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「制服捜査」佐々木謙、「検察捜査」中嶋博行
最近、佐々木譲の「制服捜査」と、中嶋博行の「検察捜査」を続けて読んだ。「制服捜査」の方は、派手な都会の大事件ではなく田舎の警察官が直面する田舎の事件を通して、まさに「現場の中の現場」で起きる事件が描かれている。私にはそれほど知識がないので、こうした視点が、非常に新しいジャンルなのか、すでに多くの作家によって開拓されてきているジャンルなのかは判らない。もしかすると、横山秀夫が事件の「現場」ではなく「管理部門」から事件を捉えるという手法で、新しい警察小説のジャンルを切り開いたと言われるように、この「制服捜査」という本も新しいジャンルを切り開きつつある作品という評価が可能なのかもしれない。
一方、中嶋博行の「検察捜査」は、新刊でも最近文庫化された本でもないが、読んでみてとにかく大変面白かった。事件を検察官の立場から追いかけるという手法は、ないことはないと思うが、少数派の存在だと思う。
ところで、「検察捜査」を読んで真っ先に思い出したのがTVドラマの傑作「HERO」である。近いうちに劇場版ができるらしいが、「HERO」は私がここ数年でみた多くのTVドラマの中でも傑出して面白かったドラマで、最近TVで放映された中井貴一共演のスペシャル版もこれまた期待を裏切らない面白さだった。司法試験に合格した人が、弁護士、裁判官、検察官の3つの中から選択して司法に携わっていくという仕組みのなかで、どちらかというと、社会正義のために奮闘する弁護士、厳正な審判を下す裁判官というイメージはあるのだが、検察官ということになると、弁護士や裁判官と同等の能力と司法に対する知識をもっているのにも関わらず、よくわからないというイメージがある。強いて言えば、汚職事件や疑獄事件などで「巨悪に立ち向かう特捜」のイメージか。イギリスの場合、刑事事件の原告は「女王陛下」ということなので、日本の検察官はイギリスで言えば「女王陛下」に相当する権威・権限を持っていて、尊敬を受ける存在なのだろうが、よくわからないというのが実態だと思う。そうした私のイメージを覆してくれたのが「HERO」というドラマだった。主人公木村拓也が「犯罪被害者を代弁できるのは検察官しかいない」「とてつもない権力をもっているからこそ謙虚にならなければいけない」と熱く語る、そのかっこよさで、それこそ私の中の検察官のイメージは200%以上アップした。
田舎の事件を現場の警察官が追うミステリー、検察官の立場から書かれたミステリー、いずれもまだ比較的新しいジャンルだと思うが、大きな展開を見せそうな気がする。検察官不足という現状のなかでは社会的には困ったことになってしまうかもしれないが、検察官出身のミステリー作家が輩出し、面白いジャンルを作ってくれないかと思ったりする。長い目で見れば、そうした作品が数多くでてきて「検察官」のイメージがアップすれば、検察官不足問題にも良い影響がでるのではないかとも思われる。「HERO」については、劇場版も良いが、TVドラマの新シリーズ、Season2の放映を心待ちにしたい。(「制服捜査」佐々木譲、新潮社、「検察捜査」中嶋博行、講談社文庫)
一方、中嶋博行の「検察捜査」は、新刊でも最近文庫化された本でもないが、読んでみてとにかく大変面白かった。事件を検察官の立場から追いかけるという手法は、ないことはないと思うが、少数派の存在だと思う。
ところで、「検察捜査」を読んで真っ先に思い出したのがTVドラマの傑作「HERO」である。近いうちに劇場版ができるらしいが、「HERO」は私がここ数年でみた多くのTVドラマの中でも傑出して面白かったドラマで、最近TVで放映された中井貴一共演のスペシャル版もこれまた期待を裏切らない面白さだった。司法試験に合格した人が、弁護士、裁判官、検察官の3つの中から選択して司法に携わっていくという仕組みのなかで、どちらかというと、社会正義のために奮闘する弁護士、厳正な審判を下す裁判官というイメージはあるのだが、検察官ということになると、弁護士や裁判官と同等の能力と司法に対する知識をもっているのにも関わらず、よくわからないというイメージがある。強いて言えば、汚職事件や疑獄事件などで「巨悪に立ち向かう特捜」のイメージか。イギリスの場合、刑事事件の原告は「女王陛下」ということなので、日本の検察官はイギリスで言えば「女王陛下」に相当する権威・権限を持っていて、尊敬を受ける存在なのだろうが、よくわからないというのが実態だと思う。そうした私のイメージを覆してくれたのが「HERO」というドラマだった。主人公木村拓也が「犯罪被害者を代弁できるのは検察官しかいない」「とてつもない権力をもっているからこそ謙虚にならなければいけない」と熱く語る、そのかっこよさで、それこそ私の中の検察官のイメージは200%以上アップした。
田舎の事件を現場の警察官が追うミステリー、検察官の立場から書かれたミステリー、いずれもまだ比較的新しいジャンルだと思うが、大きな展開を見せそうな気がする。検察官不足という現状のなかでは社会的には困ったことになってしまうかもしれないが、検察官出身のミステリー作家が輩出し、面白いジャンルを作ってくれないかと思ったりする。長い目で見れば、そうした作品が数多くでてきて「検察官」のイメージがアップすれば、検察官不足問題にも良い影響がでるのではないかとも思われる。「HERO」については、劇場版も良いが、TVドラマの新シリーズ、Season2の放映を心待ちにしたい。(「制服捜査」佐々木譲、新潮社、「検察捜査」中嶋博行、講談社文庫)
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