<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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夏の沖縄、でも暦は11月(10_最終回)
旅_日本
/
2011-11-26 08:03:23
時間は午後1時を過ぎた。
私は午後6時すぎの最終の関西行で大阪に戻る予定だったので、残すところ僅かな時間しか無い。
この付近からは那覇までは高速道路を使わずに戻るとすれば2時間少しは見ておかなければならないし、出張とはいえここは沖縄。
多少のお土産は買わなければ帰ってから顰蹙を買いそうだ。
顰蹙を買うぐらいならお土産を買うのは当然だが、そうなると観光客には定番の国際通りにも寄りたいし、せっかくの5年ぶりの沖縄だから、久しぶりに「ゆいレール」に乗って各駅ごとに車内で流れる沖縄民謡のメロディチャイムも訊いてみたい。
私はフクギの並木に立ち寄ったあと、今回の旅で最後にひとつだけ訪れてみたいと思っていたところへ自動車を走らせることにしたのだった。
その行ってみたいという場所は、古宇利島。
昨日、那覇に着陸しようと高度を下げた飛行機から偶然に見つけたサンゴ礁に囲まれる「ま~るい島」なのであった。
もちろん、飛行機に載っていた時は、その島がどこのなんという島で、どうやって行くのかも分からなかった。
那覇に着いてから地図で確認したら、なんと海洋博記念公園から、たいして遠くないことがわかったのだ。
では、なぜ私がその島に行ってみたいのか。
その理由は、その島には沖縄本島から一直線に長い橋がかかっており、その風景が旅行ガイドなどで見る見知らぬ外国のように、なんとも美しかったからでもある。
もし今回の出張で、その近くへ行くことがあれば、私は是非とも地上からこの島を見てみたいと思ったのであった。
半島をぐるっと回っている国道をゆっくりと走ると、途中、「ヤギ料理」なんていう沖縄ならではの食堂があり、「おお、立ち寄って見たい」と思ったものの、少々不気味で「大和人(やまとんちゅ、と読みます)が食べるのは無理」とも言われているので「時間がないから」というのを理由にしてパスした。
やがて小さな町を通過すると古宇利島への道標が現れ、いよいよあの長い真っ直ぐな橋と、ま~るい島を身近に目撃するワクワク感が募ってきた。
古宇利島は実際には本土とはつながっておらず、やはり大きな橋を渡って屋我地島という島を通ってからのアクセスなのであった。
きれいに舗装された道路をゆっくりと走る。
周囲には沖縄らしい緑豊かな景色と、青空が広がっている。
幾つかのカーブを曲がり、やがてなだらかな丘を超えると前方にまっすぐに伸びた古宇利島に架かる古宇利大橋が目に入った。
「これは........すっごいキレイや!」
と、沖縄に来てからというものの、他に表現方法は無いのか、と自分自身でも思うぐらい同じ感嘆符が連続する。
それにしても、この景色は本土ではなかなかお目にかかれない、というより見るのは無理。
沖縄まらではの景色なのであった。
橋を渡る直前には小さな駐車場があった。
その駐車場にはすでに多くのレンタカーがとまっていて、多くの観光客が写真をパチパチと撮っていたのだった。
考えることは皆同じなのだ。
私も自動車を駐車させ、パチパチと写真を撮ることにした。
駐車場の前は砂浜になっていた。
すでにこの砂浜の景色が絶景だ。
まっすぐに伸びた橋は、ここから見ると中央より少し手前が船の通過のためか少し高くなっていて、なんとなく琵琶湖大橋に似ている。
琵琶湖大橋と明らかに違うのは周囲の美しさと、空の青さなのであった。
駐車場の近くには観光客を当て込んだと見られるプレハブのカフェがあり、なぜか「ウニ丼」などを売っていたが、先を急ぐ渡しは島を一周すべく、古宇利大橋を渡ることにした。
橋の全長は約2km。
2005年に竣工したとのことで、ほとんど真っさら。
そして橋から眺める景色のあまりの美しさに、途中駐車して写真を写している不届き者さえいるくらいだ。
橋を渡り終えると、たくさんのカフェや土産物屋、道の駅などがあり、活況を呈していた。
ブルーシールアイスクリームの看板がアイスクリーム好きの私の目を惹きつける。
ここでも「うに丼」の看板が目につき、ここの名物がうに丼であることがよくわかった。
しかし、海鮮丼というと沖縄と言うよりも北海道という印象が私にはあるため、前回沖縄に来たときに札幌ラーメンを食べた記憶が蘇り、「なんとなく、無粋だ」と、とりあえずうに丼は考えないことにした。
でも、戻ってからインターネットで調べると、かなり美味そうなもののようで、少しく残念だ。
ともかく時間が無いので島を周回する道路をゆっくりと走ることにした。
それにしても穏やかな風景だ。
ところどこに観光客目当てのカフェがポツンと立っているもの、それ以外はほとんどさとうきび畑。
青空と、夏のような陽射し。
温かい潮風。
海の向こうの海岸で風力発電の風車がゆっくりと回っているのも、これまた美しい。
周回道路から海に向かって時々小さな道が付いているので、入ってみると、忽然と「うどん屋」があったりするのは、驚きでもあった。
海のよく見渡せる場所に自動車を止め、エンジンを切る。
浜辺に寄せる波の音。
透き通った海。
大阪に帰るのが嫌になってしまいそうな、穏やで温かい雰囲気が漂っていた。
ずっと、ぼ~っとここにいたい。
と、思ったものの時刻は午後2時を過ぎている。
そろそろ那覇に向かって走らなければ、国際通りに立ち寄ることはおろか、帰りの飛行機に乗り遅れる。
なんといっても今回は格安の「旅割45」というチケットで来ているのだ。
片道13000円という東京~大阪よりも安いエアチケットなのだ。
キャンセルや変更は効かない。
私はこの素晴らしいのんびりとした景色に暫し別れを告げ、
「次回はプライベートに、嫁さんと娘を連れてこよ」
と心に誓い、国道58号線への合流点に向けて出発したのであった。
おしまい
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