よし坊のあっちこっち

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サッカーUSA(完) ー 世界に羽ばたくために

2013年07月31日 | サッカー
名のあるチームはすべからく”サッカースタイル”を持っている、とクリンズマンは言う。より攻撃的なサッカーをやるのか、それとも、相手の仕掛ける攻撃に上手に反応しながら、辛抱強く相手のワン・ミスを待ち一気呵成にケリをつけるスタイルをとるのか。ブラジル、アルゼンチンやイタリアはこのスタイルを取っている。或いは、スペインやバルサのように、パスワークを駆使して相手を翻弄し、シュートチャンスを作るスタイルで世界のトップに君臨しているチームもある。これらのスタイルを確立する為には、一朝一夕で出来るはずもなく、長く弛まぬ練習が不可欠で、バルサが今日のスタイルを確立するには20年を要したという。

アメリカのサッカースタイルは何かと聞かれて、答えられるアメリカ人はいない。皆目分からないし、又、サッカースタイルを確立しようという動きそのものも今まで無かったように思われる。ドイツサッカーが、中々世界に羽ばたけず、ジレンマを抱えている最中の2003年、クリンズマンがナショナルチームのコーチ(監督)に就任した。彼は、サッカースタイルの変更を断行した。攻撃的サッカーに舵を切り、2006年のワールドカップでは決勝戦こそ逃したが、3位となり、以後このスタイルが定着し今日に至っている。アメリカにふさわしいスタイルは何か。人がやらない事をやりたがるアメリカ人気質を利用して、アメリカ独自のサッカースタイルは出来ないか。そんな観点からクリンズマンはアメリカサッカーの将来を見つめている。

次にアメリカが乗り越えなければならない課題は、練習量、試合量の不足である。世界と戦うには、あまりにも楽な量で満足していると、クリンズマンの目には映る。アメリカサッカーのスーパースターと言われるランドン・ドノバン。彼は昨年のシーズン終了後に充電と称して長期のサバティカル休暇を取った。クリンズマンがこれに首を傾げたのは言うまでもない。アメリカ国内だけで考えるならそれも良いだろうが、事は世界が相手である。

世界の強豪達は小さい頃からボールと戯れ、肌で感じるサッカーを体験してくる。アメリカの女子サッカーが強いのは4歳頃からサッカークラブに入れてボールに馴染ませるからであろう。その土壌が男子サッカーでは出来無い。世界と同じ事が出来無いなら別の手段を講じるしかない。クリンズマンはその活路をユースサッカーのレベルでのプログラムの充実に求めようとしているようだ。

クリンズマンの夢が実現するかどうかは未知数だ。しかし、外国人コーチでありながら、ここまでアメリカサッカー全体の底上げに尽力しようとするクリンズマンを迎えたアメリカはラッキーであり、選手はそれに応えないといけないだろう。

サッカーUSA(3) クリンズマンの見たアメリカの特異性

2013年07月23日 | サッカー
アメリカの世界ランキングは概ね20位台から30位台をウロウロしている。日本が30位台から40位台の実力だから、アメリカはちょっとだけ日本より上ということになる。とどのつまり、似たり寄ったりである。なかなか、世界の舞台でインパクトを与えるところまで行かない。この辺がFIFAが苛立つところである。

アメリカサッカー界が、そしてクリンズマンが目指そうとしているのは、世界ランキングで言えば、トップ10、ワールドカップで言えば8強、さらには、4強の一画として準決勝の常連になることだろう。もちろん容易いことではない。そこをあえてクリンズマンは挑戦しようとしている。さて、どこから手をつけるのか。

長くアメリカに住み、地元のクラブやスポーツ界と接触しながらクリンズマンは基点となるアメリカの特異性を見出している。一言でいうと「文化の違い」である。アメリカ人は、他人が創造したものへの反応は極めて鈍く、あまり興味を示さない。他人任せが嫌いだから、自分でやらないと気がすまない。他人が手を付け世界に広まったものには目をくれないのだ。そう考えると、プロ野球やプロバスケットが盛んなのがよく理解出来る。そしてアメリカン・フットボール。大英帝国からの独立を勝ち取ったアメリカにしてみたら、ヨーロッパから来たサッカーには最初から拒否反応があったのかもしれない。

