八重のクチナシ
テレビを見ていたら、「カカト落とし」という健康法をやっていた。骨を鍛える方法である。
コロナ禍、巣篭もり状態の老人が多くなっているが、ただでさえ骨密度が怪しくなっている訳だから時冝を得た番組企画のようだった。最新の栄養学からのアプローチもあって、番組としては万全の取り組みかのようにも思えた、のだが。
問題はそのカカト落とし。カカトを持ち上げ、真下にドンと落とすだけという運動だが、果たして適切なのか、疑念が湧いてくるのである。カカトを落とすと、力学的には、膝や股関節に体重の倍以上の負荷が掛かることになる。そんなことをして大丈夫か。しかも骨に直接的に伝えるのだから、骨が弱っている高齢者にはたまったものではないだろう。
骨は確かに刺激を受けると強化される。
骨というのは主成分がカルシウムで、これは無機質な物質である。だから本来、刺激を与えようがしまいが、変わらないものである。打ちつければ粉々に砕ける物質だ。しかし人体の骨は有機物=筋肉と結合していて、その有機物が刺激を受け、骨の強化につなげているのである。そのメカニズムについて、詳細については無知だが、骨を強化するということは、骨を囲んでいる筋肉を強化することであることは体験的に知っている。
カカト落としなどと、直接骨に働きかけをすれば、骨と骨を繋ぐ関節を痛めるだけではないのか、と心配になるのだ。
こういうことはスポーツ医学の面からすれば、常識中の常識だろう。番組を信用し、カカト落としを熱心に繰り返した結果、膝に変調をきたしたなどの報告がないことを望むものである。
ならばどうするのが、いいのか。私の経験ではスクワットがベスト。通常のスクワットでは負荷が強すぎるので、テーブルや柱に両手を置き、これを支えとする。強化する筋肉は有酸素系の運動による遅筋。だから負荷を少なくするのである。回数(1回、50〜100回)を多くし、これを2〜3セットこなす。
高齢者にはこうした運動が良いのではないか。専門家に聞いてみたいものである。【彬】