新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ヒッチコック 「間違えられた男」

2021年06月26日 | 映画
平日に毎日放送されるBSシネマは吹き替えでなく字幕スーパー。文字と映像を同時に見なければならず、その程よい緊張感と白黒画面の無駄のない美しさが好きです。言語は分からないけど人物と声が一体化していて不自然さがないのがいいですねぇ。自粛期間中は随分救われました。

「間違えられた男」はヒッチコック監督が実際に起きた事件を映画化したもので、下記はいつもと違う冒頭のシーンです。

暗闇に浮かび上がった人物が語ります。『私はアルフレッド・ヒッチコックです。今まで沢山のサスペンス映画をお送りしてきた。だが今日は少し違う。異は事実にあり。これは実際にあった物語である。私が今までに作ったどの恐怖映画より奇なることがあるのだ。』

主人公は高級クラブの楽団員で慎ましく暮らす誠実な男性マニー(へンリー・フォンダ)。
ある日、保険証書を担保に、妻の歯科治療代400ドルを借りに行ったことから事件が始まります。マニーが複数の店で強盗を働いた男として逮捕されるのです。その複数の店の店員が皆マニーを犯人だと証言するのです。
全く身に覚えがないマニーですが、出された複数の証拠がどんどん絶望の淵に向かわせます。暗闇へのスパイラル・・・。
時は1953年。歯4本の治療費が300ドル。楽団員マニーの週給が85ドル。(アメリカの医療は高いと聞いていましたが本当なんですねぇ)
妻は自分のせいだと絶望と恐怖に陥り、張り詰めた心に精神を病み入院して隔離状態になりました。
ヒッチコックの映画は最後はハッピーに終わる・・・、そんな予想が心を支えますがハラハラのし通しです。

犯罪者に間違えられた男の悲劇。まかり間違えば自分の身にも起こりうるかも・・・。まさに恐怖の映画でした。
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映画「80日間世界一周」

2021年01月08日 | 映画
中学生か高校生の頃見た「80日間世界一周」は、その後見た「ウェスト・サイド・ストーリー」よりインパクトが強く、心にぽっと光を灯してくれました。当時の映画には夢と温もりがありました。
ジュール・ヴェルヌ原作の作品は「地底探検」もそうですが、未来への夢と希望を与えてくれるわくわくする映画で、もう一度見たいと強く願っていました。何度かテレビでも放送されたようですが、何十年ぶりにやっと実現しました。いつものNHKBSシネマです。

日本では明治維新を成し遂げたその頃、英国紳士のクラブで「80日間で世界を一周してここに戻る」、と全資産を賭けたフォッグは万事に器用な使用人を連れて出発しますが、スタートから土砂崩れで鉄道が使えず急遽気球に変えました。
資産の中から2万ポンド、旅の資金は心配は無し。気をつけるのは限定80日間の数字だけ。先ずは気球を買いました。

手引き書片手に1万メートルまで上昇、アルプスだって楽々越えます。カメラワークが素晴らしく、フランスの森や河、お城、なだらかに広がる畑、夕日など、観光ガイドの様相です。まだ世界が狭かった私にはそこはかとなく夢が広がりました。
今なら撮影技術を総動員して何でもないことかも知れませんが、製作されたのは1956年です。
風に流されてスペインへ。無駄に時間を使ったので、エピソード満載で船を手に入れスエズを越えてインドへ。

インドの横断では鉄道が途切れて象に乗ることも。ここで殉死させられる姫君を助け、道連れがひとり増えます。
ハプニング続きで主人と使用人は別々の船で日本に到着。横浜で再会します。

サンフランシスコに到着。まだ英国優位の時代ですが、新天地には新しいエネルギーが弾けています。
有名俳優が各所で部分的に登場。フランクシ・ナトラが酒場でピアノを弾いていました。今見たら若い!

西から東へ大陸横断鉄道に乗ります。途中でのハプニングも見もの。原住民との協和と対立が続きます。
使用人が命の危機に!(映画ではいつも先住民の行動は否定的ですが・・・)

騎兵隊の力を借りて危機から脱出したものの、ニューヨークへの汽車は既に発車して取り残されます。気になるのは時間のみ。が、捨て置かれた荷馬車に目を付け改造します。どこまでもプラス志向!
帆を張り風を受けて線路の上を走行、途中立ち往生している汽車を横目に、スイスイと追い越してニューヨークに到着。