この特異性をベースにスポーツ大国アメリカは発展してきた。従ってサッカーも当然その影響を受けている。3大メジャースポーツと言われるアメフト、野球、バスケ共シーズンは約半年。あとの半年ゃ寝て暮らす、というわけだ。アメリカのメジャーリーグサッカーは半年よりは長く、8ヶ月だが、ヨーロッパの10ヶ月と比べれば2ヶ月も短い。更に、シーズン期間がアメリカとそれ以外の世界では全く異なる。FIFAは世界標準とも言える8月ー5月のシーズンを再三要求しているが、アメリカは3月ー10月の線を崩そうとはしない。FIFAにとってはカチンとくるアメリカ人の自己中心主義なのである。

クリンズマンは、この基点となるアメリカの特異性をまず理解し、その上でアメリカのサッカーをどの方向に導いていこうか模索しているようだ。

よし坊は糞害に大いに憤慨するのだ

2013年07月17日 | いろいろ
かつて5年程住んだことがある、あの大阪泉佐野市で、犬糞不始末の飼い主に罰金を課す条例を施行した市長が、今度はペット全般で、適正な飼育がなされない場合、悪質飼い主の氏名公表を含めた罰則条例を検討していると聞いて、拍手喝采である。この手の条例はどんどん施行して欲しいものだ。

およそ、自分のペットの糞始末が出来ないなら飼うな、と言いたい。被害者にとっては迷惑千万である。

アメリカでは、ペットの犬のことを、Man's Best Friendなどと言っている。確かに盲導犬のように役に立っている部分はあるが、果たして人間にとっての”最良の友”と言えるのか。理解出来無い。たまに、人間に噛み付き、大問題となる。以前、アメリカの西海岸のどこかで、女性が犬に襲われ死亡した。飼い主は弁護士夫婦だったと思うが、夫婦とも有罪判決を受けて服役した。昔、弟が小学校1-2年の時、三軒向こうの仲良しの家で目の下から頬にかけて犬に引っ掻かれ大騒ぎになったことがあった。目をやられていたらと思うとゾッとする。

よし坊のサブディビジョンでも犬を飼っている家が多く、朝と言わず夕方と言わず散歩させている。飼い主に三種類居る。糞処理用のビニール袋を持って散歩させ、糞をしたら取る人。袋は持っているが、それは見せ袋で、いかにも「私は糞を取りますよ」とアピールしているだけで、その実、糞をしても取らない。こういう人間はきっと、狡猾な人間なのだろう。最悪は袋など最初から持っておらず、堂々と糞をさせ、ケロッとしている人。この手はルールを守らない連中だから、きっと会社でもその片鱗が出ている人種に違いない。

昔、ジム・キャリーのコメディで、冒頭のシーンにこんなのがあった。隣の犬がこっちの庭先で糞をした。その仕返しに彼は隣の庭先に自らの糞を残す。その心情、大納得である。

アメリカを支える外国人(永住者、合法滞在者達)

2013年07月14日 | アメリカ通信
アメリカは移民の国だから、移民政策は極めて重要である。日頃、この関連でニュースとなって我々の目にとまり、耳に入るのは、“不法滞在者を追い出せ”とか“移民をもっと制限しろ”等、一連の不法滞在者排除キャンペーンである。しかし、法を楯にした移民監督当局の懸命の排除努力にもかかわらず、依然として不法滞在者が減らないのが現実だ。

今アメリカは、新しい移民政策の中で、ふたつ重要案件を検討している。H1-Bビザ増枠と、不法滞在者の一部合法化である。

H1-Bは毎年一定枠があり、マイクロソフト等のハイテク産業を中心に優秀な外国人を支援して雇用しているが、現状枠では足りないようだ。AFL-CIOはアメリカ市民だけで数は足りているはずだと議論を吹っかけているが、企業側からすると、単なる員数合わせが問題ではなく、教育及びスキルが一定レベル以上の人材を前提にすると、大学を出たアメリカ市民だけでは全く足りないという。そこで頼るのはH1-Bとなるが、枠不足に陥っている。しかも、必ずしも永住権に有利に繋がる保証があるわけではないので不安定さは否めない。お隣カナダはその点を突いて、謂わば永住権前提の就労ビザ発行で人材を積極的に呼び込もうとしている。これは大変、とアメリカ議会はビザ枠を85千から110千(状況次第で最大180千)まで引き上げようかと考えている。因みに、マイクロソフトは6300のジョブが有りながら適格者がおらず、ポジションが埋まらないと言う。

