幕末維新というのは政治・経済的に物凄くややこしい時代でたった百年ちょい昔のことなのに学校の授業では習わないことに満ちあふれている。
その「習わないこと」を教えてくれるのが司馬遼太郎や吉村昭の作品を代表とする歴史小説の数々だ。
ただし歴史小説の多くは人や政治に焦点が当てられ「経済」のことについて語られることは殆どない、
それほどこの時代の経済は複雑で専門家でない限り、なかなか素人でもわかるような解説ができないのではないか。
と私のような金銭音痴は考えている。
たぶん今の中学校や高校の授業では国内外における金銀の交換レートの違いによる日本経済の大打撃以外はあまり教えていないのではいだろうか。
かといって幕末維新の経済が重要ではないかといえばそうではなく、当時、幕府も薩長も経済活動を前提に政治紛争を行っており、経済を知らなければ「なぜ」を理解出来ないこともある。
そしてこの時代の経済が現代へと連なっているのだ。
例えば、現在世界中で活躍する有名企業には、この幕末維新に設立されたり、近大企業に変身したところが少なくない。
三井、住友、大丸などの大店から変身を遂げた企業だし、三菱、東芝、資生堂、木村屋といった電気製品や化粧品、食品などで身近な企業もこのころに設立されている。
でもそれらの企業がどのように誕生して進化したかなんていうことは、私企業のことなので学校で習うことはほとんどない。
経済立国、日本の大切な歴史なのに。
そんなこんなで学校教育では明治維新は歴史の"ひと欠け"程度の認識しかもたせておらず、主に虚飾騒然とした大河ドラマで満足しているのが現実だ。
そんななか、面白い小説を発見した。
渡辺房男著「円を創った男 小説大隈重信」。
旧幕時代の"両"の時代がどのように新政府(現政府)の"円”に変わったのかが素人にでもわかるように描かれている。
貨幣制度改革はこうして成された、という小説なのだ。
正直、長い間、江戸時代の貨幣制度がどのように現代の制度に生まれ変わったのか、私は不勉強で知らなかった。
「時代劇では両とか文とかつかっているけど、それってどれくらいの価値があるの」
なんてことを調べようとしても手軽な資料はなかなかない。
ましてや、
「円はどのように誕生して、どのように使われるようになったのか」
なんてことが簡単にわかる書籍など、見たことがなかった。
大隈重信の伝記として、あるいは時代小説としてはイマイチの感がなくもないが、幕末維新期における貨幣制度の変革を知るということについては、本社は他にはなかなか見かけられない良書だと思う。
~「円を創った男 小説大隈重信」渡辺房男著 文春文庫~
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