イギリスへの客船は既に出航していて、もう予定日到着はアウト。そこで大金をはたいて小さな商船の行き先をリバプールへ変更させます。燃料が途中で切れますが、知恵の結集で乗り越え、めでたくリバプールに着きます。が、ここで銀行強盗に間違えられ留置場で足留め。完全に送れてしまいました。敗北。全財産を失うことに・・・。
しかし翌日の新聞を見て日付変更線を越したことに気づきました。丸1日稼いでいたのです。やっと約束のクラブに着いたときは約束時間の数秒前でした。
時計は午後8時45分を指しています。めでたし、めでたし。
エンドロールが半世紀以上も前のものとは思えない新鮮さ。
この時は知らなかったけどアカデミー賞を総なめした作品だったのです。この映画のテーマ曲はよく耳にする名曲です。
♪♪♪***♪♪♪***♪♪♪***
この後に、1都3県に来月7日まで緊急事態宣言が発令されました。ひと月で減少傾向に向かうのか、他県は必要ないのか・・・。住民には「午後8時以降の不要不急の外出の自粛」を求めていますが、これでいいのか・・・。
前回の自粛宣言よりかなり緩いけれど効果があるか・・・。メルケルさんのメッセージの強い意思は心に届きました!
テレビ画面の菅首相の上部に流れるテロップには大雪の警報が!苦渋の日本、今大変な時です。

民主主義の国アメリカで議事堂占拠。ショックでした。この後共和党議員の苦悩の表情に少し民主主義が戻った感じがしました。
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映画「ショーシャンクの空に」を再び

2020年11月05日 | 映画

(写真はネットからお借りしました)
25年前に見た感動の映画が、今度はリビングのBSシネマで再び見ることができました。BSシネマは字幕スーパーなので、映画館で見るのと同じ感覚です。
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時は1947年。銀行の副頭取、若きアンディは愛していた妻と彼女の不倫相手を惨殺した疑いで逮捕され、無実の証明ができないまま終身刑でショーシャンクの刑務所に収監されます。
刑務所内は服役囚への暴力、囚人同士の暴行が日常茶飯事。所員も罪を犯したものたちへの暴力·虐待が当然視されていました。
そんな中でやはり終身刑を受けたレッドと信頼関係を結んで行きます。レッドは、仮釈放の見込みがたたずむしろ希望を失っていました。しかし日用品をうまく調達してくる「調達屋」の技を持っていました。アンディが頼んだ何気ないポスターや写真の調達は伏線で、これが後に大きな転機をもたらすのです。

絶対的な権力を持つノートン所長は、服役者を刑務所外で労働させるうちに、収賄で表面にでない金を得てアンディに管理させます。アンディは銀行マンの知識を駆使して、架空の人物を作り出して多額の不正蓄財を見事に隠し、ノートン所長からも一目置かれます。

アンディは図書室の整備や若者が高卒の資格を取るのを成功させました。信仰も品行も優秀なアンディの再審請求もノートン所長によって阻止。アンディはノートン所長の不正をあまりにも知り過ぎていて、釈放すれば自分に身の危険が及びます。逆に2ヶ月間も過酷な懲罰房に入れてアンディの気力を削ぎ服従させました。その後はまたノートンの会計係を淡々とこなします。

しかしアンディは入所して間もなく、小さな石細工を彫るためにと手のひらに乗るほどの小さなハンマーをレッドから手に入れていました。その頃からコツコツと壁をくりぬいていてのです。数十年もかけて。
アンディに調達して貰った人気女優のポスターが何枚か世代交代するほど時は過ぎていきました。そのポスターの後ろにはようやく完成した脱出口が隠されていたのです。
ある嵐の晩ついに、掘り抜いた小さな壁の穴をくぐり抜け、泥々した下水を通ってショーシャンクの塀の外に出ることができました。その壁穴はレッドすら気づいていませんでした。

自由になったアンディは、刑務所で自らが手を貸したノートンの裏金預金の銀行口座から大金を引き出し、悠々とメキシコに逃亡しました。

アンディは刑務所を脱出する前にレッドに、「もしきみが釈放されたら行って欲しい場所がある」と言い残していました。
収監30年後にやっと仮釈放されたレッドは、社会復帰してもやはり住みにくさに希望を失っていましたが、ふとアンディとの約束を思い出してその約束の場所に行きます。
そこにはアンディの逃亡先のメキシコの場所とお金が封筒に入れて埋められていました。長い長い年月をかけた、最後まで希望を失わなかったアンディの気の遠くなるような緻密な計画でした。

ラストは、美しい浜辺で古船を修理していたアンディとレッドが再会を果たす感動の場面で締め括られます。

「ショーシャンクの空に」も「グリーンマイル」も「スタンド・バイ・ミー」もスティーブン・キングの小説からの映画です。どれも深く心に残っています。
「ショーシャンク・・・」のレッド役のモーガン・フリーマン、「グリーンマイル」のトム・ハンクスの演技が素晴らしいです。

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BSシネマより「スターリンの葬送狂騒曲」

2020年11月02日 | 映画
11月2日BSシネマより。タイトルのスターリンと聞いて暗い冷たい映画と思いきや、ブラックコメディの肩の凝らない重たくない映画でした。


冒頭、モーツァルトのピアノ協奏曲23番の美しく物悲しい第2楽章が響くコンサートホールが映し出されます。
そこで録音されたレコードを、スターリンは自室で聴いているうちに発作を起こし意識不明の瀕死状態に陥ります。連絡を受け集まった側近はパニック状態に。といっても悲しみにくれる者はいません。失禁したスターリンを運ぶ姿は政治のトップにある人でなく、そこら辺のおじさんです。
それぞれが自分が殺したと疑われないようにすぐには医者を呼ぼうとしません。尤も優秀な医者は既に粛清されており、かき集められた医者は冴えない医者ばかりです。
側近6人が責任が及ぶことを恐れて右往左往するさまがコミカルに映しだされ、それが表情の真面目さと噛み合わないところが可笑し味を誘います。

