よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

何故FIFAは暴かれたのか (2) FIFAの中枢へ (ESPN報告書による)

2016年03月02日 | サッカー
チャック・ブレイザーが何故FIFAの中枢でダーティ・マネーを手にできたのか。恐らく、会計知識に詳しいこと(Accounting Degreeを持っている)と、金もうけの為なら次から次へと出てくるアイデアマンとしての素質によるものではないだろうか。

アメリカサッカー連盟時代に北中米のサッカー事情に精通していったブレイザーは、活動の場を中米に向けた。FIFA傘下にある6連盟のひとつ北中米カリブ海連盟(CONCACAF)は老害天国、即ち、役員は老人ばかりの、生ぬるい、緩い組織であった。この”オイシイ”環境に着目したブレイザーは、トリニダード・トバコのサッカー協会会長だったジャック・ワーナー(後にFIFA副会長となり、今回逮捕起訴された)を北中米カリブ海連盟の会長に担ぎ上げ、見事大差で当選させた。更に、連盟本部をブレイザーのお膝元マンハッタンへ移させたのである。ブレイザーはワーナーの片腕となり、念願の高級アパート、トランプ・タワーに住むことになる。

ブレイザーはCONCACAF選手権を儲かる仕組みに変える為に名称もGodlCupと改め、以後多大な収益を上げていく。その功績に報いるために、ジャック・ワーナーはブレイザーにビッグプレゼントを用意した。24人からなるFIFAの最高決定機関EXCOのメンバーに推挙したのである。こうしてFIFA内での地位を確保したブレイザーは、プーチン、マンデラ等、世界の大物と接点を持っていく。此のことが、やがて南アW杯、ロシアのW杯開催決定へと繋がっていく。

スポーツの団体役員というのは、歴史と伝統に加え、強い地域や国が牛耳っていく。ヨーロッパ中南米中心のFIFAの中枢に、普通ならマイナーなアメリカから加われるチャンスは少ない。その意味で、ブレイザーは唯一のアメリカ人として稀有な存在であろう。この男、持ち前のアイデアでFIFA中枢に深く静かに潜行していくのである。

EXCOのメンバーになったブレイザーは、FIFAにビジネス拡大のアイデアが枯渇していると見るや、6大陸選手権(コンフェデレーションカップ)や日本でもお馴染みなクラブワールドカップを矢継ぎ早に新ビジネスとして創設、成功に導いていく。こうした拡大の過程で、彼はFIFA内の重要メンバーの懐が個人的に潤うよう様々なアドバイスをするとともに、自身はダミー会社を通して私欲を肥やしていく。その元となるのは外部からのワイロであり、主要ゲームの開催国を決める度に、EXCOの有力メンバーにブレイザーが作った仕組みに沿って闇のお金が渡っていくことになる。

FIFAの中枢で破竹の勢いのブレイザーは2010年12月、FIFA本部での会長ブラッターのアナウンスを待っていた。2018年22年のW杯開催国決定のアナウンスである。2018年がロシアと発表され、ブレイザーは”予定通り”と微笑んだ。そして2022年。彼の予想、いや目論見に反し、カタールが宣言された。自国アメリカではない、何故だ?

これらのアナウンスをマンハッタンの一角でジッと観ていたグループがあった。アメリカ司法当局がFIFAに対して密かに狼煙を上げようとしていた。

何故FIFAは暴かれたのか (1) ブレイザーの台頭 (ESPN調査報告より)

2016年02月27日 | サッカー
昨年5月27日、アメリカ司法長官ロレッタ・リンチがIRSとFBIを従えた異例の会見でFIFAの関係者14人の起訴を発表、ほぼ同時刻にスイス司法当局がFIFA本部に家宅捜査に入ったニュースは世界を驚かした。この異例とも思える会見は事件の重大さとともに、捜査当局の執念のようなものを感じさせる。

