山荘には衛星放送が入るTVがあった。
朝食の時間、夜間外で吹き荒れていた風の音は聞こえなくなっていたので、天候回復か?と期待したが、朝食後見たTVのデータ放送の気象レーダーが、実際はそうで無い事を物語っていた。
前線がもたらす雨雲が富山県上にあり、赤や黄色の雨量大の点々が厚く帯状に連なり、一目で大荒れである事が見て取れる。
降水予想は分母を覚えていないが6時が7mm、以降3時間置きに2mm、2mm、1mmと減って行く。
回復には向かっていくようだ。
部屋に戻ると同室の皆さん、それぞれで考えを決めて準備をしていた。
山荘に滞留する方、予定通り室堂へ向かう方、薬師岳への縦走予定を取りやめて室堂に帰る方。
室堂から来た方に話しを聞くと、室堂への道はそれ程難しい道ではないらしい。
気になったのはガイドブックに注意要と書かれていた鬼岳東斜面の雪渓トラバース。
そこについても特に問題ないとの事。
ふむ。
滞留するも勇気、出発するも勇気。
出発時間を遅らせて予定通り室堂方面へ、一ノ越山荘まで歩く事に覚悟を決めた。
2時間ばかり小屋で時間を潰し、先に出立する同室の方を見送り、しっかりと雨具を着込んで私も出発。
湿原は細かな雨の混じる濃いガスの下に沈み、見えない先行きの不安を抑えつつ木道を辿る。
ザラ峠への下り坂、稜線に出ると突然風が強くなる。
左から右へと白いガスがビョウビョウと音立ててすごい勢いで吹き抜けているのが見える。
こんな中を歩いて行くのか。
再び覚悟を新たにする。
風は初日、二日目の比ではなかった。
自分は台風が来た時、外に出たいと思う人間ではないので、暴風と言うものに初めて体をさらしたと思う。
背中のザックが体の表面積を増やしているので、油断すると足を取られる。
下界の台風の風は強弱があるが、稜線の風はほぼ一定である。
常に強風。
ザラ峠を過ぎ、獅子岳へ上り始める。
ハイマツと岩石の覆う斜面に、登山道はつづら折れにつけられている。
こんな天候の下、道を間違えてはしんどいことになるので、道しるべのマークまで来たらいちいち次のマークを確認してからそちらへ歩みを進めた。
登山道横にはハイマツが茂り、谷に吹き飛ばされる心配はないものの、足場の悪い所が無いでは無い。
時にしゃがんで暴風に耐え、難しい所は風がほんの少しでも弱まる瞬間を捉え、越える。
風を背後に受ける時は楽ができる。
急な斜面の上りを後ろからぐんぐん押してくれた。
カッパが強風にはためき、バタバタと鳴り続ける。
越中沢岳の南側斜面や北薬師岳辺りの道でなくて良かった。
あそこをこの強風下、歩く自信はない。
持ちうる限りの集中力と注意力、判断力を駆使し、必死にこの事態に対処した。
稜線の風はオンオフが激しい。
西側を歩いている時は上記の通りだが、道が稜線を越えて東側に移ると風がピタリと止む。
横につながる山体が盾になってくれ、風は上空へ吹き抜けて行くようだ。
地面近くは本当に無風である。
突然静寂の世界に包まれ、自身の忙しない呼吸音が唯一耳を騒がせる。
なので西側に移る時は再び気合を入れ直す必要があった。
覚悟を決めて境界を越えた。
獅子岳の山頂を越えてからは主に山の東側に道があり、ようやく一息ついて歩いた。
鬼岳への道は高山植物がたくさん花を咲かせていた。
今回の山行で楽しみにしていた場所の一つである。
晴れてたらなあ。
カメラはザックの中で取り出す気にはならず。
また、次の機会としよう。
懸案の鬼岳の雪渓は、通り道が整備され幅2~3m程水平な道が出来ており、なんの問題もなく通過できた。
ありがたやありがたや。
天候回復してきたのか鬼岳の北側に入った時、一時的に地表付近のガスが晴れ対岸の景色が目に入った。
垂直に切り立つ灰色の岩壁下に山道があった。
岩壁には異様な迫力があった。
うわ、こんなところ歩いてたの?