フルシチョフを葬儀委員長にして準備が始まりますが、亡くなった当時に居合わせた医者、使用人などを逮捕し粛清するところは見ていても背筋が凍ります。「粛清」は問答無用なんですね。

スターリンの後継者を狙って権謀術数が幾重にも渦巻き、裏では陰湿な取引がなされ、秘密警察トップのベリヤとフルシチョフの見えない戦いが起こっています。
フルシチョフはベリヤの排除に軍の元帥に協力を求め、幹部会の場で元帥はベリヤを銃殺、遺体に油をかけて焼却するという徹底したものでした。
サラサラになった黒い灰を無造作に取り扱うところを見て、体制の中にいる人の心は無機質なのかなとそら恐ろしさを覚えました。
その後フルシチョフは首相を他の人にやらせ、自分は第一書記として実権を握っていきます。

裏切っても、殺してでも、自分の勝利だけを願う・・・、品性も道徳心もなく、これは今にも通じるところがあり、痛烈な批判を込めているのでしょう。

2017年、面白可笑しい政治映画として欧米では大ヒットしたのに、ロシアでは上映禁止になったとか。

ロシアに行ったときに、日本語学科で学ぶ女学生から話しかけられました。留学の経験はないのに見事な日本語です。日系の会社で働きたいと夢を語っていました。
「ロシア」になって生まれた若者は、「スターリンは悪い人です」と切って捨てた言葉がとても印象的でした。
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BSシネマ「エアフォース・ワン」

2020年10月08日 | 映画
涼しくなると今すべき仕事が次々に出てきて、10月も1/3が過ぎていました。
だから撮りためた録画を見るのも夜遅く日をまたいでしまいます。
そんな昨夜の「エアフォース・ワン」は面白かった!
米・露が協力して、数10万人を虐殺したカザフスタンの独裁者を逮捕したあとロシアで晩餐会が催されます。その席で米大統領はスピーチをします。『経済制裁や外交という言葉の対立なき世界ではなく、正義ある世界が真の平和だ。 暴虐と恐怖を政治的武器に使う者たちと我々は交渉しない。容認しない』と。
しかしその数時間後、国につく大統領専用機エアフォース・ワンに、ロシアのTVクルーになりすました6人のテロリスト集団が乗り込みました。
テロリストは、大統領の家族を含めた搭乗者を人質にして、アメリカ政府に独裁者の解放を要求します。
特殊なカプセルで機外へ脱出したと思われていた大統領は機内の貨物室に残っており、思考を回らした息詰まる方法で、一人でテロリストに挑むというはらはらドキドキのストーリーでした。
大統領の行く先には核のボタンがついて回ります。これが冷酷なテロリストに奪われたら・・・。現実はこの危機と隣合わせに居るからこそ身につまされる展開に恐怖を覚えました。
ハリソン・フォード、大統領の風格がバッチリでした。氷のように冷酷なテロリスト役ゲイリー・オールドマンがゾッとするほど迫真の演技でした。

残り物で「創作」料理です。前日のグラタンをトマトに入れたもの、サバ缶とトマトの煮込みにエビのつみれと野菜を足して「元の姿」を消しました。


明日は検診だからアルコールは控えました。正当なデータを出すためには飲んだ方がいいのかも・・・。でも数字は少しでもいい方が・・・。健気な我慢です。
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NHK BSシネマの楽しみ

2020年07月19日 | 映画
NHKBSプレミアムで月曜~金曜13時から始まる名画が楽しみです。録画しておけば好きなときに、一時ストップしながら見られるのでストレスフリー。幸いに夫と興味の傾向が同じ方向だから安心して観られます。

7月のシネマから。
●「クオ・バディス」は皇帝ネロの圧政とキリスト教弾圧、壮大なスケールのスペクタクル史劇は3時間も。CG技術もない1951年にはエキストラ出演、となると今の映画ではもう見られない場面です。

●「シェナンドー河」は南北戦争時の農場を営む家族の結束の物語。

●「眼下の敵」は第二次大戦時の米駆逐艦とドイツUボートの船長の頭脳的な駆け引きに緊張しっぱなし。実体験を元にしています。音楽はアカデミー賞にもノミネートされた黛敏郎。

●「天地創造」はアダムとイブ、カインとアベル、ノアの方舟、ソドムとゴモラの旧約聖書の物語です。これだけ聞いたら食傷してしまいそうですが。
「天地創造」は私にはハードルの高いワードですが、この感覚が変わったのが、阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』という本にめぐりあってからです。

