暑い日、クーラーが効いた喫茶店などで涼んでいると、ついウトウトしてしまいます。夜、あまり熟睡していないせいでしょうか。疲れがドット出てくる感じです。
そんな盛夏が何日も続いて、今年は本当にうんざりですが、我々がこどもだった昭和20~30年代は、夏はうんざりするものではなく、一瞬にとおりすぎる祝祭日のような感じがありました。海水浴も、恋愛も、勉強も、夏にしておかないとなにか取り残されるような雰囲気があった、ような気がします。
ところで夏を象徴するものはなんなのでしょうか。人それぞれだと思いますが、私はネムノキのことを思い浮かべます。大きな木の樹冠にピンクの鮮やかな花が覆います。その葉をちぎって「ねむれ、ねむれ」とさすってやると、つやつやした葉がコテンとねてしまいます。不思議な木です。
夏に盛りの草木には、他にサルスベリ、カンナ、百日草、ムクゲなどがありますが、私など、ネムノキは〈極楽〉に咲き誇る情景を思い浮かべてしまいます。
そんな木の性質からか、ネムノキ=眠りの木という名前がついたにちがいありません。古来より、東北にはねぶた祭りという風習があって、夏の暑さの盛りに寝ずに山車を引き回し続けます。この祭りを柳田国男は「眠り」を戒めた習俗の名残だと述べています。東北の夏は一瞬で、そして眠くなる夏こそ大切なのだ、その象徴としてネブタノキを流して眠りを払うというのである。(反論する人も多い)
なお、植物の分類としては、葉は羽状複葉対生で、豆科に属する。耐寒性が強く高緯度まで分布する。ウィキペディアによると、漢字名の「合歓木」は、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられた、そうである。【彬】