書評、その他
Future Watch 書評、その他
ルームメイト 今邑彩
最近「今邑彩」という作家の本を本屋さんで良く見るようになった。よく行く本屋さんでは、作者の本を平積みにしてPOPを掲げていた。かなり昔に活躍したミステリー作家が最近のリバイバルブームで再評価されつつあるということらしいが、詳しいことはよく良く判らない。読んでみた感想としては、大変良くできたミステリーで、難しい設定を最後まで破綻なく物語として構築し終えているという印象を持った。1つ1つ、事件のほつれた糸が解かれていく様は、まさにミステリーの醍醐味だ。時間と場所を行き来させるような最近の凝った作りのミステリーにはないストレートな構成には大変好感が持てる。また最後のどんでん返しのどんでん返しの部分について、作者自身が「いやミス」と言っているが、もっと「いやな結末」が闊歩している最近の基準からすれば、それもかなりほほえましい。ただ1つ苦言を言うならば、細かい部分部分をみると特に不自然なところはないのだが、全体を通して考えると、何だか現実と乖離してしまっているような印象を持たざるを得ない部分がある気がする。(「ルームメイト」今邑彩、中公文庫)
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テリー・オライリー スティック NHL
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フランク・セルピコ 洋服 NY警察
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ルリボシカミキリの青 福岡伸一
エッセイ風の短文が数多く収められた本書は、普通のエッセイとして読んでももちろん面白いのだが、彼の文章のファンにとってはそれ以上の価値がある。1つ1つのエピソードが、生物というもの、あるいは生物学というものを深く考えさせる内容になっているし、特に、本書を読むと、著者の「動的均衡」という考え方がより深く多面的に見えてくるような気がしてくる。この本を読むことによって、これまでに読んだ彼の本によって知ることとなった彼の考え方が今まで以上にはっきり伝わってくる。彼独特のリリカルな文体も健在で、とにかく彼の本を読んでいるとめっぽう楽しい。変な話だが、彼の文章ならば、生物学の本でなくても、例えば書評とか何でもいいから、次の本を早く読みたいという気になる。要するに彼のファンは、生物学者である彼から何かを学びたいとか、生物学が面白いとかだけで読んでいるのでない。彼の人柄とか文体が好きで、とにかく純粋に彼の文章を読んでいたいのだと思う。なお、重さの違う球の落下スピードに関する思考実験の話は、本書で初めて知って、「なるほど」と感心した。著者がTVの「ようこそ先輩」で行った授業の話は、彼の「動的均衡」の考え方を知るための最高の短文だと思う。(「ルリボシカミキリの青」福岡伸一、文芸春秋社)
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グレツキー ナショナル 1998 NHL
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印象派の誕生 吉川節子
印象派に関する本は随分読んできたが、本書を読んで、こういう本があったら良いと思っていた理想をある部分実現してくれている最初の本に出会った気がした。絵画論を読んでよく思うのは、絵画に関する本というものはもっと絵そのものに依拠したものであるべきだということだ。実物の絵を目の前にして語ってもらうのが理想だがそれは難しい。そうであれば少なくとも、文章で語った部分はちゃんと口絵か挿図で見せて欲しい。これまでに読んだ絵画論の本の多くはその点が不満だった。本書はその点で、これまでに読んだどの本よりも読者への配慮が行き届いていた。読者の理解の助けになるのであれば同じ絵を2回挿入することも厭わず、同じ絵でも一部分を語っている時にはその部分のアップを改めてみせてくれるといった具合で、大変親切なのだ。その結果として、論旨は明確で説得力もあるし、いくつかの点で面白い発見もできた。例えば、マネの「鉄道」「バルコニー」に垣間見られる「近代化による人間関係の希薄化」というマネの特徴にはなるほどと思わせられたし、「印象派とは何か」という問いに自分なりの整理もかなりついたように思う。こういう、読者にとことん親切な本がもっと出てきて欲しい。(「印象派の誕生」吉川節子、中公新書)
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もし高校野球の‥ 岩崎夏海
今ベストセラーになっている本書。題名が語るとおり、高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を「女子マネージャー」の指南書と勘違いして読みだすところから始まり、それを自分なりに解釈しながら、弱小野球部を甲子園に導いていくというストーリーだ。ドラッカーといえば、30年以上前の話になるが、大学のゼミで「見えざる革命」等、彼の本を数冊を読んだ頃の事が思い出される。そのゼミの先生は現在では経営学の大家と呼ばれているが、当時は新進気鋭の若い経営学者だった。その先生がドラッカーの革新性について熱く語っておられたのが懐かしい。私が大学生だった頃が、晩年に差し掛かっていたとはいえ、まさにドラッカーが現在進行形で活躍していた時期で、彼の本は、刊行されたばかりの最新刊だった。この本で取り上げられている「マネジメント」もまさにそうした中の1冊だった。読んだといっても、何が有難いのか全く理解できなかったし、情けないことだがほとんど記憶にも残っておらず、私にとっては遠い過去にかすんだような本だが、本書を読み終えた今、「今それを読み返してみたら自分はどう読むのだろうか」「少しは何か感じることがあるのだろうか」という思いが募る。我々の少し上の世代である団塊の世代にとっても、自分が若かった頃、上司が読みふけっていた経営のカリスマの本にもう一度出会ったような郷愁があるのだろう。昔むかしに、ドラッカーの「マネジメント」を読んだ人が、もう一度それに会いたくて手にしている、それがこの本をベストセラーにしているのではないかと思われる。(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」岩崎夏海、ダイヤモンド社)
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グレツキー&リーチ パック NHL
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グレツキー POG NHL
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グレツキー 1982 TOPPS NHL
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グレツキー マクドナルド 1983 NHL
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エアライン敗戦 杉浦一機
先日読んだ「JAL崩壊」は内輪もの・暴露本だったが、この本は、世界の航空産業事情や日本の航空政策をオーソドックスに描いた解説本だ。話の中心は、世界の航空産業の勝ち組になりつつあるLCCと呼ばれる格安航空会社のビジネスモデルとはどのようなものか、それが日本に定着する可能性はあるのか、LCCの台頭とJALの崩壊がどのようにリンクしているのか、日本の航空産業に未来はあるか、といった問題を取り上げ、判り易く解説してくれている。途中でLCCと日本の航空会社のコスト構造の違いなどがグラフで示されているが、このグラフこそ、100のJALの内輪話を読むよりも雄弁にJALの破綻の理由を方っているように思われる。もう一つこの本を読んで判ることは、日本の航空産業の危機の原因を日本の航空政策の失敗ということで簡単には片付けられないということだ。結果的に失敗だったことは確かだが、日本航空政策もその時々の事情でやむを得ない部分があったこともよく判る。どこでボタンを掛け違えたのか、これからの教訓としては、それを解明することが大切なのだろう。(「エアライン敗戦」杉浦一機、中央公論新社)
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