学生時代には読むべき本として、信者のいかんを問わず必ず「聖書」が含まれていました。何度も手にしましたが、数ページも行かないうちにギブアップ。そんな私に阿刀田高さんの本は画期的でした。
固い話を、いかにして読者の心をリラックスさせてから進めようかと工夫されています。
「アイヤー、ヨッ」の掛け声で始まるのはお囃子でなく、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの主要人物の順番です。
この4人の前にアダムとイブがいて、この4人のあとにモーゼが、やがてダビデとソロモンが登場し、これが旧約聖書の主な部分です。この流れを掴んで読めばかなり楽です。
映画を思い出しながらもう一度読み返しています。

そうそう、カバー装幀とカットは和田誠さん。少し前に亡くなられた、平野レミさんのだんな様です。



この 「知っていますか」シリーズには、『ギリシャ神話を知っていますか』『新約聖書を知っていますか』『コーランを知っていますか』があり、大まかな流れを掴むのにとてもわかり易いです。
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BSプレミアム 『翼よ!あれが巴里の灯だ』

2020年06月05日 | 映画
60数年前の確か中一の頃、大学生だった姉が話してくれた映画が『翼よ!あれが巴里の灯だ』です。
洒落た長いタイトルと主人公リンドバーグという素敵な名前をずっと記憶していました。当時中学校では映画館への出入りは禁止で、早く大学生になりたいと憧れていた頃です。

そして10年前にスミソニアン航空宇宙博物館で、リンドバーグ単独無着陸大西洋横断に成功した本物の「Spirit of St.Louis」を見てきました。映画を観たあとだったらもっと感慨が違っていたでしょう。(ライト兄弟の飛行機も、日本のゼロ戦も月面探索機もありました)
     
(写真はネットからお借りしました。展示はリンドバーグが乗った本物でした)

4日BSプレミアムで、その『翼よ!あれが巴里の灯だ』をやっと観ることができました。長い映画は2回に分けてみますが、今回は一気に!

映画は、飛行計画の資金集め、設計、製作から始まります。燃料を極力多く搭載するために前面に窓はなく、無線機も省き、限られた装備で極限に挑みます。離陸前夜の悪天候で息詰まる待ち時間と困難な離陸、レーダーもない時期の手に汗握る飛行は経験と知識と勘の操作です。
睡魔との戦いに助けられるハエの逸話。出発間際に見物人から提供してもらい計量器の壁にガムで張りつけた化粧用のより軽量の手鏡、それが日光を反射して、居眠りしていたリンドバーグの目を覚まさせ危機を回避するというはらはらドキドキの手に汗握る場面も出てきます。 
飛行中には勇敢な、果敢な飛行士としてのエピソードが思い出場面として挟まれ、飛行士として十分な知識と技量を積んできたことに安心させられます。

鋼鉄と木と布で製作されたぺらぺらした感じの「スピリット・オブ・セントルイス号」は33時間29分の単独無着陸大西洋横断を果たし、暗闇と灯りの夜のパリに着陸しました。
成功者にはオルティーグ賞と賞金25000ドルの賞金が提供されることで、世界の複数の飛行士が挑戦したのですが、獲得したのはリンドバーグでした。パリの飛行場には20万人の人が押しかけて祝いました。

リンドバーグから93年経った今、世界の飛行場にはコロナ禍で飛べなくなった精鋭の飛行機がずらーりと並んでいます。
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『人生の特等席』クリント・イーストウッド主演

2020年05月05日 | 映画
数日前の雨で、ネモフィラもクリムゾンクローバーも倒れて、目も当てられないほど無惨な庭になりました。

晴れた今日、矢車菊が凛と咲きました。

チドリグサも高貴な色を誇っています。お気に入りの花で、毎年あちこちで芽を出して咲き誇ります。ヒエンソウとも呼ばれこちらの呼び方がすっきりしているかな。

****◇****◇***
またひと月、自粛が延びました。6日の解除は期待してはいなかったけど。あとひと月粛々と守るべきことを実行します。
自粛の午後は録画を見ることにしています。

★ 4月29日BSプレミアム『人生の特等席』クリント・イーストウッド主演★
大リーグの伝説的なスカウトマン・ガスは眼科医から重篤な病を告げられ検査を勧められています。生来頑固な彼は、弁護士として活躍中の娘ミッキーの助言もはね除けます。
幼少時に母親をなくして以来父親と離れて寮生活をしていた彼女は、父娘の閉ざされた関係に疑問を持ち苦しんでいました。
父と地方の球場で久々に対峙したことにより、秘められた過去と真実が明らかになるという、心にじわっとしみるいい作品でした。
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映画『蜜蜂と遠雷』(恩田陸原作)

2019年10月04日 | 映画
あさイチで紹介されたおすすめの映画『蜜蜂と遠雷』が今日封切ということです。何とか12時の上映時間に間に合いそう。「よし行こう」と決めたら家事がはかどること、はかどること!
原作は直木賞・本屋大賞W賞の恩田陸さん。『映像化不可能』と言われた小説の映画化でした。

チケット販売機を操作しながら「シニア料金」はどの段階で出てくるの?このままだと普通料金に・・・。最後のほうでやっとシニア選択画面が出てきて「1200円」。差額は700円だったからほっと安心。それにしても若い人の映画料金は高いんですね~。申し訳ない。

