変形性股関節症のAさんは、あおむけで脚を持ち上げると股関節の前が痛むとご来院。
痛む場所から腸腰筋の大腿骨側の腱の故障のようでした。
図版引用:トラベル&サイモンズ トリガーポイントフリップチャート リッピンコットウィリアムス&ウィルキンス
幸い腫れている様子もなく、腰椎の変位置(いわゆる「歪み」ですね)からも、
腸腰筋の緊張が強すぎることで痛みにつながっているようだということがわかりました。
ここまでくれば、腸腰筋の緊張を取り去り、残るようなら腰椎へ手を入ればいい…
となりそうなもんですが、忘れちゃいけないのが痛くもかゆくもない拮抗筋側の問題です。
この場合の「拮抗筋」というのは、腸腰筋と反対の作用を持ち、
対をなして股関節を支えている筋肉のことなんですが、
関節や筋肉、神経(神経‐筋‐骨格系といいます)の故障を治療するときには
痛む側だけではなくて、反対側への配慮も大切なんです。
腸腰筋という筋肉は腿を前に振り出す働きを持つ筋肉です。
なので、反対の作用を持つ筋肉はお尻の筋肉と腿裏の筋肉となります。
詳細は省きますが、腸腰筋が過緊張に陥るケースでは、
腹筋(群)と大殿筋は働きが弱まっています。
代わりに頑張っているのが中殿筋や小殿筋、ハムストリングスあたりです。
これらの筋肉の緊張が強すぎると、股関節を曲げる動作を邪魔してしまいます。
つまり、曲げにくい関節を曲げるために、腸腰筋は余計な力を使い続けなくてはいけない環境に置かれているんですね。
そうした周囲の環境をそのままに、腸腰筋の緊張を解いても、すぐにまた同じ故障を起こしてしまいます。
なので私は、治療の際に拮抗側への配慮を忘れないようにしているんです。
Aさんの治療でも当然、拮抗側への手入れは怠りません。
治療後、無事に痛みも落ち着き、次回は2週間後となりました。
あとはお伝えしたセルフケアを続けてくれることを祈るのみです(^^)
=終わり=