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カナリア外来へようこそ 仙川環

色々な過敏症に苦しむ人々を扱った医療小説の短編連作集。本書では化学物質、低周波音、味覚過敏、光などに起因した苦しみに直面する5人の人があるクリニックを訪れることによって希望を見出していく。こうした人たちの苦しみは、周囲の無理解だけでなく、悪気のない思い込み、医療体制の未整備などによって増幅されてしまう。過剰反応がストレスによるものだと因果関係を取り違えるというのはその一例だし、解決策が見出せない中で民間の俗説を鵜呑みにしてしまうというのもありがちな話だ。本書の舞台となるクリニックの成立に関わる人物が主人公の短編があったり、ある短編の主人公が別の短編で重要な役割を果たしたりと、一編一編の面白さだけでなく、連作らしい繋がりがとても印象的な一冊だった。(「仙川環、角川文庫)
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