●記念登山
私が山をやっていた頃、
誕生日はいつも夏休みのシーズン中だったこともあって、山で迎えていた。
たとえば二十歳(はたち)の時は南アルプスの北岳、
三十路(みそじ)の時はこれまた南アルプスの聖岳。
最近は山をやめていたが、生誕半世紀の記念すべき時はやっぱり山に登りたい。
なぜなら”山”は自分のアイデンティティだから。
山に熱中しだした中学の時、友人に「山根から山を取ったら、根しか残らない」と言われていた。
●なら今回はどの山にするか。
残念ながら、山をやめていたので、日本アルプスはちとキツい。
それに最近は7月いっぱい仕事があるので、準備もできないし、日数も取れない。
でも、登る山には生誕半世紀にふさわしい”格”が必要。
日数も体力もさほど要求されず、日本アルプスの山岳に負けない格のある山といったらあんた、
”ニッポンイチの富士山”しかないではないか!
この世界的な名山こそ一生に一度の記念登山にふさわしい。
そういうわけで、場所は富士山に決定。
でも29日は帰京するのに精一杯。
その翌日出発というのもきつい。
31日出発にした。その方が山小屋も空いているので好都合。
●問題はルート。
山をアイデンティティにする者にとっての記念の富士登山なら、五合目までバス、
なんてことはせず、麓の登り口(0合目)から頂上をめざすべき(当然標高差日本一の登山と相成る)。
でも実は、右膝(おそらく靭帯)が登山のたびに痛くなり、
山をやめるきっかけとなった中央アルプス山行では、膝の痛みのために山の中で叫び声をあげたくらい(山々にこだました)。
そして今年の5月・6月の登山でも膝痛は毎回再発。
それが怖いので、やっぱ5合目までバスにする
さらに(この歳になっても)早起きが苦手なので、ゆっくり出発したい。
膝の痛みも怖い事もあって(山で歩行困難になるから)、標準的な8合目泊りではなく、それより一日目が楽な7合目泊りとしよう。
こんなの山をやっている人間の行程ではないが、意地だけはあってどうしても行きたい。
この楽な、半世紀どころか還暦向きの富士登山。
行ってきました。
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