伊能忠敬の本を検索している時に偶然目にした『文政十一年のスパイ合戦 検証・謎のシーボルト事件』秦新二著 文藝春秋。
著者は歴史学者ではありません。オランダ語を専攻した著者はシーボルトの現存している書状をハーグ国立公文書館、ライデン大学図書館、ミュンヘン大学図書館、インドネシア国立公文書館、ミッテルビベラッハ城文庫/ブランデンシュタイン城文庫で調査しました。
北斎直筆の「武器・武具の図」、間宮林蔵直筆「黒竜江中之洲并天度」「江戸御城内御住居之図」等の新資料を発見して、各館のコレクションを系統立てて整理していくなかで、これまでと全く違う角度からシーボルトを見つめ直しました。
近代医学を身につけた有能な医者という定説を覆し、何らかの任務を帯びて来日したとして、シーボルト事件の裏を読み解きます。
ここまでは膨大な資料を元にした歴史小説ですが、極めつけは将軍家斉、岳父・島津重豪と密貿易、幕府用人が登場して歴史を大きくかき回す大胆な推理をして、「なるほど」と納得させられてしまいました。
単なる読み物ではなく、「検証」という副題がこの小説を重厚にしています。
久々に手応えのある読み物でした。
紡ぎの古布で作られたブックカバーは友人からのプレゼント。
革製、合皮製と複数のブックカバーを使っていますが、これは本の表紙がピッタリ収まりズレないのです。手に馴染んで使い易く、とても気に入っています。