水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

コツとカン(2)

2020年01月24日 | 学年だよりなど
2学年だより「コツとカン(2)」


 ものごとの「コツをつかむ」には、どうすればいいか。
 元ラグビー日本代表で、現在は神戸親和女子大学でスポーツ教育学を講じる平尾剛氏は、「コツをつかむ」という行為の中身を、「①触発化能力・②価値覚能力・③共鳴化能力・④図式化能力」の四つに分類して説明する。
 「①触発化能力」とは、バットにボールが当たった、タックルが入った、高い声が出たというような瞬間の「感じ」を意識化することだ。「動く感じを意図的にわかろうとする力」と言える。
 意識することによって、うまくいったときとそうでない時の違いが明らかになる。
 意識化できたそれぞれの「動き」の、どれがよくて、どれがよくないのか、その価値を評価できる力を「②価値覚能力」という。
 それによって、たまたまうまくいったのか、ねらってうまくいったのか、「からだとの対話」が可能になる。
 「③共鳴化能力」とは、「動きの流れがわかる」能力のことだ。
 たとえば、バスケットボールのシュートは、粗く分けても、助走、ボールを受け取る、重心移動、かまえる、ジャンプ、ボールを放つというような段階がある。それら一連の動作のリズム感を体がわかっているということだ。平尾氏は、これを音楽にたとえる。


 ~ 細分化された動きに必要なそれぞれのコツをつかむことで生成された動感が音符だとすれば、それにリズムやテンポを加えることで一つのメロディーになる。つまり、個別的な動きの動感を身につけるのは「五線譜に音符を書き込むこと」、一連の流れで動くというのは「その楽譜をもとに実際に奏でること」になり、この後者を共鳴化というのである。
 だからこそ個別的な動感がおおよそ芽生えたあとは、細かいことを考えずにやってみることが大切だ。「助走は勢いをつけるだけ……」「ロイター板には両脚でしっかりと……」「手は奥につかなくては……」なとと、頭の中で復唱しているだけではこの力は養われない。細かなコツを思い浮かべるのを一旦やめて、時間の流れに身を委ねる。自らのからだが動きたいままにまずはやってみるという態度が動感同士のつながり、つまり「動感メロディー」を生む。 (平尾剛『脱・筋トレ思考』ミシマ社) ~


 細分化した動きそれぞれは完成していなくても、流れの中でやってみるとうまくいくことがあるというのである。
 「④図式化能力」は、メロディーのような一連の動きを図式化し、「確かめ」ができる力を言う。
 人は無自覚なうちになんとなく「コツをつかんだ」という経験をすることがある。
 それは知らず識らずのうちに上記のような能力を発揮しているということだという。
 真面目に取り組んでいても動きそのものが身につかない人は①や②に問題がある。
 わかっているのにできない人は、③が欠けている。
 しばらく間をあけたらできなくなってしまうのは、④が足りない、というように分析できる。
 運動にかぎらず、いろんなことにあてはまりそうだ。
コメント
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