世界最大のスポーツ団体には予てよりきな臭い噂は飛び交っていたが、この伏魔殿のような団体が下手な証拠を見せることは殆ど無く、誰もが手を付けられないと思っていた。とりわけお膝元のヨーロッパでは成す術が無かったのではないだろうか。そんな中、サッカースポーツでは二流とも言えるアメリカが何故FIFAを追い詰める事が出来たのか。まだ全容が解明されていない段階だが、ESPNが独自の調査で捜査、裁判所資料を入手し報告書を纏め上げた。何回かに分けてその内容を辿ってみたい。

チャック・ブレイザー。FIFA本部の役員にして、北中米サッカー連盟の事務局長を務めたNY生まれのこの男が居なかったら、FIFAの暴露劇は無かったであろうし、FIFAはこの先何年もの間、不正に塗れながら輝かしい表看板を上げ続けた事であろう。今回の暴露劇の主役である。

マンハッタンに近いクィーンズの労働者階級で生まれ育ったチャック・ブレイザーは、子供のサッカーコーチを通してアメリカにおけるサッカーの将来性を予感し、次第に地域のサッカー普及活動にのめり込んでいき、団体の重要ポストを占めるようになる。この事はアメリカサッカー連盟のトップと面識を持つことになり、その招致メンバーとして1994年のW杯アメリカ開催へ漕ぎつける。しかし、彼の短気でキレやすい性格の為、連盟を去ることになる。しかし、サッカー界での野心に燃えているブレイザーは、当時まだなかった男子プロリーグを立ち上げしようとするのだが、使い込みがばれて、クビになってしまう。ブレイザーのダーティな一コマが既にここで現れている。

アメリカで活動の場を失ったブレイザーだが、これで終わらなかった。

澤穂希よ、ご苦労さん

2015年12月17日 | サッカー
澤穂希が引退する。くしくも今年は、かつてライバルとして、その後同じチームメイトとして共に戦ったアメリカ女子サッカー界の主砲、アビー・ワンバックも引退を表明した。

アメリカ女子サッカー界は多くの卓抜したプレーヤーを輩出してきたが、その中でもレジェンドと呼ぶに相応しい3人のプレーヤーがいる。ミッシェル・エイカーズ、その後を引き継いだミア・ハム、そしてワンバックである。有体に言えば、パイオニアのエイカーズ、中興の祖のハム、そして後継者ワンバック、そういう位置づけではないだろうか。

その意味で言えば、澤穂希はまさにパイオニアであり、中興の祖である。人気先行でバブルの如き広がりを見せたJリーグの陰に隠れてマイナーな存在だった日本女子サッカーを日本のみならず、同時に世界に知らしめたのは澤のお陰である。

アメリカのスポーツ界に於いて独特の地位を築き活気溢れる女子サッカーの実情とは正反対の言葉を耳にしたのは2003年女子ワールドカップがアメリカで行われた時のこと。オハイオで日本対ドイツの予選ラウンドがあり、7時間かけて車をすっ飛ばした。たまたま座った席の横にアメリカ人と日本人妻のカップルがいた。旦那の里帰りとワールドカップ観戦を兼ねて来ていたサッカーファンである。その彼女が言った。「日本だとお客が来ないのよね、いつもガラガラ」。この頃の日本では女子サッカーはこの程度であった。

1999年、澤穂希が単身アメリカの土を踏まなかったら、強豪アメリカを制した2011年のワールドカップの優勝はなかったであろう。当時の女子サッカー界において誰も行かなかった海外武者修行に旅立ち、開拓者の道を選び、その夢を2011年に結実させたのである。

よし坊の耳には今でもアトランタのハーンドン・スタジアムでの選手紹介のアナウンスが残る。「No.8, Midfielder from Japan, Homa~~re Sawa!!!!」アメリカの女子プロサッカー元年の年、澤はアトランタのピッチに立った。アメリカの強豪プレーヤーのみならず、世界の各地からはせ参じたプレーヤーの中で小さな体を孤軍奮闘させていた。

