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トリダシ 本城雅人

作者の作品は「スカウトデイズ」「ミッドナイトジャーナル」に次いで3冊目だと思うが、いずれも、自分の知らない世界が克明に描かれていて大変面白かった。本書も、スポーツ新聞社で日々特ダネを追う記者たちの他紙や同僚とのしのぎを削る取材合戦の模様を克明に描いた一冊。とにかく、取材先やライバルたちの心を読みあう心理合戦、意表を突く権謀術策の数々に圧倒されながら読み終えた。登場人物たちの行動は、仁義無用の冷徹な騙しあいがあるかと思うと、大きな代償を払ってでも仁義を貫いたりで、よくは判らないが、まるでやくざ映画を見ているような気がしてくる。本書では主人公以外にも魅力的な登場人物がたくさんいて、話の面白さを引き立てている。登場する球団名などはもちろん架空の名前だが、どこをモデルにしているのかは素人にも一目瞭然だし、そのあたりはプロ野球について詳しい人にはさらに面白いのかもしれない。とにかく面白いの一言で、これはこれまでに読んだ著者の作品すべてに共通していることだ。取り上げる世界がかなり特殊なので大ヒットということにはならないかもしれないが、エンターテメント性に限れば当代一といっても良いような気がする。(「トリダシ」 本城雅人、文藝春秋社)

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