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どうで死ぬ身の一踊り 西村賢太

 書評誌で年間ベストワンに選ばれた本書。久しぶりで「私小説」を読んだ気がする。「私小説は日本独特のジャンル」ということを学校の授業で習ったのを覚えているが、この歳になって思うのは、こうした文章を小説だということ自体に無理があるのではないかということだ。あとがきをみると、この本の文章が書かれた時点で、書いた本人は「小説」として発表する気がなかったという。
 内容は、「藤澤清造」という不遇の作家の生き方と自分の境遇を重ね合わせた著者が、その作家の「全集」を発行する準備をする間の日常を綴ったもの。当初は小説として発表するつもりがなかったというだけに、「私小説」独特の赤裸々な著述振りだが、それ以上にその開き直った生き方・開き直った末のある意味ピュアな考え方に驚かされる。まさに「藤澤清造」が詠んだ句からきている題名通りの内容だ。(「どうで死ぬ身の一踊り」西村賢太、講談社文庫)
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