お天気いい日に山全体を見渡して歩いていたらそうは感じなかっただろうその眺めは、真っ白な世界に居続けた後、突然険しい部分だけ切り取り見せられたため、凄みを増してくれたのだろう。
浄土山南峰に着いた時には強風も収まり、一ノ越へのなだらかな道を下る。
どうやら無事歩き切る事が出来そうだ。
長い石壁のある一ノ越山荘に到着。
玄関を入ると見た顔が二人雨具を脱いでいる。
五色ヶ原山荘で同室だった方だった。
あはは、お互い無事で何よりです、と再会を喜んだ。
朝食の時間、夜間外で吹き荒れていた風の音は聞こえなくなっていたので、天候回復か?と期待したが、朝食後見たTVのデータ放送の気象レーダーが、実際はそうで無い事を物語っていた。
前線がもたらす雨雲が富山県上にあり、赤や黄色の雨量大の点々が厚く帯状に連なり、一目で大荒れである事が見て取れる。
降水予想は分母を覚えていないが6時が7mm、以降3時間置きに2mm、2mm、1mmと減って行く。
回復には向かっていくようだ。
部屋に戻ると同室の皆さん、それぞれで考えを決めて準備をしていた。
山荘に滞留する方、予定通り室堂へ向かう方、薬師岳への縦走予定を取りやめて室堂に帰る方。
室堂から来た方に話しを聞くと、室堂への道はそれ程難しい道ではないらしい。
気になったのはガイドブックに注意要と書かれていた鬼岳東斜面の雪渓トラバース。
そこについても特に問題ないとの事。
ふむ。
滞留するも勇気、出発するも勇気。
出発時間を遅らせて予定通り室堂方面へ、一ノ越山荘まで歩く事に覚悟を決めた。
2時間ばかり小屋で時間を潰し、先に出立する同室の方を見送り、しっかりと雨具を着込んで私も出発。
湿原は細かな雨の混じる濃いガスの下に沈み、見えない先行きの不安を抑えつつ木道を辿る。
ザラ峠への下り坂、稜線に出ると突然風が強くなる。
左から右へと白いガスがビョウビョウと音立ててすごい勢いで吹き抜けているのが見える。
こんな中を歩いて行くのか。
再び覚悟を新たにする。
風は初日、二日目の比ではなかった。
自分は台風が来た時、外に出たいと思う人間ではないので、暴風と言うものに初めて体をさらしたと思う。
背中のザックが体の表面積を増やしているので、油断すると足を取られる。
下界の台風の風は強弱があるが、稜線の風はほぼ一定である。
常に強風。
ザラ峠を過ぎ、獅子岳へ上り始める。
ハイマツと岩石の覆う斜面に、登山道はつづら折れにつけられている。
こんな天候の下、道を間違えてはしんどいことになるので、道しるべのマークまで来たらいちいち次のマークを確認してからそちらへ歩みを進めた。
登山道横にはハイマツが茂り、谷に吹き飛ばされる心配はないものの、足場の悪い所が無いでは無い。
時にしゃがんで暴風に耐え、難しい所は風がほんの少しでも弱まる瞬間を捉え、越える。
風を背後に受ける時は楽ができる。
急な斜面の上りを後ろからぐんぐん押してくれた。
カッパが強風にはためき、バタバタと鳴り続ける。
越中沢岳の南側斜面や北薬師岳辺りの道でなくて良かった。
あそこをこの強風下、歩く自信はない。
持ちうる限りの集中力と注意力、判断力を駆使し、必死にこの事態に対処した。
稜線の風はオンオフが激しい。
西側を歩いている時は上記の通りだが、道が稜線を越えて東側に移ると風がピタリと止む。
横につながる山体が盾になってくれ、風は上空へ吹き抜けて行くようだ。
地面近くは本当に無風である。
突然静寂の世界に包まれ、自身の忙しない呼吸音が唯一耳を騒がせる。
なので西側に移る時は再び気合を入れ直す必要があった。
覚悟を決めて境界を越えた。
獅子岳の山頂を越えてからは主に山の東側に道があり、ようやく一息ついて歩いた。
鬼岳への道は高山植物がたくさん花を咲かせていた。
今回の山行で楽しみにしていた場所の一つである。
晴れてたらなあ。
カメラはザックの中で取り出す気にはならず。
また、次の機会としよう。
懸案の鬼岳の雪渓は、通り道が整備され幅2~3m程水平な道が出来ており、なんの問題もなく通過できた。
ありがたやありがたや。
天候回復してきたのか鬼岳の北側に入った時、一時的に地表付近のガスが晴れ対岸の景色が目に入った。
垂直に切り立つ灰色の岩壁下に山道があった。
岩壁には異様な迫力があった。
うわ、こんなところ歩いてたの?
お天気いい日に山全体を見渡して歩いていたらそうは感じなかっただろうその眺めは、真っ白な世界に居続けた後、突然険しい部分だけ切り取り見せられたため、凄みを増してくれたのだろう。
浄土山南峰に着いた時には強風も収まり、一ノ越へのなだらかな道を下る。
どうやら無事歩き切る事が出来そうだ。
長い石壁のある一ノ越山荘に到着。
玄関を入ると見た顔が二人雨具を脱いでいる。
五色ヶ原山荘で同室だった方だった。
あはは、お互い無事で何よりです、と再会を喜んだ。
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