廊下の照明でよく撮れなかったから、下はネットでお借りしましたものです。

ストーリーは、近年評価の高くなった「芳ケ江国際ピアノコンクール」に挑む4人の若者の情熱と魂をかけた青春群像です。

7年前に母親を亡くし、その後消息が途絶えていた元神童・亜夜が、幼いころのトラウマにおびえながらも復活をかけて挑みます。
子供の頃、母親は自然界の音を見つけそれをピアノで表すように導き、それがいつの間にか二人の楽しい連弾で雨だれの曲に変わっていく場面がありました。音の楽しさを子供に発見させる、音楽の楽しさを五感を通して子供に伝える、この展開がとても印象的でした。

妻子をもつ社会人の明石は、年齢制限28歳で最後の挑戦です。ピアノを専業にする者たちが持ち得ない生活者の音楽を自分は持っているという強い思いで不屈の努力をしています。

ジュリアードで学んだ自他ともに認める貴公子・マサル。幼ななじみで天才少女・亜夜の後姿を追いかけてピアノを続けていました。

伝説的な音楽家ホフマンの推薦状を持って送り込まれた風間塵。異端児としてそのピアノは自由奔放。

亜夜を「お姉さん」と慕う塵が、古びた建物の窓越しの月を見てピアノを弾き始めると、亜夜といつの間にか連弾になりました。
ドビュッシー「月の光」が静かに広がり、途中から陽気なジャズ風に、最後はベートーベンの「月光」にと変わっていき、ピアノの心が完全に一致。弾くことの楽しさここに極まれりと至福の経験をしました。強く印象に残る場面で、この映画のテーマの一つかなと思いました。

お互いにライバルでありながら、それゆえにお互いの心情を理解し、リスペクトし、励まし合う、その純粋な友情にも強いメッセージを感じました。

松岡茉優(亜夜)と松坂桃李(明石)の演技が素晴らしかった!
プロコイエフの難解な曲に、亜夜のショートボブのさらさらヘアーが激しく揺れ、映画ではへアスタイルも曲の一部でお見事!ポニテールもロングもここでは不似合いです。
二人とも若くして、いつの間にかベテラン俳優になっていました。ブルゾンちえみさんの、明石の友人としてのジャーナリスト役も、力み過ぎずいい役どころでした。
全体にずっとクラシックが流れ、音楽と演技とストーリーと美しい映像でとても満足度の高い映画でした。

今年はテレビドラマ『ピアノの森』そしてこの『蜜蜂と遠雷』に、映像と音楽とストーリーで贅沢に楽しめたのが心に残りました。

自分の自由行動のあとは、夕食も一応作りました。生協の冷凍が役に立ちました。




★★★追記
10月4日放送 NHK Eテレ 「ららら♪クラシック」は「蜜蜂と遠雷」の音楽についてでした。俳優とピアニスト、作曲家の努力が垣間見えて面白かったです。再放送のチャンスもあります。

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映画を大学キャンパスで

2019年06月07日 | 映画
今年も近くの大学の春の講座「影像にみるヨーロッパ文化」で、ドイツ語学科とフランス語学科の映画が始まりました。毎回二人で参加しています。

映画の時代背景、原作、監督、キャストの解説があり、上映後に感想を述べ合います。ちょっとアカデミックな香りが人気で、夜間にもかかわらず出席者が多いのです。それに広大なキャンパスを若者と一緒に闊歩する痛快さも加わります。
夕食はいつも学食です。

先月の独語学科の『ブルーム・オブ・イェスタディ』。現代のドイツを扱いながらもやっぱりナチスが絡みます。
収容所で犠牲者となったユダヤ人の孫娘とナチスの指導者を祖父に持つ男性、つまりナチス時代の孫たちの心の葛藤と苦悩を描いたものです。
ドイツには世代を越えて罪と罰の意識が受け継がれ、それがしっかり根付いているのをいつも感じます。

以前のテレビ番組で、ドイツの高校生や韓国の若者たちが、日本の社会科教育、特に歴史をきちんと学んでいないと手厳しく批判していました。そうなんですよね。

今回の映画はドイツ製作でなく、ホロコーストを扱いながらも米英合作の『否定と肯定』です。これは実話の映画化です。

ユダヤ人歴史学者リップシュタットが「ホロコーストは存在しなかった」と主張する歴史家アーヴィングを批判したことで、名誉毀損で提訴され、英国の法廷で半年かけて闘うことになりました。
イギリスの司法制度は提訴された側に立証責任があるというもので、名誉毀損を覆すには強力な根拠が必要でした。
ガス室の廃墟はあっても、実際にガス室に入れられた人達の写真はなく証拠は提出できません。
アーヴィングは著作は資料に基づいていると主張しますが、弁護団は膨大な資料を逐一読み解いて、資料に忠実に書かれていない部分を追求していきます。アーヴィングは自分の考えに沿うように少しずつ語句を変えていたのです。
弁護団は解釈の違いではすまされないことを突き詰めていき、最後は勝利を獲得します。 
リップシュタットの会話の中に、裁判費用が300万ポンドつまり4億円かかり寄付を募って集めたと言っていました。びっくりです。
夫の感想はバックに金持ちのユダヤ人がいるから莫大な寄付が集まった、勝訴まで持っていけた・・・と。

