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5まで数える 松崎有理

先日読んだ「山手線が転生して加速器になりました」がめちゃくちゃ面白かったので、同じ著者の本をネットで探したら、本書が在庫ありだったので取り寄せて読んでみることにした。SF6編が収録された短編集だが、今回も全部大変面白かった。最初の「たとえわれ命死ぬとも」は、未だ電子顕微鏡がない時代の未知のウイルスと闘う科学者達の壮絶な物語。しかも動物実験が動物愛護の観点から事実上禁止という歴史改変要素が加わっていて、ウイルスの弱毒化や不活性化の研究には研究者のうちの誰かが実験台にならなければならないという究極の闘いだ。この作品が書かれたのはコロナ禍前の2016年とのことでまずこの作品の先見性にびっくりしたし、コロナウイルスの出現がもっと早ければコロナ禍の災禍はもっと大きかっただろうということが良く分かった気がする。2作目と3作目は、擬似科学と闘う3人の男たちの連作。検証困難、人々の無知につけ込んで不安を煽る似非科学とオカルトとの違い、魔術と奇術の違いなどを巧みに織り込んだストーリーは、本当にすごく面白かった。(「5まで数える」 松崎、筑摩書房)
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