モンゴル国が、チンギス・ハーンによる統一から800周年ということでとかく話題になっています。昨年は、「日本におけるモンゴル年」でした。日本とモンゴルの合作映画も作られました。総工費30億円、4か月のオール・モンゴルロケ。さっそく「蒼き狼 地果て海尽きるまで」を観て来ました。
今、日経新聞に堺屋太一氏の『世界を造った男 チンギス・ハーン』が連載されています。堺屋氏は、チンギス・ハーンが勢力を拡大していく過程に、経済面からも切り込んで、ここはとても興味深く、今までのチンギス像、勢力拡大とは違う面が語られています。
井上靖氏の『蒼き狼』は、チンギスが広大な帝国を作っていく原動力を「青き狼のモンゴルの血」の証明だとし、その精神を昇華させた武力、政治、人事、家族の愛と憎の葛藤を描いた、簡潔で美しい文体の作品です。人をかみ殺す「狼」の物語が、井上氏特有の表現で格調高い文学作品になっているような気がします。
チンギスも長子ジュチも、その父親が誰か定かでなく苦悩しますが、モンゴル人であることを証明するのはただひとつ、「狼たれ。」ということでした。この父子の葛藤と苦悩は、「華麗なる一族」にも似ていると思いました。そういえば、山崎豊子さんは、毎日新聞で井上靖氏の部下だったんですよね。
この映画の原作は、てっきり井上靖氏と思っていたら、森村誠一氏でした。森村氏の本は読んではいませんが、大体似ていると思います。境屋氏、井上氏、それに司馬遼太郎氏の短編『戈壁の匈奴』を読んで3つのイメージを膨らませていくと面白とおもいます。そういえば、これは角川映画でした。随分お金がかかっていますから…。ちなみに「戈壁」は「ゴビ」と読むんだそうです。
映画評はいろいろあるようですが、私はモンゴルの草原の暮らし、服装、戦い、大地の距離感が今ひとつ実感として捉えられなかったので、27000人のエキストラを使ったというこの壮大な映画を、ぜひ見たいと思っていました。母ホエルン役の若村麻由美さんが好演、ジュチの苦悩、弟カサルのひかえめな役もよかったと思います。モンゴルの草原のイメージが少しつかめました。
夫の誕生日だったので、食事をしたレストランで、こんな素敵なデザートのサービスがありました。糸のようなアメ細工にミントの葉を散らしたおしゃれなデザートです。心は、いくつになってもメルヘンの世界に遊ぶようです。