キス(鱚)・シロギス
キスの酢の物
【語源】
その昔、将軍は朝食に好んでキスを食べたと言われています。
その理由は、漢字で書くと魚辺に喜ぶと書き、おめでたい魚と
されていたからだとか・・・
キスの「キ」は「生(キ)」であり、混じりけのないすがすがしい
魚であることをあらわしているようです。
しかし、魚辺に「生」と書く漢字は、鮭(サケ)の古い当て字に
なっていた為、同じ「キ」と読む「喜」の字があてられたとか・・
キスのみりん干し
【旬】
キスの旬は文句なく夏です。
夏の代表的料理・・・天ぷらには欠かせない食材です。
昔から海のキス釣りと川のアユ釣りは初夏の風物詩となっています。
一般的にキスと呼ばれているのはシロギスのことで、スズキ目キス科
に分類されます。
世界には30種ほどいますが、日本には他にアオギス、モトギス、
ホシギスの3種が分布しています。
【うんちく】
キスの産卵期は6~9月頃で、石鯛と同様に一尾の雌が数回にわたっ
て産卵します。
ふ化した子供達は透き通ったシラス型。5mより浅い岸近くで表層生
活をおくります。
3cm程度になると、体色も黄色味を帯びてキスらしくなります。
底から1㍍程の底層を群れて泳ぎます。
秋になると7~8cmになり、ほぼ成魚と同じ生活に入り10~50匹
の群で海底すれすれの所をかなりの速さで泳ぐようになり、水温が下
がるにつれて深場に落ちて行きます。
キスは平和主義者です。武器もありません。しかし、視覚と聴覚が
非常に発達しているのです。
敵が迫るともう必死に逃げまわります。泳いで逃げるだけではなく、
危険を察知すると砂にもぐって口だけ出したりします。
キスの天ぷら
【疫病神とキス】
寛政2年、江戸八丁堀に釣船を稼業とする、清次が自分で釣ったキス
を築地に運ぶ時、船上で「馬鹿にいいキスだね、一匹くれないか」と
声をかけられた。
驚いて恐る恐る差し出すと「私は疫病神だが、お前は良い人間だから
お前さんの名前を書いて門口に貼ってある家には決して入らない事に
するよ」と言ってスーと姿を消したとか。
それから「釣船清次に名前をかいてもらうと疫病神除けとなる」と
いう噂が江戸中に広がりました。
お上もこれは捨てておかれぬと、この件につきお調べになりました。
その翌年、当時「疫病神」と言う神出鬼没の大怪盗が、悪運つきて
「御用」となったとか・・・・
その疫病神、実は大怪盗の親分だったのか?本当の疫病神だったの
か?今となってはわかりませんが・・・・
【ブランド・産地】
相模湾、常磐、房州が主産地。ブランド化はされていないようです。
キスの昆布〆にぎり寿司
【産地ならではの漁師料理】
銀色の美しい姿は「海の鮎(アユ)」と、呼ばれます。
味も、繊細かつ、上品。しかし、鮮度が落ちやすい魚です。
天ぷら、椀だね、刺身、寿司、塩焼きなどで食され、「6月のキスは
絵に描いてた物でも喰え」と言われるほど。
産卵前のキスは特に脂がのって美味いです。
漁師さんも、「生で食うのが美味い・・、鮮度が命の魚だね」と
言います。
三重県の尾鷲市では、このキスを酢〆にした物を使った押し寿司が
郷土料理として残っています。
【栄養と効果・健康】
低脂肪で水分の多い魚。たんぱく質、ビタミン、ミネラルは白身魚に
おいて、平均的な数値。大きな特徴はありません。
強いて言うならば、カルシウム、リンがやや豊富。
骨粗鬆症の方、育ち盛りのお子様には、お勧めです。
低脂肪ではありますが、コレステロールは多め、これを緩和するDHA
やEPAも多く含まない為、高脂血症を気にしてる方は食べ過ぎに注意
すべきでしょう。
グルタミン酸を多く含んでいる事が、美味しさの秘密です。
焼いたキス
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