新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

「翔ぶが如く」

2010年12月04日 | 本・新聞小説

Cimg6900 「坂の上の雲」「世に棲む日々」「最後の将軍」「竜馬がゆく」と読み進みましたが、私には維新直後の草創期の明治政府が思い描けずに、その部分が空白になっていました。

幕藩体制は壊したものの、将来の明確な展望がないままにスタートした明治政府が、どのようにして近代国家をつくりあげていったのかが具体的にイメージできませんでした。幕末志を高くして活躍した人たちがその後どうなったのか、維新後内政は具体的にどのように整えられていったのか・・・と気になり、読みだしたのがこの「翔ぶが如く」でした。

前半は、維新直後の留学組が西欧の思想にふれ、驚愕と使命感をもって帰国した後、それをどのように生かして近代国家を成立させていったのか、人間関係を詳しく説明しながらストーリーがすすんでいきます。太政官とはどんなものか、川路利良がどのような考えを持って警察機構を整備していったか、大久保利通はどのような考えを持って日本を構築しようとしたか、明治の軍隊はどのように整備されていったか細かく書かれています。

後半は、かつては同志であった大久保と西郷が、征韓論をめぐりはっきりとたもとを分かったあと西南戦争に突入していく過程が、薩摩武士の人間模様を交えながら展開していきます。鎮台を中心にした政府軍と最強と言われた薩摩軍との戦いがたくさんの資料をもとに詳細に書かれています。

その薩摩軍の戦闘ぶりを、西欧式軍隊の規律や規則をもった組織でなく、西欧兵器ももたず『上代の隼人が翔ぶが如く襲い、翔ぶが如く退いたという集団の本性そのままをいまにひきついでいるかのようである。』と書いています。薩摩士族はこれを美質と思っており、その特異な特性こそが西南戦争を引き起こしたのであり、むしろ西郷はそれに引きずられたのだ・・・と、司馬氏は言いたかったのではないでしょうか。

教科書では数ページで終わりそうな明治初期の10年間が、この本ではなんと7巻2400ページにも及んでいます。テストを離れた歴史の面白いこと!教育機関での歴史の授業のあり方に疑問がわきます。

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