いまだにかつらをかぶり赤い服を身につけた中世風の弁護士、イギリスの裁判制度の珍しさ、活発な弁論もなかなか考えさせられる映画でした。文字で人の心を扇動する・・・、今晩のテレビで池上さんがフェイクニュースについて詳しく説明していました。

次回の『三文オペラ』は1931年制作のもので白黒映画。白黒映画のシャープさが好きで楽しみです。

庭に小さなコスモスが咲きました。まだ梅雨入り宣言さえも聞かないのですが。






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希林さんは生きていた!「日々是好日」

2018年11月01日 | 映画

妹から誘われて『日日是好日』を見てきました。9月に亡くなられた希林さんの最後の作品です。
どこにでもいそうな女子大生二人が茶道の武田先生とかかわりを持つことから話が静かに展開していきます。その二人が武田先生の家を初めて訪問したときに、引き戸の奥から、親しみのある「いらっしゃーい」と言う声と懐かしい顔が現れたときに「希林さんはまだ生きている!」と反射的に思ってしまいました。

   
未来が見えてこない女子大生の典子は家族団らんの会話の中のふとした展開で、同い年の女子大生のいとこ・美智子と茶道の師匠武田先生の元に通うことになります。

場面はほとんどが茶室で、袱紗の捌きかたから始まる茶道の細かい手ほどきになかなか馴染めず戸惑う二人です。それでも1週間、2週間、1か月と季節は繊細な色と音を違えながら確実に進んでいきます。会話は少なく四季よりも細かい24節季の表現が茶室いっぱいに実に美しく描かれています。
じゅらく壁の床の間の掛け軸の書、無駄をそぎ落として活けたお花、季節を象徴する和菓子、茶器など、見る側もスクリーンの隅々まで、細かいところまで目に留めておきたいと、目を皿にして集中して観ます。茶室の持っている雰囲気とたたずまいは凝縮された日本文化そのものですから。

典子は細かい手順や所作にその意味を問いただしますが、武田先生はやんわりと「初めに形を作っておいて、後から心が入るもの」とたしなめられます。映画では表千家でしたが、流派は違っても典子と同じ年齢・同じ立ち位置でお茶を習っていたころを思い出し、典子の気持ちに同化している自分がいました
水を注ぐときの音とお湯を注ぐときの音の違い、梅雨の雨音と時雨の雨音の違いなど自然を肌で感じることもさりげなく教えられ、神経が研ぎ澄まされて少しずつ何かが変わっていきます。掛け軸の「滝」の文字にすざましく流れ落ちる滝の音も景色も見えるようになりました。

若い二人は婚約者の裏切り、就職試験の失敗、父親の死、会社勤めの失望・・・と様々な岐路に立ちます。しかしお茶の道を淡々と歩きながらも、いつしか武田先生の包容力と人間味のある人柄に救われ導かれていきます。
10歳で見たイタリア映画『道』がやっと理解できるようになったのも、いつの間にか心の中に占める茶道の位置が確かなものになっていったことの証でしょうか。
『世の中にはすぐわかるものと、すぐわからないものの二種類がある。すぐわからないものは長い時間をかけて、少しずつ分かってくる』という会話はこの映画のひとつのテーマだと思いました。

武田先生役は希林さんしかできない、典子役は黒木華さん以外には考えられないくらいに、時々滑稽さも交えて淡々と進みながら濃密さを感じさせる演技力が、この映画を特別なものにしているのだと思いました。

5か月ほど前にやはり希林さん出演の『モリのいる場所』を見ていたので、改めていぶし銀のような存在の大きさ素晴らしさに感銘を受けました。ストーリー以前に希林さんの存在感が大きくて、いつの日かこのような素晴らしい女優さんが現れることを望んでいます。

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日本シリーズ第5戦でソフトバンクが5-4で勝ち王手をかけました。日本シリーズらしく両チームとも大活躍です。

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ドイツ映画鑑賞会『ベルリン、僕らの革命』2004年制作

2018年10月05日 | 映画

近くの大学の秋季市民講座が始まりました。ドイツ語学科の先生と学生が選んだ映画を、先生方の解説も交えて上映、その後質問、感想のやりとり、アンケートがあります。

映画館とは違った楽しみおもしろみがあり、夜間にも関わらず人気の高い講座です。講座料無料、近くに住む者の特権です。

最初にドイツの1960年代の学生運動やその頃の社会的思想が説明されました。’68年頃は日本でも学園が荒れました。

     

舞台は今のベルリン。青年ヤンとピーターは格差社会に反発し、自分たちの理想を描き「エデュケーターズ」と称して秘密の活動を行っていました。

それは金持ちの留守宅に忍び込み、家具などの贅沢品を引っ掻き回し『贅沢は終わりだ』と警告文を残して立ち去るもので、市中で取りざたされている怪事件です。 「物盗り」は大義にもとるとの信条で絶対盗みをせず、人も傷つけません。富裕層ばかりが優遇される現体制への痛烈な反抗だったのです。