アメリカに来て野球、バスケ、アメフトと言う三大スポーツ一色のアメリカスポーツに辟易していたよし坊には興味を引くようなスポーツは見当たらなかった。1994年のワールドカップがアメリカで開かれたにも関わらず、男子サッカーはパッとしなかった。ところがである。女子サッカーを調べてみると予想もしなかった人気度なのである。女子のプロリーグが無かったのでアピール力には欠けていたが、すそ野の広りはとてつもなかった。言わば、幼稚園から大学まで女子サッカーは超人気なのである。これは見方を変えないといけないな、と思っていたら女子プロサッカーリーグ誕生のニュースが駆け巡ったのだ。我が家は一気に女子サッカー観戦へとのめり込んでいった。澤がアトランタに来たこともあり、我が家は大いに楽しませてもらった。澤穂希に感謝しなければならない。

パイオニアとフォロワー。たくさんのフォロワーはいるが、パイオニアは一人しかいない。パイオニアがいたからこそ、その後にフォロワーが続くことが出来る。その意味では澤はレジェンドに相応しい。

澤の後を誰が引き継ぐのだろうか、そんなことを折に触れてワイフと議論することがある。残念ながら、我々のナデシコに対する予想はそれほど楽天的ではない。澤が大勝負を掛けたあの2011年がナデシコのピークだったのではないか。そんな気がする。

良き伴侶を得た今、澤には本当に”ご苦労さん”と言いたい。

キャプテンマークが泣いている

2015年06月21日 | サッカー
リーダーと名が付けば、我々はそれなりの人物像を持ち期待もする。スポーツの世界のキャプテンも典型的なリーダーで、概ね相応しい人が指名される。と言っても指名された時点で完璧なリーダーと言うのは少なく、器量とか将来性を買われての指名も多い。未熟であっても自覚と自己研磨で成長していけば、自他共に認められるリーダーに育っていくものだ。

先日、サッカーで立て続けに二つの不祥事があった。二つともレッドカードに加えて数試合の出場停止処分である。アメリカを代表するクリント・デンプシーとブラジルを代表するネイマールに起こった。

アメリカのナショナルチームのキャプテンでもあるデンプシーが、所属するクラブチームの試合で、主審の判定に腹を立てて、主審が落としたレフリーノートを拾いざま破り捨てると言う暴挙に及んだ。これで単なるレッドカードの話ではなくなった。審判に対する物理的かつ侮辱的攻撃及びその持ち物に損壊を与えた場合、ペナルティは重く、場合によっては数か月とかシーズンの出場停止となる。しかし、協会は3ゲーム出場禁止の処分とした。この軽い処分に対し、賛否を問うネット投票では半分以上が”軽すぎる”と判定している。協会の意図は明白で、これからロシアW杯に向け北中米選手権(Gold Cup)が始まるからだ。注目すべきは、ナショナルチームの監督クリンズマンがどう動くか。関係者の興味はそこにある。私生活の姿勢にも厳しいクリンズマンのことだから、これを機会のデンプシーのキャプテンマークを外す事を期待したいが、もし再びマークを付けさせる決定をするならば、クリンズマンの一貫性は完全に崩れてしまう。マイケル・ブラッドレーが復調した今、彼が最も相応しいだろう。

コパ・アメリカ(南米選手権)が始まり、宿敵の強豪ブラジルとコロンビアが激突した。大白熱戦の末1-0でコロンビアが勝ったのだが、フラストレーションの頂点にあったキャプテンのネイマールは終了と同時にボールを腹立たし気に蹴り、それがコロンビアの選手を直撃した。更にロッカールームへ行く途中、主審を待ちかまえ暴言を発したのが判明した。その暴言は「お前は(有名な)オレ様をイジクルことで有名になりたいんだろう」。驕り発言としか言いようがないが、協会は何よりも審判に対する侮辱発言を問題にした。そして重い4試合出場停止の処分を下した。事実上ネイマールの南米選手権は終わったのである。若干23歳にしてバルサで活躍しブラジルナショナルチームのキャプテンを務める。若いから大目に見てやれと言う意見も結構ある。しかし、ある専門家は若さではなく、彼のサッカー人生のアンバランスな成長過程が未熟さを生んでいるという。

