1962年のアメリカ、実話に基づいた話です。2019年アカデミー賞作品賞です。
黒人の天才ピアニスト、ドクター・シャーリーの演奏ツアーに、運転手として雇われたイタリア系移民のトニー・リップが同行。2ヶ月かけて南部を回るのですが、黒人とイタリア系白人はお互いになかなか馴染めない関係でした。
出発する時レコード会社から渡されたのが「グリーンブック」です。黒人専用のホテルやレストラン等の施設のガイドブックでした。これが絶対に必要なほど人種差別のきつい「Deep South 」だったのです。
トニーも黒人に差別的な目を持っていましたが、最南部の差別は理不尽なものでした。コンサートは大成功でも、そこのレストランには拒否され、トイレは戸外の掘っ立て小屋、楽屋さえ物置だったのです。しかしドクターはいつも冷静に対応しました。「暴力に訴えたら敗けだ」と。
トニーはそんな差別に人間として激しい怒りを覚え、暴力で訴えることもありました。
ドクターはトニーが心から自分を守ろうとしていることを知り、トニーもドクターの能力や人格や美しいマナーを認め始め、お互いに心を開いていきます。
「アメリカ北部でならチヤホヤされ3倍の金を稼げた。だから自らここに来た」なぜか?
それはナット・キング・コールがバーミングハムに招かれたとき、白人の歌を歌う彼が数人の白人男性に袋叩きにされたという苦い過去がありました。「才能だけでは十分じゃない、勇気が人の心を変えるのだ」という強い信念を持ってのツアーだったのです。
ロードムービーさながらにいろいろな困難を切り抜け、クリスマスイブには大雪の中をどうにかニューヨークの自宅に帰り着きます。トニーは家族のパーティーにドクターを誘いますが断わられました。
ドクターはカーネギー・ホール最上階の高級アパートで孤高の一人暮らしでした。その孤独な空気に耐えられず、勇気を持ってトニーの家を訪れます。ドクターもトニーも2ヶ月間で変わったのです。
普段は「ニガー」と蔑視していた家族も、トニーを見た途端に気さくにパーティーに迎え入れます。楽しく和やかなシーンで終わったのが救いでした。
2019年アカデミー賞では、作品賞ばかりでなく脚本賞、孤高のピアニスト役が助演男優賞です。