新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

『藝術のパトロン』矢代幸雄 中公文庫

2019年07月26日 | 本・新聞小説
ブログ「blue-moment」さんの、国立西洋美術館「松方コレクション展」の紹介にとても心が動きました。展覧会の見方に共通するものがあり、その後紹介してもらった本の中の一冊が『藝術のパトロン』です。



ここではコレクターとして、松方幸次郎、原三渓、大原孫三郎・総一郎、福島繁太郎が取り上げられています。

むか-し。私が開館3年目の国立西洋美術館に行ったのは高2の修学旅行のオプションで。とにかくすごいものだということで選んだのですが、松方コレクションと結び付いたのは後のことでした。

松方氏は1920年代に収集した絵画等をフランスに預けていましたが、第二次大戦中に敵国財産として没収。それが松方氏にではなく日本政府に返還されたのが1959年のことです。

この本の著者矢代幸雄は、留学中に若くして松方氏と出会い、そのお供で絵画の買い付けにも同行し、更に日本への返還にも携わりました。
そのロンドン、パリでの芸術家、文化人との交流を生身の人間として正直に語っているところも惹き付けられました。
西洋美術館開館 60周年の「松方コレクション展」の開催に合わせて、テレビの「新日曜美術館」「ぶらぶら美術館」でも分りやすく放送されました。

原三渓のコレクションと広大な三渓園にまつわる話に、家族揃って美術を愛する理想の形がそこにはありました。
タゴール、フリーア、日本画壇の著名人、文化人とここを訪れた人たちとの交流場面には胸躍ります。

本文中の三渓コレクションの名品、乾山「花籠」と「病の草紙」が、今では福岡市美術館の「松永コレクション」に入っていることをとても誇りに思いました。
三渓コレクションの最たるものといわれる「孔雀明王」は、数年前に九州国立博物館の「国宝展」で見ていました。ラッキー!

とにかくこの本には、国内外の著名な画家、文化人、知識人、美術館がたくさん出てきます。
過去に訪れた美術館や作品を思い出しながら、何回もページをめくることでしょう。私にとっては、そんな息の長い本になりそうです。






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