5月26日付けのブログ、カミユ「異邦人」から「ペスト」へ、の続きになります。
先月6月から、la peste 「ペスト」を読み始め、ほぼ半分まで進みました。以前 L’etranger「異邦人」を読んでいますが、今回の「ペスト」の文章は密度が濃く、フランス語も難しく同じ作家とは思えないほどです。
カミユは祖父がフランスからアルジェリアに移民してきた。「ペスト」の発表は1947年でフランス領時代。小説に登場する人物は殆どがフランス系のようだ。作品の底に流れるものは、ヨーロッパの思想。「不条理」の文学は、キリスト教の神に批判的であるとしても結局はキリスト教文化の許で生まれた思想。
ところで、1962年に独立した現在のアルジェリアはというと、人口構成は、80%がアラブ人、20%がベルベル人。そしてわずかにフランス人。宗教は、99%がイスラム教である。
外国語を勉強する目的は、語学学習そのものというより、その背景の文化を知ろうというもの。文学作品等をその国の言語で読むことは、その国の文化背景を様々な角度から知ることが出来ると思う。今回、「ペスト」を読むことで、フランスが関係してきたアルジェリアを歴史的に見ることができそう。読み終わるのは、夏の終わり頃になるだろう。アルジェリア旅行、それも、今では経験できない1947年頃の時代を巡ってきた、ということになると思う。
絵は、イエズス会の pere paneloux 「パヌール神父」がペストに怯える市民の前で説教している「ペスト」の中の一場面。締めくくりの言葉を述べているところ。
...voila, mes feres, l’immense consolation que je voulais vous apporter pour que ne soient pas seulement des paroles qui chatient que vous emportiez d’ici, mais aussi un verbe qui apaise.
...さてこれが、皆さん、私が伝えたいと願った広大な慰めなのです。そうすることで、この場から持ち帰るものが、ただ皆さんを戒める話ではなく、心休める言葉でもあってほしいのです。
2020年7月12日 岩下賢治