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原爆裁判 山我浩

副題「アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子」とあるので、NHKドラマのモデルとなった初の女性裁判官三淵嘉子の伝記かと思ったがもっと多岐にわたる内容だった。アメリカの原爆開発の経緯(大量のウランをどのようにして入手したかなど)、原爆投下の意思決定過程(標的の決定など)、戦後のアメリカによる被害状況調査とそれに関する隠蔽工作などが描かれた後、いよいよ三淵嘉子の生涯、原爆裁判との関わりが述べられ、最後に三淵が主になってまとめたと言われる「原爆裁判判決文」の全文が掲載されている。原爆開発から投下に至るまでの経緯については、純度の高いウランを産出するコンゴに利権を持つベルギーの死の商人の話、投下に当たって事前通告なし、軍事施設でない都市部への使用、毒ガスや細菌兵器以上に非人道的な兵器使用の倫理的な問題が悉く無視された事情、降参目前だった日本にあえて使用した国際政治上の覇権争い、更には終戦後のアメリカによる被災地における残留放射能、死の灰の飛散の調査結果が隠蔽された事実などが語られる。巻末の判決文では、こうした状況を精査してアメリカによる原爆投下は明らかな国際法違反として断罪するが、原爆被害者である原告にアメリカを訴えることができるか、個人が国際法上の権利主体となりうるかなどを検討の上、被害者救済支援は日本国の政治によってなされるべき、それは司法の役割ではないとして訴えを棄却する。その後の日本政府の対応を見ていると、まだ十分ではないかもしれないがこの判決の果たした役割の大きさを感じることができたように思えた。(「原爆裁判」 山我浩、毎日ワンズ)
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