近くの大学の市民講座、ドイツ語学科の「映像にみるヨーロッパ」の今期最初は『嘘つきヤコブ』でした。1974年に制作された東ドイツの映画です。
「DEFA70周年 知られざる東ドイツ映画」特集が、全国的に美術館、大学などで取り上げられ、静かな話題を呼びました。その中の一つがアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『嘘つきヤコブ』です。
《あらすじ》
第二次世界大戦中のポーランド、ユダヤ人ゲットーの中。ヤコブはひょんなことからナチスの見張り所から聞こえてきたラジオで、ロシア軍が数十キロの所まで侵攻し、ドイツ軍が苦戦していることを耳にします。
その衝撃のニュースを、ヤコブは「隠し持っている禁制のラジオで聞いた」と嘘をつき仲間のひとりにこっそり教えました。強制収容所への移送の恐怖と絶望の中にいる人たちにとり、ロシア軍が助けに来てくれていることは一条の光、希望に繋がり、あっという間に皆の知るところとなってしまいました。
皆はニュースの続きを聞きたがります。ヤコブはラジオを持っていると嘘をついたことに戸惑いを覚えます。最初の嘘が次の嘘を、また次の嘘を呼び起こし、ヤコブの苦しい作り話はどんどん広がっていき、皆を喜ばせ希望を持たせることになりました。
しかし、皆は事態が進まないことでヤコブに不信感を持ち始めました。それと時を同じくして、ナチスはユダヤ人に全員集合の張り紙を出します。このことは他ならぬ恐れていた強制収容所移送を意味しました。
ゲットーの不安の中での希望の嘘、この嘘がよかったのか、悪かったのか・・・。
暗い移送車の中から見る真っ青な空と白い雲。それはヤコブが可愛がっている孤児のリサに話してやった童話の中の景色と同じでした。
何も知らない純真なリサは、その光景を見て大喜びします。移送車は大人達の絶望の塊を乗せて収容所に向かって、事務的に機械的にただひた走ります。つらい映画でした。
**********************
スマホからの投稿は、画面の不用意なタッチで3度も消えました。その都度新しく書き直して・・・。長い文章はパソコンの方がいいのですが、手元で投稿できる便利さの魅力は大きいものです。