天賦の才能を与えられたネイマールのサッカーはストリート・サッカーから生まれたと言われている。文字通り街角でボールを蹴りドリブルを磨く。サッカーにはレフリーが居ることなど頭にない。年と共に進化するサッカー技術は他の追随を許さなかったはずだ。ルール無し、審判無しでやりたい放題のサッカー、それがストリート・サッカーの本質だという。願わくば成長する過程で本来のサッカー教育が必要だったのだろうが、それが無かった。今でも彼に苦言を呈する人が居ないのではと言われている。

デンプシーもネイマールも自分の不甲斐なさに腹を立て、暴挙に及んだのだろうが、キャプテンマークを付ける者はそれを乗り越える資質を磨かねばならない。当分自らマークを辞退するくらいの気持ちが無いといけないだろう。

WWCが始まった

2015年06月10日 | サッカー
いよいよ女子ワールドカップが始まった。各グループの緒戦が終わり、次のステージへの展望がおぼろげながら見通せる試合であった。

強豪と言われる上位チームは順当勝ちしている。ドイツの大量得点は相手が弱すぎて参考にならない。観ていてかわいそうな位の実力差である。No2のアメリカは底力を感じさせる戦いぶりだ。スェーデンはナイジェリアと引き分けたが、最近のナイジェリアは強くなった。アフリカ勢は身体能力でも、特に足が速く、この試合でも随所にその速さを見せつけている。スェーデンには不本意な結果だがナイジェリアなら納得である。注目のフランスはイングランドと対戦、1-0で試合をものにした。前回大会で、「これは来るな」と思っていたが、予想通り実力を上げてきたフランスはパスワーク、レシーブ、攻撃のバランスが良いように見えた。日本を抜いて3位となっただけのことはある。ブラジルはコロンビア相手に手堅く勝った。後半は疲れで乱れたものの、やはり強い。マルタ、クリスチアーニ、ファビアーニに加え37歳のフォーミーガが健在である。今大会最年長ではないか。最初の一点をもぎ取ったのも彼女だ。

さて日本なでしこ。1-0で勝ったが物足りぬ。前半はまあまあだが後半はいただけない。特に澤が退いた後の全体の乱れ方はなんなんだろう。恐らく随所に見せる澤のポジショニングが今でも効いている証明なのだろう。逆に言うと、そのような選手が居ないことの証明でもある。その意味では澤と宮間のコンビは群を抜いている。澤が居ると宮間が思い切ってプレーが出来るから試合運びが生き生きとしてくる。以前からの大きな問題点は、パスワークだろう。前回大会優勝で「女バルサ」と持ち上げられてしまったが、その割にはパスの正確度にイマイチの感がある。決勝ラウンドには進出するだろうが、その先は可成り厳しい展開だろう。


観念したか、ブラッター

2015年06月03日 | サッカー
もう少し居座ると思っていたFIFA会長のブラッターが、昨日の緊急会見であっさり城を明け渡した。5選を勝利し、強気の発言をしたのが4日前である。時系列的には、この月曜日にニューヨーク・タイムスに2010年南アW杯に纏わる多額の買収資金の手紙が公表された直後だから、キッカケはこれだろうが、このことによって、ブラッターはアメリカの捜査が相当進んでいることを思い知らされたのではないか。

アメリカは南ア大会後、スキャンダル解明の捜査に乗り出した節がある。その為か2011年以降、ブラッターはFIFAの最重要マーケットであるアメリカに一度も足を踏み入れていないらしい。既に”危ない匂い”を嗅ぎ取り、成り行きがどうなるか注意深く見ていたのだろう。アメリカで捜査当局が接触すれば一気にスキャンダル化するからだ。

今回のスキャンダルも別の角度から見れば、「老害」の一言に尽きる。会長以下世界各地のヘッドは”くそジジイ”ばかりなのである。一般の会社も含め、長期政権の老害=腐敗 と言うのが過去から引き継がれている方程式である。

