膝の奥が痛い~膝蓋軟骨軟化症~その2

2014年11月02日 | 治療の話

前回は、「お腹の筋肉の働きの弱さ」が背景となって様々な故障に繋がって行くシナリオについてお話しました。

当然、今回のAさんの膝の故障もその延長だと言いたいわけです。

ということで、前回たどり着けなかったAさんの膝の話。

 

Aさんの膝を調べてみると、痛みの出どころは「膝蓋大腿関節」にあるようです。

名前を付ければ「膝蓋軟骨軟化症」となるでしょう。

この障害は、腿の骨(大腿骨)に対する脛の骨(脛骨)の向きが悪いことで

「膝蓋大腿関節」に摩擦が生じて傷が出来た状態をいいます。

 

上の絵の「膝蓋骨」と「大腿骨」の間が膝蓋大腿関節です。

この関節には膝蓋骨側(つまりお皿の裏)にクサビ状の出っ張りがあり、

大腿骨側にはそれを受けとめる溝があるんです。

←膝のお皿の裏側です。山になっているのがお解りいただけるでしょうか!?

←大腿骨側は谷になっているでしょう!?

 

また、四頭筋は骨盤と腿(大腿骨)から伸びて脛につながっている筋肉です。

 

ですので、腿に対して脛が外や内を向いてしまったままで曲げ伸ばしが繰り返されるようなことがあると

大腿骨の溝の片側への摩擦が高まってしまうために傷がついてしまう。

と、考えられています。

勿論私もそうだと考えていますが、プラスアルファの原因に大腿四頭筋の過緊張があると思うんです。

 

ちょっと寄り道をしますが、お聞きいただきたい。

 

私たちの筋肉は急に引き延ばされると反射的に縮みます。

これを伸張反射といい、そのトリガーが筋紡錘というセンサーです。

その筋紡錘は筋肉を「たわませた状態」で置いておくと感度が高くなり過ぎて、

ちょっとした刺激でも痙攣してしまったりと、過剰な反応をしてしまいやすくなります。

そうなると、本来であれば適宜力を抜いて引き伸ばされなきゃいけないようなシチュエーションでも

上手に力が抜くことができずに抵抗するように緊張を高めたりすることがあるんです。

 

それを踏まえて、「お腹」について考えてみましょう。

 

いい図が無いのですが、前回の体幹の図をみると

 ←左が異常・右が正常

左の腹部の緊張が低い側では骨盤がお辞儀をしているのが解ると思います。

四頭筋の中でも大腿直筋という筋は骨盤と脛をつないでいますので、

骨盤がお辞儀した状態では、通常よりも短い状態でバランスすることになります。

そう!

大腿直筋の筋紡錘の感度は高くなっているわけです。

 

また、この骨盤の位置から膝はグイッと伸ばされて

膝が逆に反ってしまう反張膝になってしまいがちなのですね。(女の子に多いですね。)

このとき四頭筋のなかでも大腿骨についている外側広筋・内側広筋・中間側広筋にも

通常よりも短い状態でバランスする状況が生じます。

そう!

外側広筋・内側広筋・中間側広筋の筋紡錘の感度も高くなっているわけです。

 

つまり、お腹が弱いことがめぐりめぐって四頭筋に「引き伸ばされることを拒む」お膳立てをしてしまっているわけです。

 

さらに、この姿勢では通常股関節後面の支えに使われるべき大臀筋が十分に働くことができません。

すると、俄然ハムストリングスが頑張りだします。

お気付き頂けるとおもいますが、ハムストリングスは脛に付き膝を曲げる働き(屈曲)を持っている筋肉です。

そう!

四頭筋とは働きが逆なんです。

膝を曲げるのを拒まんとする四頭筋に対して、より力強く膝を曲げようとハムは頑張るわけです。

つまり、双方の筋による綱引きが始まってしまうわけです。

そうなると膝のお皿の大腿骨への圧力が普段以上に高くなるでしょう!?

そこへきて脛の向きが外や内へと向き過ぎているとどうなるでしょう!?

膝蓋骨の裏側は楔のように山があり、対する大腿骨側にはそれを受ける谷があるわけで

綺麗に関節の山と谷が合わさっていたら、そうは問題とならないものの、

脛の向きが内や外を向き、山と谷ががずれてしまっていたりすると、

関節の一部にだけ強い摩擦が繰り返されるようになるわけです。

 

そうこうしている内に軟骨がすり減って「膝蓋軟骨軟化症」のでき上がり!

というわけです。

 

Aさんの場合高いヒールの靴で踊るので、膝へかかるテコは大きくなります。

そうした競技独特の環境も膝の怪我の要因の一つと考えられます。

 

ふうっ(-_-;)

疲れたな…

 

 

 

ということで、続きはまた後日!

 

お腹を鍛えることでAさんの膝はどうなるのか!?

私はAさんに何をどうしたのか!?

ねじれた脛の問題と反り込んだ膝の行方やいかに!

 

=つづく=

 


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