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八月の銀の雪 伊与原新

今年の本屋大賞ノミネート作品。著者の作品は3冊目。五つの作品が収録された短編集だが、どの作品も地球の内核の構造、クジラ、伝書鳩、珪藻といった生物の生態など、自然科学の知識が上手に盛り込まれたストーリーになっている。その自然科学の知識の使い方が本当に見事だしそれが理路整然と論理的に語られるので、もしかしたらと思って巻末の著者の略歴を確認したらやはり理科系出身だった。今、今年の本屋大賞のノミネート作品を読み進めているが、閉塞感や同調圧力に生きにくさを感じている若者の話が多い気がする。本書もそうした作品の一つだが、時間的にも空間的にもスケールが全く違う自然科学の知識を得ることによってなんだか救いや希望が見えてくる感覚は、この著者唯一無二のものだと思う。(「八月の銀の雪」 伊与原新、新潮社)
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