人間、褒められて怒る人は滅多にいない。これが続くと人間は勘違いする。勘違いから横柄になり殿様気分になり、脇が甘くなり、最後に墓穴を掘る。立派な人と言われてる御仁がこうして晩節を汚す。だから、存命中からその人を指して「立派な人」と言ってはいけない。その判断を下すのは、人生を全うしてからだろう。それまでは何が起こるか分からない。

5選直後のブラッターの勝利会見でスキャンダルの責任を取り辞任する気は無いか、との質問に彼はこう答えた。「何故辞任しなければならないのか。辞任するということは、私が悪いことをしたと認めることに他ならないではないか。だから辞任などしない」。それから4日後、彼は辞任した。

世紀のスキャンダル解明は始まったばかりである。

化け物FIFAに入ったメス

2015年06月02日 | サッカー
長年燻っていた伏魔殿のFIFA。この世界最大のスポーツ産業を牛耳る総本山にメスが入った。しかもアメリカが仕掛けたところが興味深い。

サッカーは昔からヨーロッパと南米(中米を含めてもよいかもしれない)の物、との認識が強いスポーツだから組織の中枢も彼らで占められている。世界のスポーツ大国を自認するアメリカの野球もアメフトも所詮アメリカ国内の域を出ず、世界の100か国以上に浸透するサッカーの前に地団太を踏み続けてきたことであろう。そのアメリカが準備よろしく、FIFA総会の直前で関係者の告発逮捕に踏み切った。

アメリカが動けた背景は、不正と思しき金の送金やマネーロンダリングがアメリカの銀行を通して行われたことが足掛りとも言える。米国税局にとって庭先で堂々と行われている不正送金には我慢出来なかったであろう。告発会見で司法長官、FBIと国税局のトップが顔を揃えたのも、「やるぞ」というメッセージであろう。

FIFA総会直前であったためか、会長選挙はブラッターの5選となったが、彼の任期中に腐敗が進んだわけだから、いずれその日がくるのではないか。何も関係ない、では済まされぬ話だ。既にFIFAのナンバー2の疑惑が明るみに出てきており、この先何が飛び出すか、興味津々である。

退潮著しいナデシコ・ジャパン

2015年03月09日 | サッカー
アルガルベ2015が始まっている。女子ワールドカップ前のチーム診断には格好の材料なので、久しぶりにナデシコの戦いぶりを観た。今日の第三戦目は世界ランク二位に躍進したフランス戦。見事に3-1で無様な負けを喫した。一言でいうと、「進化する世界で退潮著しいナデシコ」なのである。

あの、劇的な2011ワールドカップの優勝がナデシコのピークで、これからは下り坂一方になるだろう、と予想したのだが、どうも現実味を帯びてきた。残念ながら、6月に始まるワールドカップでは予選ラウンドは何とか通過するだろうが、多くは期待出来まい。

今日のフランス戦。ディフェンスの弱さもさることながら、全体のパスワークが全くなっていない。特に自陣内でのパスワークは不用意なミスを連発し、”パスワークのナデシコ”の片鱗もない。と言うより、技術的に退化しているかのようである。体力の無い日本人が、技術さえもおぼつかないとなれば、先行きは見えてくる。

今のナデシコの技術には進歩が無いか、退化している。引き換え、世界のチームはパスワークのレベルを上げてきていると考えるべきだろう。力とスピードを得意とする強豪たちがパスワークの精度を上げてきた結果、退化しつつあるナデシコでは、到底世界の上位とは戦えまい。現在、ランクを落として世界4位というが、ワールドカップ後には7-8位へ後退すると予想せざるをえない。

「かつてナデシコには奇跡があった」などとのみ語り継がれるのでは、なんとも寂しい限りである。

目標がさっぱり見えない日本のサッカー

2015年02月17日 | サッカー
男子日本代表がAFCで予想外の敗退を喫し、時同じくしてスペインでの八百長疑惑進展に伴いアギーレが辞任した。先のワールドカップ以後、アギーレを擁してロシア大会に向かったはずの日本は、思わぬ暗礁に乗り上げつつある。

