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この本を盗む者は 深緑野分

著者の本はこれで4冊目だが、毎回大きく印象が変わる。本書はこれまでとは趣がガラリと変わって夢ともうつつとも言いがたい不思議な感じのファンタジー小説で、強いて言うなら「不思議の国のアリス」に似た世界が展開されている。こうした一作毎に印象が変わる作家というのは、器用だから色々書けてしまうということなのか、自分の書きたいものを模索中ということなのか、色々なケースがあるだろうが、少なくとも個人的には、著者の緻密な描写力が生きるのは、本作のようなファンタジーではなく、これまでのような史実とリンクしたような作品だと思う。次の作品でどのような世界を見せてくれるのかに注目したい。(「この本を盗む者は」 深緑野分、角川書店)
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