<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地





休日の正午前。
近所のスーパーマーケットに買い物に出かけたら、とんでもないものを見つけてしまった。

「姫路駅名物 えきそば」

関西地区に住んでいる人々の中にはJR姫路駅のえきそばのファンは少なくない、と私は思っている。
これは私がファンだからという理由ではないが、確かにここの駅そばは他とは違う特長があり記憶に残る味なのだ。

昭和40年代。
幼い頃の私は晴秋の農繁期や盆正月、両親または母につれられて祖父母をはじめ叔父叔母、大量の従姉、又従兄弟が生活している岡山へ行ったものだった。
山陽新幹線開業前、毎回母に手を取られ大阪駅から宇野行きの国鉄の急行鷲羽号に乗るのが楽しみだったのだが、中でも最も大きな楽しみが「姫路駅の駅そば」を食べることなのであった。

当時は姫路駅に停車したと同時に売り子が電車の側までやってきて、そばを販売してくれていた。
母も私が姫路駅のそばが大好きなのを知っていて、必ず買い求めてくれたのだが、ときどき売り子がやってこず、わざわざホームの駅そば屋まで買い求めに行ってくれたことが何度かあった。
一度だけ、いくら待っても母が電車に帰ってこず、今にも電車が発車しそうな感じになんてきて、一人不安な私は泣き出してしまったことがあたったりした。
調度、泣きじゃくって周囲の人に慰められているところに母が丼を持って帰ってきてくれたことを、霞に包まれた情景になってしまったが今でも記憶として残っている。

そんな思い出深い「姫路駅のそば」は国鉄がJRになっても、存在し続け今日に至っている。

この駅そばの特徴は麺とスープの組み合わせにある。
麺が中華麺でスープが和風なのだ。
そこに天ぷらや油揚げが載っていたりするのだは、これが実においしいのだ。

今でも時々仕事で姫路に出かけた時は、この駅そばを食べることを私は習慣にしている。
たとえお客さんとランチを食べて別れた直後であっても、私はこの蕎麦だけは絶対に食べることにしているのだ。
こんなこと、家族に話したら「アホちゃうん」と指摘されるかも知れないが、アホと言われようがバカと言われようが、マヌケと入れようが姫路に行ったからには「駅そば」は絶対であり、「これ食べなくして何が姫路だ」、という感覚がある。
正直、国宝姫路城よりも駅そばが、この播州の代表物だと私は信じている。

で、カップ駅そば。

山積みされて販売されているその光景は、私にとってかなりショックなのであった。
というのも、まさか「姫路駅そば」がカップになるとは思えず、しかもそれを日清食品というカップラメーン世界一の会社が商品化してしまっていることに、驚きと苛立ちを感じたのであった。

「どんな味なんや。駅そばファンへの挑戦か?」

私は迷わず1個購入。
その日のランチに食することに決めたのであった。

で、結果から言うと、なんでもない。
日清食品の代表カップうどん「どん兵衛」の変形版とも言えるような製品なのであった。
味は明らかにどん兵衛。
しかし麺は中華麺。
天ぷらというかエビのかき揚げも載っている。
パッケージには「姫路駅名物」。
でも食べたら、どん兵衛。

結局本物は現地に行かなければ味わうことは不可能な、神聖なる「姫路駅そば」なのであった。



丼いっぱいに広がるエビの天ぷら。
スープは粉で、一味唐辛子が付いていた。
麺は中華。
よくよく考えてみると、これにスライスした豚の角煮を乗っけると、そのまま「沖縄そば」として売れそうな感じがしないでもない。
カップ麺、案外いい加減な作りなのかも。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )