
大阪中之島にある国立国際美術館。
ここの建物を探すのは容易ではない。
中之島といえば、大阪の中心の一つ。
ここには大阪市役所本庁や日本銀行大阪支店、中央公会堂、市立東洋陶磁美術館や大手企業の本社が並んでいて、いかにも地価が高そうなところなのだ。
国立国際美術館はその中之島でも、どちらかというと西のはずれの方にあり、京阪電車の中之島新線が開通するまでは、お世辞にも便利な場所ではなかった。
従って中之島でも有名な地域とは異なって、少しく景観が異なる地域ではあるのだ。
で、その美術館がなぜ見つかりにくいかというと、美術館の建物よりも大阪市立科学館の建物が見かけが大きい上に、その建物が美術館の上に乗っかているからでもある。
つまり国立国際美術館は地下にある美術館なのだ。
地表にちょこっとだけ玄関口が出ている以外、他の部分は地下深く、それも広大な空間に建設されている。
広大な洞窟のような雰囲気なのだが、この美術館は私の好きな場所の一つだ。
先週の休日に、この国際美術館を訪れてきた。
仕事のストレスがピークに達しているためイライラが募り気分転換の必要があり、同じく職場でストレスが貯まりまくっている嫁さんを伴って訪問してきたのだ。
もちろん地下美術館に陰気に引きこもるためではなく、アートを鑑賞し、気分一新するための訪問だった。
なお、次週に期末テストを控えた娘は残酷にも爺ちゃんの家に残してきたのであった。
企画展示されていたのは「世界政策の方法」という空間アート。
1970年前後生まれのアーティストたちが競作した数々の空間アートは眼を見張るものがあり、気分転換どころか、気分一新、新しいものに取り組む意欲が湧いてくるぐらい、アートとしてのインパクトが強かった。
展示会は地下三階の展示室で開催されていた。
エスカレーターを降りて最初に入った空間は大西康明という人の作品で、天井から垂れ下がった無数の黒い背着剤が引き落としてできた糸が垂れ下がり、それに白い和紙のうようなものが立体的に吊り下がっているという空間造形であった。
下から見ると白い洞穴の中を歩いているような雰囲気があり、上から見ると、水墨画の雨の景色を眺めているような錯覚にさらされる。
その奥行は凄いものがあり、最初の展示から度肝がぬかれてしまったのだ。
二番目の展示室にはパラモデルという作家の作品が床、壁、天井と展示され、しかも作品は現在もなお作り続けられているという様相で、これもまた異世界の面白さが広がる空間であった。
この人達の作品はトミーのプラレールのレールを巧みにつなぎあわせ、まるで植物の蔓が壁や床に纏わりついているように見せるアートなのだが、その生物的な生暖かさは、見ていて飽きない。
「これって心斎橋の美術館にも出てたんちゃうん?」
と声を上げたのは嫁さんであった。
昨年だったか、心斎橋にある大阪市立近代美術館準備室(旧出光美術館大阪)を訪れた時、大阪にまつわる様々なアートが展示されていたのだったが、その時に無数のトミカに握り寿司のレプリカを載せたアートが展示されていたのだが、それがこのパラモデルという人たちの作品であった。
私の嫁さんはこういう「ちょっと変わったアート」が気になるらしく、しっかりと覚えていて私をビックリさせたのであった。
このように様々な空間アートが展示されていたのだが、圧巻はクワクボリュウタという作家の《10番目の感傷》という作品だ。
「影絵ですから気をつけてください」
と美術館の案内の女性に促されて入った空間はしばし真っ暗。
しかし、床面を走るLEDライトをつけた模型の機関車が走りだすと、周囲の壁の風景が一変した。
Nゲージの期間者に取り付けられたLEDライトが、機関車の走るレールの周囲に置かれた模型の人形、まち針、たわし、洗濯ばさみ、逆さまにしたゴミ箱などの影を壁に投影する。
その投影された影は、まるで大都市に点在する巨大な建築物のような迫力で展示室全体を覆うのだ。
ゆっくりと走る機関車から投影されるLEDライトの影は、実物の影そっくりで、大画面で映画を観るより、その世界に魅了される。
連続して置かれた洗濯ばさみの影は橋梁に見え。
逆さまに置かれたゴミ箱は不気味な原発。
たわしは樹木。
まち針は標識。
などなど。
展示室から出てきた観客は暫し呆然。
私も嫁さんももちろん呆然としたのであった。
このアートイベント、12月中旬まで開催されており、入場料はたったの850円/人。
はっきり言って、必見なのであった。
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