※この記事は、2024年3月で閉鎖される私のサイトのページの転載です。
この記事は、気象予報士試験受験レベルで、一般の読者向けではありません。
収束の式 ・渦度の式
収束式=(u2-u1)/Δx+(v2-v1)/Δy 渦度式=(v2-v1)/Δxー(u2-u1)/Δy
x軸の値がu, y軸の値がv
この二つの式は、形がとても似ている。どうやらシンプルな収束の式から、概念的に込み入った「渦度」のアイデアが発見されたように思える。だからいっぺんに理解しよう。
まず前提
1.風は強さと方向を持ったベクトルである。
任意の風向の水平風(たとえば南西風)は、水平面を構成する2つの次元、東西方向(西風)成分と南北方向(南風)成分とに分解できる(右図)。
したがって、東西・南北両方向の成分(スカラー)の合成(ベクトル)によって任意の方向の水平風を表現できる。
これは山の滑昇流(斜めに上昇)が水平風と鉛直風との合成で表現できるのと同じ(ここからは、空気の鉛直成分は無視して、水平成分だけを話題にする)。
すなわち、水平風=東西成分+南北成分
そして、上の東西成分(スカラー)を西風成分、南北成分(スカラー)を南風成分で1方向的に表現する
すると、”南西の風”は西風成分と南風成分とが等しいスカラー量(線分の長さ)の風、”北北東の風”は負の西風(東風)成分より負の南風(北風)成分が2倍ほど大きい風と表現できる(上図のような三角形で作図してみて)。
2.風速とは空気の移動量であるから、二点間で測定された風速の差(違い)は、同じ空気がその二点を通る時間の変化量と解釈できる。
つまり空気の移動の加速・減速と考える。
風速差=加速・減速量
この前提を使って式を言葉に置き換えてみる。
●収束式
(u2-u1)/Δx+(v2-v1)/Δy
=任意空間(たとえば1km四方)における、東西二点間(Δx)の西風成分(u1,u2)の風速差+北南二点間(Δy)の南風成分(v1,v2)の風速差
但し、西風(空気の東への移動)成分の差は、時間差に対応しているから、引き算として風下の東点から風上の西点を引く。
南風(空気の北への移動)成分についても引き算として風下の北点から風上の南点を引く。
上の前提1・2より、
収束式=空間の任意の風向の風速差(変化量)。
引き算の結果、符号が+なら、方向はどうあれとにかく水平風速が増大(加速)している(→ →→)=発散
符号が-なら、水平風速が減少(減速)(→→ →)しており、空気はその分余分にたまり(収束)、鉛直方向に流れたとみなせる。
正が発散となるから、”発散の度合い”を計算している式なので、「発散式」という名称が適している。
●渦度式
(v2-v1)/Δxー(u2-u1)/Δy
こちらは概念的に一段込み入っている。
=任意空間における、東西二点間(Δx)の南風成分(v1,v2)の風速差ー北南二点間(Δy)の西風成分(u1,u2)の風速差
=西風成分を左(北)に曲げる強さー南風成分を右(東)に曲げる強さ
=右図右端の矢印の風—上端の矢印の風
=空間の任意の風向の風を左右に曲げる強さ。
あとはその左右の方向が符号で表現できればよい。
上式をξ=V-Uと記すと、 V>U(ともに正の時)、あるいはV<UであってもVが負なら、ξ(渦度)は正(反時計回り=低気圧性の回転)となる。
もちろんU=Vなら左に曲げる強さと右に曲げる強さが等しいので渦度ξ=0。
上の説明から、渦度式は何通りもの表現(北風成分を左に曲げる要素を使うとか)が可能であることがわかるが、上式であれば、収束式と同じベクトル構造で渦度が出せるメリットがある。
結局、収束は風速の変化であり、渦度は風向の変化を表現していることがわかる。
ということで、高層気象図などで示される”正の渦度の分布”は、低気圧性回転すなわち上昇流の分布を意味することになる。