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バリ山行 松永K三蔵

芥川賞受賞作。書評誌に史上初の芥川賞直木賞同時受賞でもおかしくない大傑作だと絶賛されていたので読んでみた。中堅建物外装工事会社の営業マンの主人公が、社内の登山ハイキング行事をキッカケに、社内の同僚と正規のルートから逸脱する「バリエーション山行」を敢行し、次第にその魅力にはまっていくという内容。物語は主人公達の息詰まるような登山の描写が中心だが、それと並行して2人が勤める会社での古参社員の退職をキッカケとした経営不振、大手メーカーの下請け化への転身とそこからの出向社員の受け入れ、人員整理の噂といった経営危機の事情が語られていく。人生山あり谷ありと言ってしまえばそれまでだが、主人公は近くの平凡な山の難しいルートと対峙しながら、先行き不透明の不安とか、安全な道とは何かについて考えを巡らせていく。芥川賞受賞作の純文学なので、意表をつく展開とか謎はないが、臨場感あふれるドキドキの文章は読んでいてこれも立派なエンターテイメントだなと久し振りに感じた。(「バリ山行」 松永K三蔵、講談社)
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