ピーターの恋人ユールが富豪ハーデンベルグの車に追突して100万ユーロの保償を抱えたことから、彼女を巻き込んで3人だけの「僕ら」の革命が始まります。

ピーターの留守にヤンとユールはハーデンベルグの邸宅に忍び込み室内を引っ掻き回し成功したかにみえたその時に警報装置が!慌てて逃げ出しその場を切り抜けましたが、ユールが携帯電話を落としていたのに気づいたことから、ストーリーはサスペンス風に。

夜を待って再びハーデンベルグの屋敷に忍び込み携帯は発見しましたが、その時彼が長旅から戻ってきて鉢合わせ。息詰まる攻防の末ハーデンベルグが脳しんとうを起こしました。

ピーターの助けも借りてハーデンベルグを誘拐同然に連れ出して、ユールの親戚のチロルの山小屋で奇妙な共同生活を始めます。

共同生活の中でわかったことは、今は年収300万ユーロのハーデンベルグも、1968年学生運動のバリバリの活動家。しかし今はその富を肯定する側です。 三人の若者の苦い三角関係はもつれ込みますが、最後はピーターは理想と友情を優先させ落着させます。

そんな中の議論の末、ハーデンベルグは警察通報はしない、車の賠償も取り消すということで、彼を解放して家に帰すことにしました。

その後暫くして、重装備の警察官が三人のアパートに押し入りますがもぬけのカラ。すでに他の場所に移動していました。ハーデンベルグは約束を破り、やはり最後は警察に通報したのですが、それにも時間差があるのは苦渋のハーデンベルグの意図かも。

ラストシーンは、地中海の明るい日射しの中で、イタリアらしくマリンカラーのジャケットをはおり、3人は豪華なヨットで海に滑り出します。そのヨットはハーデンベルグ所有のものでした。

映画の途中に、ヨーロッパ中を網羅している地中海の通信施設を破壊して打撃を与える計画が出てきて、それが伏線になって多分その通信施設に向かったのでしょうか・・・。

ヨットの中のテーブルにハーデンベルグの写真入りの証明書がちらっと映ったのは、この計画にはハーデンベルグの意志も入っていたのか・・・。 ハーデンベルグの昔の思想と今の姿の両方に激しく揺れ動く心・・・が見てとれます。

現代社会の緻密さから考えれば、この青年たちの理想もやり方も先が見えていて幼稚とも言えます。 ’68年の闘争は数年で消えた記憶があり、その活動が今の若者には憧れとして映ったのかも知れません。

自由主義経済の中で「変わる、変える」ことの理想が実現できたかどうか・・・は、あのヨットの行き先だけが知っているのかな。日本でも60年代の活動家が経済界のトップになったりしています。

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映画 『 モリのいる場所 』

2018年05月25日 | 映画

シンプルな輪郭線と美しい配色で平板に塗られた、写実以上に、本物以上にネコの存在感を与える絵、熊谷守一「猫」1965年。一度目にして以来ずっと脳裏に焼き付いている絵です。
その熊谷守一氏の晩年の静かな日常が、味わい深く、ユーモラスに描かれている『モリのいる場所』が上映されています。
  

展覧会場の3個の白い物体と柄のとれた包丁の絵。それを不思議そうに見つめる品のいい老人の「この絵は何才の子が描いたのですか?」という問いかけ・・・。林与一さんの役作りは完璧でした。そう、あの懐かしい昭和天皇のありし日のお姿がよみがえりました。

冒頭のこのシーンが守一氏(モリ)の絵の全てを物語っていました。映画の素晴らしい導入に感じ入りました。

塀に囲まれた雑木と草花と小さな池と平屋のある空間が「モリのいる場所」。決して広くはない庭を散策するのが日課で、30年間家から出ることのなかったモリの人生のすべてです。

著名人であるため朝から訪問客が絶えず、飄々と自分の世界に生きるモリに代わり応対するのは妻とお手伝いさん。この3人の会話の間の取り方、動作の間の取り方に静かな感動と面白味が広がります。
時流に無頓着なモリの言葉に「ああ、そうですかぁ~」と返す妻。決して無視するのでもなく、軽視するのでもなく、受け流すのでもなく、正面からキッと受け止めるのでもなく、50年を共にした夫婦の間にしか通じない独特のイントネーションの台詞が実に絶妙です。この台詞は樹木さんしか演じられないかもしれません。私もいつかこんな風に「ああ、そうですかぁ」と言えるようになりたいな・・・。言えないだろうな・・・。
随所にユーモラスな会話や動作が出てきて、見るものの心をほんわかと明るくしてくれますが、それは守一氏の絵にも通じるものだと思いました。ムダを削いで削いで単純化した絵には、どこかユーモラスで温かさを残しているのです。