もうひとつの案件は、不法滞在者の合法化である。一定の条件が整えば合法滞在とする措置で、法制化されれば約1100万人の合法滞在者が生まれることになる。アメリカ市民の職を奪うのか、という反対の声も相変わらず強いが、実は、今まであまり知られていなかった事実がこの法案を後押ししている。

ハーバード・メディカル・スクールが2002年から2009年のMedicare Fund(アメリカの医療制度資金)の実態を調査したところ、この間に移住者達が給与からMedicareに払い込んだ額は彼らがMedicareで使用した額より1150億ドルも多かった言う。つまり、アメリカ市民は彼ら移住者達の貢献分の恩恵に浴している事になる。しかも、ベビーブーマー大量リタイア時代を迎え、今後は彼らがMedicare資金の大口使用者になる一方、アメリカ市民のMedicare資金への払込比率は益々減少していく。裏で資金を支えていく重要なグループが、働き盛りの外国人移住者になると言う構図だ。

サッカーUSA (2) クリンズマンの登場

2013年07月06日 | サッカー
ワールドカップ2010。ボブ・ブラッドレー率いるアメリカチームは決勝ラウンドに進出するも、その緒戦で対戦相手のガーナに敗れ、次にコマを進めることは出来なかった(因みに日本も同じように決勝ラウンドに進出したが緒戦のパラグアイにPKで敗れている)。

決勝ラウンド進出もあって、アメリカは引き続きボブ・ブラッドレーで次のブラジル大会を目指すことになったが、翌2011年のCONCACAFゴールドカップで、宿敵メキシコとの決勝戦で敗れたことによって、ブラッドレーへの辞任圧力が高まり、チームを去った。こうしてクリンズマンが登場する。

ユルゲン・クリンズマン。1990年のワールドカップ・イタリアでドイツ(当時西ドイツ)優勝の立役者となった、ドイツサッカー界のスーパースターの一人である。インター・ミラン、バイエルン・ミュンヘン、トットナム・ホットスパー等の有力クラブを渡り歩き、2004年には母国ドイツの代表チームのコーチに就任、そして2006年のワールドカップ・ドイツ大会ではドイツ代表チームを率いて3位につけた。その後、2008年からの一年間、バイエルン・ミュンヘンで采配を振るった後、ヨーロッパのサッカーシーンから姿を消すのだが、実は、クリンズマンのニュースはその遥か以前からアメリカのサッカー界で話題に登っていた。

クリンズマンはアメリカ人と结婚し、約15年前からアメリカに居を構えている。従って、ヨーロッパで活躍中は、アメリカとヨーロッパの往復していた。本格的にアメリカに落ち着いたのはバイエルン・ミュンヘン采配後のことである。この間、彼はいろいろな角度からアメリカのサッカーを見聞きし分析をしてきた。そのためもあってか、ボブ・ブラッドレーが辞める前の数年、事あるごとにアメリカ代表チームのコーチ(監督)候補にクリンズマンの名前が取り沙汰されたが、クリンズマンは時期尚早と首を縦にしなかった。

2011年、アメリカサッカー協会がボブ・ブラッドレーの後任にクリンズマンを指名した意義は大きい。新聞の見出し風に言えば、「初めてのワールドカップ優勝経験者(選手として)の代表コーチ就任」となろうが、サッカー協会が重視したのは、クリンズマンが主流のヨーロッパサッカーの環境とアメリカサッカーの環境の違いを熟知しており、その上で、アメリカのサッカーはどうあるべきか、という将来に向けての明確な思想を持っている点であろう。今までのコーチに思想やビジョンが全く無かったわけではないが、クリンズマンのそれは多分に将来を見据えての教育的観点からの発想と実践が多い。この点が、クラブチームのコーチにありがちな、任されたシーズンをいかに勝つか、だけのリーダーとは異なる。

余談であるが、日本の代表監督にザッカローニが就任したが、およそ、ナショナルチームのコーチ(監督)を選ぶ際、クラブチームのコーチ(監督)経験のみの者は避けるべきで、この点日本は間違いを犯したと思っている。ナショナルチームのリーダーは、勝つことも求められるが、加えて教育的でなければならないからだ。ザッカローニにはナショナルチームの監督は日本が初めてなのである。その点、病半ばで交代したオシムは残念である。

話は戻るが、クリンズマンが目指すものは何だろうか。時あたかも、明日日曜日から北中米注目のゴールドカップが始まるが、クリンズマンはアメリカサッカーの何かを変えようとしているのは間違いない。次項で、クリンズマンの思想とチャレンジに触れてみたい。