AFC敗退後、本田が極めて重要な言葉を吐いた。曰く、「もっと格上の相手と試合をしたい」。彼は「武者修行」しないと日本は強くならない、と言っているのだ。武士(サムライ)の時代、全国の強き相手に挑み、腕と技を鍛え、一歩一歩高みの階段を上っていった武士の精神を日本人が受け継いでいるとしたら、武者修行の必要性はよく分かるはずだが、どうも現実はそうではないらしい。

以前のブログにも書いたのだが、過去の日本の国際マッチの対戦相手は、圧倒的に格下が多い。お隣の韓国でさえ、同等か格上の対戦が日本より多いのだ。今回のAFCカップの結果、韓国のFIFAランキングが日本より上になったが、この数年韓国は日本の後塵を拝していた。これをもって大方の人は、日本の実力は韓国より上と思っているだろうが、果たしてそうだろうか。よし坊にはそうは見えない。実力は韓国の方が上と見ている。特に勝負強さという点では文句なく韓国に軍配が上がる。格下のチームに勝つ度に新聞紙面には「日本は強い」というヨイショ記事が載り、負ければ「惜敗」などと、いかにも不運で負けたかのような記事となる。こんなぬるま湯の中でサポーターやファン達は”日本は強い”と言う幻想を抱き続ける。

アギーレの監督就任は、二つの点で大いに期待出来た。ひとつはワールドカップで固定された常連選手に拘らず、フレッシュな選抜を心掛けてロシアを目指すというロードマップ。もう一つは格上の対戦相手を増やすという点。当初の動き出しは良かったのだが、AFCカップでは”昔の名前で出ています”の歌の文句ではないが、殆どワールドカップ常連選手で固めた布陣で、お粗末な敗退となった。考えられるのは、スペインの八百長疑惑の一件で、アギーレの発言権が大幅に低下して協会の圧力が増した結果、アギーレが無難な布陣での保身に走ったのではないだろうか。

AFCカップ後に本田が吐いた「格上と試合を」の一言は、アギーレが辞めることを予想して、協会に送ったメッセージなのかも知れない。そうだとしたら、協会の幹部は真摯にその声を吸い上げるべきではないか。それが出来なければ再生は難しいだろう。いっその事、ロシアへの出場権をかけた予選ラウンドで敗退し、切符を棒に振った方が良いかもしれない。


香川慎二の去就報道に見るニュースの裏

2014年08月27日 | サッカー
いよいよ8月の移籍期限が迫ってきたところで、一昨日マンUの監督から香川の去就についてのコメントでありヒントが流され、日本でも一斉に報じれた。

ニュースというのはよくよく注意して読まないといけない。特に日本の報道の連中は、海外の話題となると出来るだけ”いい情報”を流し読者に大いなる誤解を植え付ける。今回の香川報道に関しても同じだ。

今回の日本のファン・ハール監督のコメントはこうだ。「香川はアメリカ遠征試合において、私のサッカー(=ポジションのこと)に対する私の思いと哲学を満足させることが出来なかった」として、どちらかというと「頑張ったが私を満足するところまで行かなかった」というようなニュアンスの伝え方であろう。しかし、実際のファン・ハールの言葉を読むと、言葉の裏にバトルがあったことをうかがわせる。

Kagawa did not wish to fulfill my wishs and phylosophy. 「香川は私の思いと哲学を満たそうと努力する意志が無かった」と言っているのである。それを裏付けるように他の英文ニュースにはKagawa falls out with Louis Van Gaalの表現で、ストレートに言えば、喧嘩別れしたと報じている。

香川がドルトムントでの成功を背景にトップ下のポジションに固執するのは決して悪いことではないが、客観的に置かれた状況を見れば、どう逆立ちしても無理なのがよく分かる。加えて惨憺たる実績に終わったことは、最早居場所が無いことは早い段階で明らかだったはず。そして、アメリカ遠征での唯一の可能性のあるボランチのポジションを試されたのだが、この段階で決定的になったのだろうと推測される。香川が一生懸命プレーしたかどうかは分からないが、ファン・ハールの目には唯一可能性のあるポジションに対して、やる気無しと判断した瞬間であろう。

鶏頭となるとも、牛後となるなかれ、である。