空気のような透明感のある夫婦の佇まいには、艱難を乗り越えた50年の夫婦の、得も言われぬ人生の味わいがそこはかとなく広がります。
平日の映画館内はシニア族が多く、時折こぼれる笑い声に、自分達の人生を重ね合わせて共感し、共有できることに安心します。

山崎努と樹木希林の表情としぐさと会話があれば、ストーリーはなくてもそれだけで満足できる映画です。脇を固める俳優の演技の見事さもあると思いますが、本当に飽きさせない映画でした。
熊谷家の訪問者たちの会話の中に、当時のテレビの人気者の名前や時勢がうかがえて、温かい昭和がほのぼのとよみがえり親しみを感じます。
淡々と展開する熊谷家の夏の一日が、見る者の心にじんわりとふんわりと感動を広げてくれる秀逸な映画でした。

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ドイツ映画 『嘘つきヤコブ』

2018年05月02日 | 映画

近くの大学の市民講座、ドイツ語学科の「映像にみるヨーロッパ」の今期最初は『嘘つきヤコブ』でした。1974年に制作された東ドイツの映画です。

「DEFA70周年 知られざる東ドイツ映画」特集が、全国的に美術館、大学などで取り上げられ、静かな話題を呼びました。その中の一つがアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『嘘つきヤコブ』です。

   

《あらすじ》

第二次世界大戦中のポーランド、ユダヤ人ゲットーの中。ヤコブはひょんなことからナチスの見張り所から聞こえてきたラジオで、ロシア軍が数十キロの所まで侵攻し、ドイツ軍が苦戦していることを耳にします。

その衝撃のニュースを、ヤコブは「隠し持っている禁制のラジオで聞いた」と嘘をつき仲間のひとりにこっそり教えました。強制収容所への移送の恐怖と絶望の中にいる人たちにとり、ロシア軍が助けに来てくれていることは一条の光、希望に繋がり、あっという間に皆の知るところとなってしまいました。

皆はニュースの続きを聞きたがります。ヤコブはラジオを持っていると嘘をついたことに戸惑いを覚えます。最初の嘘が次の嘘を、また次の嘘を呼び起こし、ヤコブの苦しい作り話はどんどん広がっていき、皆を喜ばせ希望を持たせることになりました。

しかし、皆は事態が進まないことでヤコブに不信感を持ち始めました。それと時を同じくして、ナチスはユダヤ人に全員集合の張り紙を出します。このことは他ならぬ恐れていた強制収容所移送を意味しました。

ゲットーの不安の中での希望の嘘、この嘘がよかったのか、悪かったのか・・・。

暗い移送車の中から見る真っ青な空と白い雲。それはヤコブが可愛がっている孤児のリサに話してやった童話の中の景色と同じでした。

何も知らない純真なリサは、その光景を見て大喜びします。移送車は大人達の絶望の塊を乗せて収容所に向かって、事務的に機械的にただひた走ります。つらい映画でした。

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スマホからの投稿は、画面の不用意なタッチで3度も消えました。その都度新しく書き直して・・・。長い文章はパソコンの方がいいのですが、手元で投稿できる便利さの魅力は大きいものです。

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『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

2018年04月25日 | 映画

27日で上映が終わるというので雨の中を行ってきました。アカデミー賞をはじめ数々の主演男優賞をものにし、何よりも同メイクアップ&ヘアスタイリング賞を獲得した辻一弘氏も話題を呼びました。

     

チラシにもあるように「英国一型破りな男が、ダンケルクの戦いを制し、歴史を変えた」「ヒトラーから世界を救った男」「『嫌われ者』から『伝説のリーダー』となったチャーチルの、真実の物語」の文字からも映画の内容が想像できました。

時は、第二次世界大戦初期の1940年5月9日。ナチスドイツはヨーロッパへの侵略を深め、仏のダンケルクでは連合軍40万人が窮地に陥っていました。イギリスにもその脅威が迫っており、不信任のチェンバレン首相からチャーチル首相に変わります。

チャーチルの手腕にヨーロッパの運命がかかります。ナチスと和平交渉を進めようとする宥和派と徹底抗戦を推し進めようとするチャーチルは対立します。
首相就任からダンケルクの戦いまでの4週間の息づまるような政治家たちの駆け引き。孤独なチャーチルの苦悩、イギリスの苦悩が日付を追って展開していきます。はらはら、ドキドキの感動の物語です。
ラストシーンの4分間のチャーチルの議会演説は凄味と絶対にナチスに負けないという信念がありました。あの場面だけでも主演男優賞が取れるかも・・・。

数年前にパリを自由に歩き回った時に、アレクサンドル3世橋からプチ・パレに向かったその一角で、太っちょチャーチルの銅像に夫が気づきました。右足を前に出して杖をついて歩く姿・・・。
その台座には『We shall never surrender』(私たちは決して降伏しない)という言葉が彫り込まれていました。
チャーチルの銅像がパリにある理由、そしてその台座の言葉はイギリス議会での演説の一部分だったことが今回の映画でわかりました。映画が4年ぶりの謎解きをしてくれました。
 

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