新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

BSシネマ『愛と哀しみの果て』1985年アメリカ

2022年08月24日 | 映画
上映時間2時間40分、長いなと思いながら見始めると冒頭からモーツァルトのクラリネット協奏曲が流れ始めました。


ヨーロッパとアフリカの大地、対極にあるように思えますが、美しいアフリカの大自然にはモーツァルトの音楽がこの映画のために作られたかのようにマッチしていました。
デニス(ロバート・レッドフォード)が持ち込んだ蓄音機はモーツァルトを聴くため。その美しいメロディーは緑の森にも褐色の大地にもスーッと吸い込まれていくようでした。

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第一次大戦前のデンマークで裕福な生活を送っていたカレンは心が寄り添わない恋人に嫌気がさし、財産を使い果たしていた彼の弟・男爵ブロルに自分との結婚を提案しアフリカに移り住みます。
ケニアにはカレンが所有していた農園があり、そこで酪農を始めることが夢だったのです。しかしブロルは相談もなしにコーヒー栽培へ切り替えてしまいました。そのうえ勝手に狩りに出かけ家を空けたまま・・・、カレンは次第に不満を持ち始めます。
原住民たちとも親しく接しながら、カレンは一人でコーヒー農園を軌道に乗せるために奮闘しアフリカの生活に生きがいを感じていました。

ケニアに着くとすぐに、サファリの仕事をするデニスやバークレーと出会い親しくなっていきます。
ブロルの勝手な生き方にも関わらずカレンはいつしかブロルを愛し始めていました。しかしカレンが梅毒に感染したことからブロルの浮気がばれ、大きな失望感にさいなまれながらデンマークに帰国し、長い療養の後完治してアフリカに戻ります。
子供が生めなくなったカレンは、現地の子供たちのために学校を建てます。しかしブロルの浮気は直らず、心も離れていきとうとう別居にまで進みました。

一方カレンは次第にデニスに惹かれていき、彼は街の事務所を引き払ってカレンの家に住み始めます。それはカレンが夢見た平穏で幸せな日々でした。
ケニアの高地では育たないといわれていたコーヒーも順調に生育し、カレンも原住民とともに泥まみれになって働く充実した日々でした。

ブロルは金持ちの再婚相手を探してきてカレンに離婚を要請し、正式に離婚します。
束縛の無くなったカレンはデニスに一緒にいたいと結婚を望みますが、デニスは束縛されずに自由でいたいためにサファリの仕事を選んでいたのです。激しい口論になりますが、「他人の人生に引きずられるのはごめんだ」と応じないデニスに、それなら家を出ていってほしいとついに亀裂が・・・。


再び孤独の中をさまよううちに、追い打ちをかけたように大切な農園と工場が火事になり全財産を失ってしまいました。
大戦後植民地になった関係で、職を失った原住民は土地を失うことになりますが、カレンは必死になって原住民に土地を残すように努力しそれが認められました。
やっと家屋敷の整理がつくと、カレンはデンマークに戻る決心をします。

そのことを知ったデニスはカレンの元を訪れます。お互いに想いあっていても求めるものが違っていた・・・と、二人はきちんと別れることを決心します。
帰国の飛行場へは自分の飛行機で送っていきたいとデニスが希望すると、カレンはそれを受け入れます。しかし、その飛行機は二度と戻ってくることはありませんでした。その直前に飛行機事故を起こし帰らぬ人となっていたのです。
カレンがアフリカで得たものと失ったもの・・・、愛と哀しみ。デンマークに帰ったカレンは小説を書き、二度とアフリカの地をを踏むことはありませんでした。

アカデミー作品賞。原作アイザック・ディネーセン『アフリカの日々』
ストーリーの割には長い上映時間ですが、美しいアフリカの景色と動物と音楽で、その長さの意味が分かった気がします。
メリル・ストリープ、ロバート・レッドフォードの主役の二人がすばらしいのはもちろんですが、ケニアの原住民の素朴な人柄と笑顔がとても印象的でした。ケニアは幸せの大地なのかもしれません。

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