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Pretenderの備忘録

教育の世紀

2005-01-28 10:41:48 | 読書
教育問題について、専門家の立場で、情緒的でなく発言されてこられた苅谷先生の新著である。
苅谷先生の著書は、現在は文庫に入っている「知的複眼思考法」を友人に薦められたのが最初であった。「大衆教育社会のゆくえ」、「教育改革の幻想」など、新書という読みやすい形への執筆が危機感を示していると思う。
今回は弘文堂の新しいシリーズで、ソフトカバーで注は多くないが、内容的にはかなり硬い。アメリカの教育の歴史を辿ることで、教育と社会とのかかわりという視点から教育の抱える問題点を指摘するものである。僕は専門家でないのでアメリカの話は新しいことばかりだった。専門家でもこの辺のことは注目されていないと著者は述べている。
3章プラスエピローグという構成だが、1章はアメリカの社会学者の思想的伝記みたいな感じで、正直読むのが大変だった。ただ、それが基盤となってあとの議論が生きてくるところが多い。学術的には特にそうだろう。
本屋でエピローグの日本の部分だけ立ち読みしてみる価値はある。非常に鋭い指摘がいくつかある。
ここでは処方箋は示されていない。何が問題かを現象面だけで捕らえると、対処療法になるが、現象面だけでなく奥深いところまで探っているのが素晴らしい。これから処方箋作成と実践という、長く、困難な作業を始めなければならないと思う。情緒的な議論、自主性に名を借りた怪しげな教育も闊歩する中で、自分たちの問題として考えていきたい。

コメント
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