よし坊のあっちこっち

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映画三昧 ー 映画と私(4)ATG

2021年11月18日 | 映画
高校時代からはまったのがATGだった。日本の洋画専門館で公開される外国映画は、当然のことながら有名俳優が出ているヒット作が中心だった。特に日本では米英の映画以外にもヨーロッパ映画が数多く上映された。フランス映画ではアラン・ドロン、ジャン・ポール・ベルモント、ジャンヌ・モロー、シモーヌ・シニョレなど。イタリア映画ではマルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレンなどが積極的に上映された。

ヒット重視のこれら外国映画とは異なり、新宿にあったATGでは、商業ヒットには結びつかないが、映画芸術的に優れた作品を厳選して一部のファンに提供していた。よし坊が映画芸術を理解しているわけではないのだが、映画好きとしてのめり込んだものだった。

筆頭に挙げるのは、スェーデン、と言えばイングマール・ベルイマンの作品だろう。ベルイマン作品は当時の高校生にとっては”難解”である。宗教がからみ、男と女の性(さが)、近親相姦、同性愛などが頻繁に出てきた。腕組みをしながら観、帰りがけに買ったカタログで、もう一度あらすじをおさらいする。そんな映画だった。第七の封印、野いちご、鏡の中にある如く、処女の泉、そして沈黙。

それ以外ではイレーネ・パパスのエレクトラ、アラン・レネ監督の去年マリエンバードで、そして戦争の傷跡を扱ったアリダ・バリ主演のかくも長き不在が懐かしい。日本映画では三島由紀夫の憂国が強く印象に残る。

当時の日本はアメリカ映画だけでなく、ヨーロッパ映画も数多く観れる、大変便利な国だったように思う。いい時代だった。




世紀の出資金詐欺事件ーバーニー・メイドフ事件

2021年11月04日 | アメリカ通信
詐欺という犯罪、何故騙されるのか。要素のひとつに相手の知名度やステータスが上げられる。有名女優が宣伝してるから安心、とか あれだけ高名の人だからまさか騙さないだろう、とか。これが大きな落とし穴である。逆に言えば、詐欺を働くなら有名人の自称”友達”になり知名度を上げるのが近道となる。

2008年に発覚した、米国市場最大の投資詐欺事件もその類である。概要はナスダック証券取引所のトップをも務め金融界で名を馳せていたバーニー・メイドフが何と被害総額500億ドルに達する投資詐欺(Ponzi scheme)を行っていた。リタイアして悠々自適の生活をしていた人達も、瀟洒な邸宅を売り払い小さなアパート暮らしを強いられることになった。メイドフは逮捕、起訴され獄中で首を吊ったが、その前に長男は父親を恥じてか自殺している。

多くの重大事件の影にUnsung Heroがいるが、この事件も、ひとりの自称”数学オタク”がいなかったら、被害者はもっと増えていた。
大学で経営学を学び金融業界に身と投じたハリー・マーコポロスがボストンの会社にいた1999年のある日、当時話題をさらっていたメイドフの投資ビジネスにうさん臭さを感じていたマーコポロスに、上司がメイドフのビジネスをシミュレーションしてみてはどうか、と提案したのがすべての始まりとなる。

ビジネスで動くお金は会計処理されるが、単純な数学でもある。粉飾決算がばれるのは単純に足し算引き算の答えが合わないからである。合わない部分には必ず作為が存在するというわけだ。マーコポロスはあらゆる要素を組み合わせてメイドフの投資商品の考えられないハイリターンの仕組みを解明しようとしたが、出るべき方程式が出てこない。出した結論は投資詐欺であった。

彼は数字に裏付けされた調査記録をもとに、SEC(米国証券取引委員会)に対し2000年に告発を行ったが一笑に付された。それでも諦めず、合計5回の告発を経て2008年漸くSECと司直が動き、メイドフ逮捕に繋がったのである。
マーコポロスがいみじくも言っているように、優秀な弁護士や会計士を抱えているにも関わらずSECは度重なる告発に対し何も手を付けなかった、と嘆いている。メイドフの知名度のもとに”そんなはずはない”で片づけて被害を増大させた当時のSECの責任は極めて大きい。