見事な演説の力によるのでも、私たちの人間的な資質で人を引きつけることによるのでも、ありません。信仰は、天主からの賜物です。人を回心させるには、この賜物を得なければなりません。では、どうすればそれができるのでしょうか? それは、痛悔と祈りによってです。これは、童貞聖マリアがご出現のたびに、私たちに語っておられることです。痛悔は、その人の回心を妨げる罪を償うために、必要なものです。祈りは、信仰の賜物を得るために必要なものです。
2.第二の基本的なポイント:童貞聖マリアの取りなし
理解すべき第二の基本的なポイントは、童貞聖マリアの果たされる中心的な役割です。イエズスが悪魔を打ち負かされるのは、マリアを通してです。「私は、おまえと女との間に、おまえのすえと女のすえとの間に、敵対を置く。女は、おまえの頭を踏みくだき、おまえは、女のかかとを狙うであろう」(創世記3章15節)。イエズスがすべての人を救って天主の子としてくださるのは、マリアを通してです。「イエズスは母に、『婦人よ、これがあなたの子だ』と言われ、また、弟子には、『これがあなたの母だ』と言われた」(ヨハネ19章26-27節)。
不思議のメダイは、この聖母の役割をよく表しています。不思議のメダイをお持ちになっている方は、ぜひそれをご覧ください。メダイの表側では、聖母が地球の上に立っておられます。これは、聖母が天と地の元后(げんこう)であり、したがって、すべての人の元后であることを意味します。聖母は、地球の上にいる蛇を、踏みくだいておられます。これは、イエズスが、聖母を通して、地球上の悪魔とその手先たちを打ち負かされることを意味します。マリアがおいでになられるところならどこでも、サタンは踏みくだかれるのです。聖母の両手から、光線が出ています。これは、マリアが、ご自分に取りなしを願う者のために取りなしてくださる、すべての恩寵を意味します。「ああ原罪なくして宿り給いし聖マリア、御身に依(よ)り頼み奉(たてまつ)る我らのために祈り給え」と刻まれた文字は、私たちが必要とする恩寵を得るために唱えるべき、単純ながら効果的な祈りを示しています。地球の上に書かれた「1830」という数字は、聖母がこのメダイを私たちにお与えになるためにご出現になったのが、1830年であったことを示しています。
メダイの裏面では、「M」の文字と十字架が、からみ合っています。「M」の文字は「マリア」を表し、十字架は、イエズスと、その贖(あがな)いのみわざを表します。このふたつがからみ合っていることは、贖いのみわざにおけるイエズスとマリアの深い一致を意味します。十字架は、「M」の文字の上にあります。これは、イエズスが、マリアを迎える霊魂たちに救いをもたらされること、また、マリアが、イエズスのご来臨を準備されることを意味します。12個の星は12人の使徒、したがって、12人の使徒の上に立てられたカトリック教会を意味します。「M」の文字と十字架は、12個の星の中心にあります。これは、キリストの教会はカトリック教会であり、イエズスとマリアは、カトリック教会を通して人々を救われることを意味します。二つの悲しみに満ちた聖心(みこころ)は、私たちが永遠の幸福を得る可能性を与えてくださるために、大いに苦しまれたイエズスとマリアの愛を意味します。
3.不思議のメダイの使徒職
では、質問です。私たちは、実際に、不思議のメダイの使徒職を、どのようにして実行することができるのでしょうか? それは、すでに述べた二つの基本的なポイントを当てはめて、次の二つの段階を踏むことです。
第一の段階は、不思議のメダイを人々に配ることによって、その人たちに、童貞聖マリアを紹介することです。メダイは、司祭によって祝福されたものであれば、なおよいでしょう。洗礼を受けているかどうかに関係なく、善意を持つと思われる人々には、だれにでも、メダイを差し上げるのです。メダイの意味を簡単に説明して、「このメダイを身につける人、特に首にかける人は、大きな御恵みを受けるでしょう」という聖母の約束を伝えます。実際、このメダイを首にかけることは、聖母に対する信頼を、公に示すことです。そのような信頼に対して、聖母は特別に報いてくださるのです。このメダイを首にかけたくない人には、財布やハンドバッグに入れるか、家に置いておくように勧めます。
相手の人がこのメダイをもらうことを受け入れるならば、このメダイの祈りである、「ああ原罪なくして宿り給いし聖マリア、御身に依り頼み奉る我らのために祈り給え」を、時々唱えるように勧めます。この祈りは、メダイと一緒に渡すべき小さな説明のしおりに載っています。最後に、相手の人が家族や友人に配る、追加のメダイを渡すことも提案します。多くの場合、相手の人は快く引き受けてくれ、メダイを広めるのを助けてくれます。
第二の段階は、祈りと痛悔を通して、回心の恩寵を得ることです。祈りとは、特に、このメダイを持つすべての人々の代わりに、このメダイの祈りをたびたび唱えることです。また、私たちは、ロザリオの喜びの第二玄義を、特にその人たちの意向のために、祈ることもできます。それから、聖母が、ご訪問の日に、聖エリザベトのところへイエズスを連れて行かれたように、彼らのところへもイエズスを連れて行ってくださるように、聖母に祈ります。痛悔とは、このメダイを持つ人々の永遠の救いのために、ご受難のときのイエズスとマリアの御苦しみと一致して、あらゆる犠牲、日々の苦しみや悲しみをお捧げすることです。
結論
親愛なる信者の皆さん、このような使徒職を行うという考えについて、皆さんは、いささかの躊躇を感じるかもしれません。最初の何回かは、少しまごつく感じがするかもしれません。しかし、この躊躇の感覚は、すぐに、このメダイを配り、人々に聖母を知ってもらい、聖母を愛してもらうための、聖なる大胆さへと変わることでしょう。事実、皆さん自身のイエズスとマリアへの愛と信頼と信心が成長するのですから、この使徒職で最初に恩恵を受けるのは皆さん自身なのです。